別荘についたのは夜だったので、互いにシャワーを浴びてパジャマに着替えたところで、昨年の夏過ごしたかつて知ったるはずの寝室に入った恋人様は、驚きの声をあげた。
まるでその部屋の屋根のようにアーサーのまるい目がさらにまんまるく見開かれる様を見てギルベルトは満足感を覚える。
「これ…?」
と、振り向いた恋人が目で問いかけてくるのに、ギルベルトは
「驚くのはまだ早いぜ?」
と、スイッチをいれると、部屋の灯りがパッと消え、天井に星が移りだす。
そう、ギルベルトはこの恋人様のくるりと綺麗なグリーンアイズが驚きでまんまるくなるのが大好きなので、そのためだけに寝室を半円形に改装した上に、数百万かけて業務用プラネタリウムの投影機を購入、設置したのだ。
寝台も特注で電動式。
角度を変えられるようになっている。
うぃ~~んとスイッチでやや寝台の背を起こすと、見事なまでにまんまるく見開かれるアーサーの綺麗なグリーンアイと、ぽかんと開く桜色の小さな唇。
「え?ええ??プラネタ…リウ…ム???」
動揺してわたわたする様子が可愛らしくて、ギルベルトは吹きだした。
「おう。アルトを驚かせたくて去年、ここから戻ったあとに改装させてたんだ。
本当は今年の春先あたりに来て驚かせようと思ってたんだけどな。
予定よりちょっと早くお披露目だ」
そう言いつつアーサーを寝台に促すギルベルト。
アーサーを寝台の中央に座らせると自分もその隣に座って、再度スイッチを押す。
すると音楽と共に浮かび上がる星空。
「う…わ………」
感嘆の声をあげて天井に向ける恋人のキラキラした目を見るのに忙しくて、ギルベルトの方はせっかく改築した天井など見る余裕もない。
本当に…喜ばせたかったのだ。
今まで幸せから遠かった分、自分が側にいるようになってからは、愛情をめいっぱい注いで幸せにしたい…
貧しい生活の中で旅行など行く余裕もなく、去年はじめてここに連れて来た時に、初めて見る満天の星空にこんな風にキラキラと目を輝かせながら、恋人が言った言葉が
『TVで見たプラネタリウムみたいだ…』
で、それで彼が空気が綺麗な場所でしか見られない本物の綺麗な星空どころか疑似的な星空すらTV以外で見る機会もない生活をしてきた事を目の当たりにして、思う存分に見せてやりたくなった。
いや、見せてやるなんて言い方はおこがましいか…
単に自分が室内に散らばる星空を見て目を輝かせる恋人を見たくなったのだ。
Before <<< >>> Next (11月12日0時公開予定)
0 件のコメント :
コメントを投稿