ネバーランド
再会 「…降ってきたか……」 アーサーは小さくため息をついて、大きな木の影に腰をかけた。
魔王の焦燥 「…雨が降ってきたやん……どないしよ…。あの子また死んでまう…」 アントーニョは半泣きで神山をさすらっていた。 心臓がひどく痛い。 一度目にあの子を失った時は世界を滅ぼしてしまったのだ…二度目は自分でも何をしてしまうかわからない。
約束 …待ってるから…… 数百年も前、自分は確かにそう言った。
ネバーランドの子ども 「ねえ君、見かけない子だね。どこから来たの?」 フェリシアーノはナスに水をやっていたジョウロを一度置いて、とてとてと子どもの方に駆け寄った。
神のしもべと悪魔が捜索隊を組んだわけ チリリと髪が一筋焼け焦げた。 ロヴィーノは殺気に少し引きながらも、炎が飛んできた方向に目をやる。 視線の先には真っ赤な目に怒りをみなぎらせた少年。 先刻のような脅しではない。 本当に自分を殺すつもりだという気配を感じて青ざめた...
昔なじみ 「あ~、またやったのかよ…」 神山の家に飛んで帰ったロヴィーノがみたものは、赤く染まったモップで床を拭いている魔王の姿。 そして 「てめえも懲りねえよなぁ…」 と、ロヴィーノはため息をつく。
神のしもべと悪魔の邂逅 「アルト…良い子だから振り返らず村に走れ…。絶対に立ち止まるなっ!」 ギルベルトは腰の剣を抜いて構えると、弟を後方へ促した。
輪廻の輪に身を投じた者 数百年も昔の事だ……。 世の欲に惑わされることなく、神を信じ己の道を貫く神の騎士であれ… それは北の国の人間なら誰しもが言われて育つ言葉だ。 北の国を代表する王子であるギルベルトは当然それを繰り返し言われて育っている。
天使を探す悪魔 (今日は久々に北に行くか…) ロヴィーノはトマトで汚れた手を洗い、炊事のためにつけていた黒いエプロンを外す。 そして最近は久しく行っていなかった北の国の国境周りに行こうと決意した。
魔王の悪夢 「待ってるから。行ってこいよ。」 頂上にたどり着いた王族の国が向こう50年間の中央の土地の権利を得られる…そのために集まったわけだから、王族としては頂上を目指すのが当たり前だった。 それでも愛しい子どもが床に伏して熱に苦しんでいるのを他の人間に託して、こ...
トマト畑の悪魔 昔は神山と呼ばれた場所には魔王と悪魔が住んでいる。 「おい、トマトの収穫すんぞ。」 「あ~、ジャム切れとったか…。」 「おう、ジャムもだけどトマトソースも切れてっから、作り置きしてえし。」
ネバーランドの子ども達 今日はネバーランドの子ども達が神山の家に遊びに来ている。 いつもは魔王とロヴィーノの二人だけの家もこの日ばかりは賑やかだ。
ネバーランドの父 「おい、作るはしから食うなっ!それは子どもらにやるんだからっ!!」 その日はトマトを収穫がてら、干しておいた干しトマトを回収した。 そして料理が得意なロヴィーノはその干しトマトを入れたクッキーを大量に焼いている。 ネバーランドの子どもたちへのおみや...
悲しき魔王 その後、結局男はロヴィーノの話を聞いて納得したのか、自分の家にロヴィーノを連れていき、自分は魔王なのだ、と、名乗った。
世界の終焉-魔王の誕生 東の国の王子と分かれて、アントーニョは少しでも身軽になるようにと荷物を全部放り投げて、元来た道を疾走した。
別れ 「いややっ!俺もここに残るわっ!」 アーサーが熱を出した。 傷を別にしても今まで普通にしていたのが不思議なくらいだということだ。 こんな小さな子どもが病み上がりで1週間も山をさすらう事自体が無茶だ。 そこに傷から来る熱も加わって、これ以上無理をさせたら確実に...
中継地点前 「もうすぐ…着くんだな…」 アーサーはアントーニョが広げる地図を見てうつむいた。 一応子どもなりに地図は読めるらしい。 まあ…読めないとはぐれた時に困るわけだが…。
道のり 「恩は絶対に返すから」 「返さんでええ。」 「中継地点までは命にかえても守ってやるからっ」 「守らんでええっ!」
愛し子 柄にもなく緊張しているのだろうか…。 アントーニョが目を覚ました時、まだ窓の外は真っ暗だった。
西の神託 北の国の兄弟がそんな健気なやりとりをしている一方で、唯一驚かなかった西の国の王族達は、クジの結果を前に円卓を囲んでいた。