ギルベルトは自分の正面で真っ赤になるアーサーを前に内心悶えている。
告白したつもりが演技の練習だと思われていたっ!!
そんな衝撃の事実が発覚。
そのせいで恋人が肺炎を起こして死ぬところだったなんて、本当に自分で自分を殴りたい気分になったギルベルトは、夏に告白したつもりになっていた場所、高原の別荘で告白し直すべく、アーサーを連れて移動の最中である。
海の側のそれに比べるとどこか地味な感じが否めないが、可愛い恋人様はドライブというだけで楽しいらしい。
前日に近所のコンビニにクマの財布を抱えていそいそとおやつを買いに走る姿はあり得ないレベルで可愛らしかった。
ただの車での長距離移動でそこまで喜んでもらえると、ギルベルトとしても嬉しい。
飲み物は保温タンブラーにそれぞれ紅茶とコーヒーをいれて出発だ。
ランチは…作っても良かったのだが、去年の夏に行った別荘が初めての長距離移動だと言うアーサーは、色々な事が全て珍しく楽しいので、当然ながらサービスエリアに寄るのも大好きだ。
例えギルベルトからするとなんの変哲もないレストランとフードコート、売店やコーヒーショップなどがあるくらいのサービスエリアでも寄るのを楽しみにしているので食事はそちらで摂る事にする。
案の定、昼に立ち寄った大きくはあるが特に変哲のないSAのフードコートで、何を食べようかと立ち並ぶ店にきらきらした目を向けるアーサーがいた。
そんな様子はまるでお菓子やおもちゃを前にした幼い子どものようでとても可愛い。
俺様の恋人、世界で一番可愛いよなっ…と、浮かれた気分で思いながら、結局ハンバーグをピックアップする恋人を横目にギルベルトは無難にラーメンを選んだ。
味自体はまあ普通。
特別不味くもなければ美味くもない。
こういう大きなSAのフードコートに過剰な期待を寄せてはいけない。
基本、とてつもなく不味くはないもので腹を満たしたい時に来るところである。
とはいえ、まだ肌寒い事もあって温かい汁物は温かいというだけで美味しい。
冷めないうちにとすすっていると、気づけば目の前で自分にキラキラとした視線を送っていた。
いや、これは…自分にじゃなくて温かそうなラーメンになんだろうな、と、普段は俺様最強、俺様イケメン、俺様カッコいいと叫んでいるが、恋人様に対してはあまり自信のないギルベルトはそう思って、
「あ?一口欲しいのか?」
と聞いてやったが、アーサーはぷるぷると首を横に振る。
…が、アーサーはいつもだいたいなんでも遠慮する性質なので、今回もそれかと思い、
「遠慮すんな、ほら」
と、蓮華に麺とスープを少量いれて差し出すと、案の定パクンと口にして……
真っ赤になった?
え??
「わり、熱かったか?」
自分的には不味くならない程度に十分冷ましたつもりだったのだが…と思いつつそう言うと、それにもアーサーはふるふると首を横に振る。
そしてギルベルトよりも一回り小さな白い手を口にやってうつむくと、小さな小さな声でつぶやいた。
──…間接キス…だなと思って……
………
………
………
うあああーーーー!!!!
ゴン!とギルベルトはつっぷした拍子にテーブルに頭をぶつける。
「ちょ…それ反則…。
可愛すぎだろうが……!!」
との言葉をどこをどう曲解したらそうなるのか
「悪い…可愛いレディだったらよかったんだけど…」
などと言うので、そこはきっぱり
「お前だから可愛いんだよっ!!」
と、訂正しておく。
そう、この手の言葉はいちいち口にして訂正しなければならない。
ギルベルトは甘い言葉を吐くのは得意ではないのだが、そんな事は言っていられない。
中途半端にお茶を濁すと、このとてつもなく自己評価の低い恋人はどこまでもマイナス方向に暴走するのは、今回の事ではっきりわかったので、同じ轍は踏むまいと、そこは自分の方向性の方をきっちり軌道修正した。
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