kmt 短編
そこからは宇髄さんがまずおそらくこれまで飲んだことのないアルコールを飲まされて酔っている冨岡さんに万が一があってはと救急車を呼んでくれて、それが到着した頃に姉が戻ってきてわざとらしく驚いてみせる。
そして当日…家を出てからはめちゃくちゃ忙しかった。 ポイントは次兄に邪魔をされないように、母と自宅に戻る事。
ごめん…本気で村田さんを舐めていた… と、寿美は人生で初の猛省をした。
単に長兄をどつくという意味では手はある。 強力助っ人になりそうな相手はいくらでもいる。
思えば上手くいっていないんだろうなと言う兆候はあった。 姉は忍耐と理性の人なので顔に出すようなこともなく、他の家族は気づいていなかったようだが、ずっと同室で観察してきた寿美にはわかる。
鱗滝先輩狙いだとしたら、まあ仕方がない…と寿美は思っていた。 だって先輩は姉が求める要素をあまりに持ち合わせすぎている。
姉が壊れたのは恐らく親友だと思って居た子が実は父や兄がやらかしたことをずっと恨んでいて不死川家に復讐しようと思って姉に近づいたのだということを知った時だったのだと思う。
寿美は幼い頃から知能の高い子だと言われていた。 物理的にもそれはそうなのだろうが、正直…そう言われることになったのには家庭環境が多大に影響していると思う。
こうして宇髄が呼んだ救急車が到着した頃…玄関先からパタパタっと足音が聞こえて来た。 ──え?え?なにっ?何かあったの? と買い物袋を手にリビングへ駈け込んで来た貞子は、逆に義勇を抱えて玄関に向かう宇髄を見て目を見開いた。
……ふぇ…? てっきり気づかれた瞬間に逃げられると思い、そ~っとドアを開けてリビングに入った実弥に気づいたようだが、義勇は逃げない。 なんだかほわんとした潤んだ瞳でこちらを見つめている。