恋人の方はしばらくはただただ星空に魅入っていたが、やがて全く上方に向かないギルベルトの視線に気づいたらしい。
「…ギル?
せっかくこんなに綺麗な装置をつけたのに、見ないのか?」
と、きょとんと不思議そうに小首をかしげた。
ああ、そんな仕草一つ一つが奇跡のように愛らしく愛おしい。
「俺様がこれをつけたのは、別に星を見るためじゃねえし?」
と言うと、恋人はまた零れ落ちそうに大きな目を丸くする。
ああ、本当になんで自分の恋人はこんなに可愛らしいのだろう。
「俺様な、自分が星空見るんじゃなくて、星空見て自分の方が星みてえに目をキラキラさせるアルトを見たかったから、こいつ取り付けたんだぜ?」
と本当の事を言うと、目をまんまるくしたまま、真っ白な顔だけが見る見る間に薄暗闇でもかすかに分かるレベルで赤くなった。
こう言う事を言われ慣れていない恋人様は、羞恥に目を潤ませてわたわたと動揺する。
そんなアーサーをギルベルトはぎゅっと抱きしめて言った。
「アルトが望む事はもちろん、それ以外でも好きそうなもの揃えてやるからな。
俺様から逃げんな。
100歩譲って、他の人間のとこに逃げんなら連れ戻しにいってやるけど、神様んとこは勘弁してくれ。
簡単に特別なんてつくらねえ俺様に特別だと思わせちまったんだから、諦めて俺様に一生縛られておいてくれ。
その代わり、全身全霊でどんな事からも守るから。
絶対に大切にするからな」
抱え込めばすっぽりと腕の中におさまってしまう細い身体。
もぞもぞっと動くので少し腕の力を緩めてやると、アーサーは巣穴から顔を出す小動物よろしくギルベルトを見あげた。
そして、それはギルベルトの腕の中のギルベルトより一回りほど小さな手でぎゅっとギルベルトのパジャマの胸元を握りながら
──…ギルが…俺が居て良いって言うなら……
と、心細そうな様子で言うのに、ギルベルトの中で何かが…主に理性的なものが、プチっと音を立てて弾けた気がする…。
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