ジュリエットA ぺなるてぃ・らぶ_Verぷえ
フランスはイギリスが好きだった。 それはもうイギリスがまだイングランドとすら呼ばれて無くて、お得意の『ばかぁ』という言葉が『びゃかぁ』だった昔からという筋金入りだ。
オンラインAnasa ジュリエットA
「雨…完全にやんだな……」 ギルベルトが空を見上げる。 「…うん…」 脱力したまま答えるフラン。 フラン的には色々が衝撃だっただろうな…とギルベルトは思った。
「雨もだいぶやんできたね。早ければ夜にでも警察到着できるんじゃないかな。」 フランは雨の中ぬかるんだ山道を歩きながら言う。 「そうだな。それまでに死人が増えてなきゃいいんだが…」 ギルベルトは山道についた足跡を追いながら、そうつぶやいた。
氷川を殺したのはメイらしい…そんな結論に至って、ギルベルトはフランを伴ってメイがいる川本の部屋へと急ぐ。 「川本、開けて?」 川本の部屋のドアは鍵が閉まっていたのでフランはノックした。 「ちょっと待ってくれ」 すぐ中から返答はあるものの、なかなかドアは開かない。
「ギル、全部言われた通りにしたよ。食料は各部屋の冷蔵庫で3F組は川本の部屋に集合。2F組にもリサの部屋で氷川が死んでた事は伝えた。」 自分も部屋の物に触れない様に気をつけて室内に入ると、フランはギルベルトに声をかけた。 「サンキュ。助かった。」 ギルベルトはその声に振り返っ...
翌朝…。 ギルベルトの朝は早い。 毎日の習慣で目覚ましがなくとも5時には目が覚める。 普段だとこれからランニング&基礎鍛錬なのだが…窓の外はあいにく昨日から続く雨がまだ降り止まない。 軽く室内でできる屈伸、腹筋、腕立てなどをやってはみたものの…物足りない。
アーサーはジャンヌに似てる…そう思ったのはたぶん初めて会った時。 「私の髪はくすんでてフランのみたいに綺麗じゃないから…それよりね、きらきら綺麗なフランの髪の毛を見てるのが好き♪」 と、自分はいくら言っても髪を伸ばそうとはしなかったくせに、フランには髪を伸ばす事を勧める困った...
部屋に戻って一人になると、アーサーはベッドに腰をかけた。 そういえばこのところずっと自分の家にアントーニョが来るかその逆か、とにかく必ずと言っていいほどアントーニョがいたから、一人になるのは久々だ。
「とりあえず…手を教えたりとかできないように、全員それぞれ自分の側の選手の右側面2mに待機ね。 俺はアーサーにチェス教えた関係もあるからベルちゃんの側で」 チェス板を挟んで対面のソファにアーサーと氷川が座ると、フランが仕切る。 もちろんベルやアントーニョはそれに従う。
「うっあ~、見事なふりだね」 屋内駐車場に車をいれると、フランは苦笑した。 外はすごい豪雨だ。
ニッコリと声をかけて来たのは、同年代くらいのまあ美人の部類に入る少女。 (あ~、こいつが噂の~) その言葉と少し強ばるベルの表情でアントーニョは察した。
ちょうど夏休みだったせいもあって、勝負は箱根にあるボヌフォア家の別宅で開催されることになった。 迎えの車ももちろん富豪ボヌフォア家のものだ。 運転手つきのご立派な車がごくごく庶民的なカリエド家の前に止まる。
「お兄ちゃん、うちがあんな風に馬鹿にされて悔しくないん?!」 世の中…わかっていても避けられない災難という物はある。 アントーニョは今それを痛感している。