ネバーランドの悪魔2章_4

神のしもべと悪魔の邂逅


「アルト…良い子だから振り返らず村に走れ…。絶対に立ち止まるなっ!」
ギルベルトは腰の剣を抜いて構えると、弟を後方へ促した。

「でも…ギルは?」
剣を構えるギルベルトにさすがに非常事態だとわかったのだろう。
弟…アルトゥールは、不安げにギルベルトを見上げた。

「俺はちょっとこの兄ちゃんと試合してから帰るから。お前が側にいると気が散る。
良い子だから先帰れ」
ギルベルトは不審者から目を離さずに、アルトゥールの肩を軽く押した。

「わかった。夕食までには帰れよ?」
元来聞き分けの良い子だ。
アルトゥールは頷くと村に向かって走りだして行った。


ロヴィーノは、あ…と思うものの、子どもを追うには目の前の殺気を放った兄の方をなんとかしなければならないようだ。

ガキを傷つけるとアントーニョが激怒すんだよなぁ…と、内心ため息をつきつつ、ロヴィーノは
「おい、」
と、目の前の少年に声をかけた。

「あのな、俺ガキをどつく趣味ねえんだよ。大人しく道開けてくれねえ?」
交渉ごとは得意じゃない。
どう考えてもこれじゃあ引かないだろうし、怪我させるよなぁ…と思っていると、相手の少年は予想に反して激昂することもなく、
「気があうな。俺もだ」
とニヤリと笑った。

あ~こいつちょっとイカスじゃん。まあ俺には負けるけどな…と思いつつ、ロヴィーノは苦笑する。

「あのなぁ…確かに見かけはお前と同じくらいに見えるかもしれねえけどな、俺これでも数十年は生きてんだよ。
悪いことは言わねえから、怪我する前にどいとけ。」

信じねえだろうな…そう思いつつ言ったのだが、返ってきたのは意外な答だった。

「なんだ、まだたった数十年かよ。数百年の俺様から見たらひよっこだな。」
と、また不敵に笑うと、少年はその場で剣を軽く振った。

「うおっ!!!」
とたんに剣の先から炎が飛び出し、ロヴィーノの立つ地面すれすれで止まった。

「ガキをどつく趣味はねえんだよ。守んのが使命なんでな。大人しく引いとけ。」
ニヤニヤと笑みを浮かべているものの、目は笑ってない。
得体が知れないその相手に、ロヴィーノは背筋が凍りついた。

こいつは…やばい…。
何か普通の人間じゃない……。

自分の手には負えない何かを感じて、ロヴィーノは後ずさった。
相手も結界の外までは追ってこない。

そのままジリジリと後退を続け、相手の気配がはるか遠くに消え去ると、ロヴィーノは大きくため息をついてへたり込んだ。

「あ~ビビった~!!なんだよ、ありゃ。」
心底肝が冷えた。
あそこで無理に戦っても、地面に倒れるのは確実に自分の方だと思う。

「どう考えても…普通の人間じゃねえよな。おしっ!アントーニョに聞いてみっか。」
ロヴィーノはそうひとりごちて立ち上がると、魔法で一気に神山を目指した。



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