「…よく…覚えてないんだけど……気づいたらここにいるし……ギルに迷惑かけてるみたいで……」
さらにそう言うとギルベルトの顔が険しくなって、アーサーはビクッと身をすくめた。
何か言い方が悪かったらしい。
誘拐でもされたのかと誤解されている気がして、アーサーは慌てて訂正をいれた。
「違ってっ!俺、ギルに迷惑にならないうちに家を出ようと思って…家を出て…少しベンチで休んでたんだけど…そこから記憶が………」
「ちょっと待ってくれっ!
…なんか聞き捨てならねえこと聞いた気がすんだけど……」
と、アーサーの言葉は途中で遮られた。
「俺様に迷惑って…なんだ?
誰かアルトにおかしなこと吹き込みやがったのか?」
静かだがたぶんに怒りを含んだ声…。
しかし初めて見る怒りをあらわにするギルに怯えるアーサーに気づくと、
「別にアルトに怒ってるわけじゃねえからな?
怖がらせてごめんな?」
と、いつものギルに戻って頭を撫でながら微笑みかけて来た。
優しく優しく髪の間を滑る長く骨ばった指先。
額に口づけてくる形の良い薄めの唇。
──…アルトが大事だ……
と、吐息と共に流れ出る少しハスキーだが甘い声…
「…誰に何言われたか知らねえけど…アルトの事で俺様が迷惑なんて思う事は一切ねえよ。
本当に…何より誰よりアルトが大事だ…。
世界と引き換えにしたって構わねえほど……
アルトが居ない人生なんて、俺様にとっては何の意味もねえ」
………
………
………
なんだか…ありえない言葉の数々を聞いた気がする……
何故?というのはアーサーの方が聞きたい。
もしかして…ギルベルトの恋人役に対する気持ちはクランクインまでは継続するのだろうか……
そんな疑問をそのままぶつけてみると、ギルベルトはぽかんと口を開けたまま呆けた。
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