「え?ちょっと待てっ!!
なんでそんな話になってんだ??
マジ誰かが変な事吹き込んだのか?!!」
と、こんな慌てたギルベルトは初めてで、びっくりしてしまう。
自分は何かおかしなことを言ったのだろうか?
俺…変な勘違いしてしまってるのか?
ギルが俺を大事だって言ってくれているのは、恋人関係が持続してるからかと思ったんだけど……単にボランティア的な何かだったなら、ごめん」
と、思わず謝罪すると、ちげえよっ!とギルベルトはくしゃっと自分の前髪を掴んで小さく首を横に振った。
「そっちじゃなくて…
なんで恋人関係が終わったとか、そんな話になってんだっ?!」
「…?
だって…映画の撮影が終わったから……もう役作りは必要ないと思って……」
「…俺様…好きだって言わなかったか?」
「……?」
「…夏に旅行言った時に…初めてキスして……」
言われて当時の事を思い出してアーサーは思わず赤面する。
うん、あれは本当に一世一代のロマンティックな出来事だったと思う。
おそらくもう二度とあんな風に自分を好きだと言う相手はいない。
だが…
「あれは…映画の役作りのため…だろ?」
と、極々当たり前の事を言ったら、ギルベルトが絶句した。
そのままガックリとその場に膝をつく。
そして信じられないようなものを見るような目で見られて、アーサーの方が動揺した。
「…ちょっ…待て…本当に待ってくれ……」
「………?」
何か悪い事を言ってしまったのだろうか…
そんな不安が顔に出ていたのだろう。
ギルベルトは自分もまだ考えがまとまらないような様子で、しかし優しく額にキスを落としながら、
「…ごめんな?
アルトは悪くねえ。なんにも悪くねえよ。
俺が誤解をされるような態度を取ったままだったのが悪い」
と、まずアーサーの不安を取り除いてくれた。
そう、いつでもギルベルトはこんな風に大人で優しい。
アーサーの甘えをいつでも許容してくれるのでは…と、誰かに甘やかされるなんて経験がないアーサーですら思ってしまうほどには……
きちんと話し合うにはまずギルベルトの言葉を待つべきなのだろう。
でも自分がおかしなことをしているのでは…と思うと不安で、アーサーはぎゅっとギルベルトのシャツの胸元を掴んだまま、まず自分の主張を口にしてしまう。
「…ギルに…要らないって言われるのが怖かったんだ……。
だから言われる前に出て行こうって思った……
ギルが自分が不在の時に自分の代わりにって言ってくれたギー君がいれば…完全に終わったわけじゃないって思っていられるって……」
勝手な言い分だ…とアーサーは思う。
大スターのギルを自分の勝手でバカバカしい妄想に付き合わせるなんて、本来なら許されない…
そう思うが、今の様子なら泣けば拒まれないのでは…なんてずるい考えが脳内で広がって行く。
俺は最低だ…と、情けなさにぽろぽろ泣いていると、ギルはまたぎゅっとアーサーを抱きしめてくれた。
そして…すごく辛そうな声で言う。
「悪い…。ほんっとうにゴメンな。
誤解されるような状態のままきちんと修正説明しなかった俺様が全部悪かった。
俺様、あれでちゃんと告白したつもりだったんだ。
アルトを不安にさせて、危うく死なせるとこだったとか、本当に詫びのしようもねえ…」
なんとギルベルトはアーサーを全く責めず、むしろ自分を責めた。
いつもいつも優しいギル…
自分がこんなに嫌な部分を出してもまだ嫌わないでくれるのだろうか……
アーサーは手を伸ばした。
Before <<< >>> Next (3月16日0時公開)
0 件のコメント :
コメントを投稿