続聖夜の贈り物
1章 カークランドの追跡を逃れて大陸にたどり着いた一行。 フェリシアーノのたっての希望で願いをかなえる伝説の石カトル・ヴィジュー・サクレを探す事を目的に冒険者になることになった。 2章 大陸の宿、ねこのみみ亭に落ち着く4人。 しばらく滞在する事にしたその宿で過...
そしてカークランドの城の前…。 「マシュー…無事だよな?」 「ああ、元気にしてるに決まってるって!」 声をかけるのを躊躇するロマーノの背中をギルベルトがポン!と叩く。 そんな兄に構わず、フェリシアーノは例によって大声で 「アーサーのお兄さ~~ん!!!」 と叫んだ...
「こんなに広いのに人の気配が全くしないって…不気味だよな…」 ナターリアに案内されて中に入って広いホールに足を踏み入れた瞬間、思わずそうつぶやいたロマーノの言葉に 「不気味でごめんね」 といきなり声が降ってくる。
「さみぃ…」 ロマーノはがちがちと歯を鳴らしながらつぶやいた。 北の地方の気温は暖かい地方に育った人間にはつらいらしい。 フェリシアーノもハグ~ハグ~と言いながらルートヴィヒのマントの中に潜り込んでいる。
アルとナターリヤがイーストタウンについたのはその数日後。 どうせならチビの自分ではなく、マスターを守れる大きな自分を見て欲しい、と、途中でアルはナターリヤに強請ってコーラを買ってもらい、それを口にする。 みるみる間に大きくなるアルを見て、さすがにナターリヤも目を丸くするが、 ...
「ようやく起きたか。お前、さっさと支度をしろ。兄さんに引き合わせる。」 あれからどこをどう飛んだのかわからない。生まれて初めて負わされた傷に不覚にも敵前逃亡してしまったアルはいつのまにか気を失っていたようだ。
部屋からかすかに薔薇の香りと、ふんわり漂う紅茶の良い匂い。 ベッドはふかふかで起きちゃうのが惜しいけど、マスターが適温になるように絶妙に調節してくれたミルクティが冷めちゃうのはもったいないな… マシューは鼻をひくひくさせてそれからニコォっと微笑んだ。 幸せな思い出は薔薇...
先日の事件以来、他人は信用しない事にした。 急ごしらえで作った割には魔法の望遠鏡は絶好調で、塔の最上階のアーサーの部屋から大陸の方へと目を向ければ、ピンポイントで“ねこのみみ亭”が見える。
「じゃ~ん♪見て見て♪フェリ特製らぶらぶサンド♪」 翌日、アントーニョ、フェリシアーノ、ギルベルトの3人は朝からキッチンへこもってランチボックス作りに励み、アーサー、ルート、ロマーノ、マシューを加えた7人で街外れの丘へピクニックへ。
「あの…オランさん?」 「なんじゃ」 「このフード…取ってもいいですか?」 「取るな」 「……はい」
「戻るぞ、ランスロット!」 アーサーを抱えたままスコットは青毛の愛馬に飛び乗った。 スコットは日頃から魔法に頼りがちになってしまわないよう、魔法で出来る事もあえて適度に使わないで行う事にしている。 愛馬での移動もその一環だ。
「まあ…残念やけんど、しかたなか。」 一行を見送ってインディはゆったりと長衣のすそを翻して、一部崩れた王宮内に戻った。 「東の魔人は…怒らせたらいかんばい。くわばらくわばら。」 強い磁場により魔法の力から守られている…と油断していた。 あの強い意志を持...
鬱蒼とした密林…それは天然の要塞にも等しい…と思っていたら、ブン!!と怒りの炎のハルバードの一振りで一瞬で炭化した。 南の国との国境で絨毯を降りたアントーニョ一行。
そして島へ向かう空飛ぶ絨毯の上… 「うぁ~~もう来月にはスコ兄に北の国滅ぼされてるね……」 フェリシアーノからアーサーが南に拉致された事を聞いたウィリアムはそう軽口をたたくが、顔からは血の気が引いている。
「薬って……なに?」 ギルベルトの口から出てきた“薬”という言葉。 もちろんそれが治療薬だなどとおめでたい事はアントーニョとて思わない。 ただ信じたくない、考えたくない、そんな気持ちでアントーニョは聞き返す。
甘ったるい香りがする。 お菓子とかのものではない…何か香のような……退廃的な香りだ。 神経をじわじわと内側から侵していく倦怠感。 うっすらと重い瞼を持ちあげた先には吸い込まれそうに暗く深い夜の闇色の瞳。 「……だれ…?」 自分のものとは思えないかすれた声が...
「フェリちゃん、今日も可愛いねぇ。おまけだよっ」 「わ~、嬉しいな♪ありがとう、おばちゃん♪」 アーサーが行方不明になったあの日にアントーニョから紹介されて以来、すっかり知り合いが増えたフェリシアーノは、朝市をのぞいて歩くのが日課になっていた。
なんでお兄さん巻き込まれちゃってるわけ? 前門のカークランドに後門のお日様王子? なに?それお兄さんの死亡フラグ?
「ロマ~、自分何しとるん?国離れて大丈夫なん?」 いきなりノックもなくドアが開く。 そこには見慣れた男の姿。
イーストタウンの中心街の端に“ねこのみみ亭”はある。 中に入るとまずフロント。 そこにはたまにベルがいることもあるが、たいていはちょっとこわもての“子供が好きすぎる”お兄ちゃんことオランが陣取っていて、別に拒否しているわけではないのだが、いちげんさんはビビってまわれ右...