パイレーツ!番外_3(完)

――商売…始めたらいいんじゃないか? 愛しい愛しいあの子がそう言ったのは、夜、船の甲板で流れ星を見ている最中だった。

パイレーツ!番外_1

「大丈夫か?しんどない?」 王の使者に会ったその日の夜、いつものように夕食のワゴンを押しつつ部屋に戻ってきたアントーニョはリビングのソファに座って刺繍をしていたアーサーを、まだ寝ていなければと、有無を言わさず抱き上げてベッドにおろした。

パイレーツ!後編_5

「よ~、お姫さん、調子どうよ?」 コンコンと形ばかりのノックの後に、ギルベルトは返事を待たずに船長の私室に入る。 「男に姫とか言ってんじゃねえよ。」 と、中から返すのは当然大海賊の宝物だ。

パイレーツ!後編_4

「子ども…出来たんちゃうやろか?」 朝、船員達の様子をグルっと見て回った後、雇い主である大海賊の最愛のお宝ちゃんの定期健診を前に執務室に来たギルベルトに雇い主が投げつけた第一声に、隣に立っていたフランシスが飲んでいた茶を思い切り吹き出した。

パイレーツ!後編_2

一方で、フランシスの件かギルベルトの件か…と、そんな事を考えながらアントーニョが対峙した国王の使者にいきなり差し出されたのは、すごい量の金だった。 「なんなん?これ。」 罪人の引き渡しにしては様子が変だ…と、テーブルに置かれた金の延棒を前に目を丸くするアントーニョに、使者...

パイレーツ!後編_3

呼吸がうまくできなくて、苦しくて苦しくてもがいていると、ソッと口に手の平が当てられた。 「過呼吸だな…。ゆっくり息してみな。」 との声に、さきほどよりは若干楽になりかけた息に、ゆっくり深呼吸を繰り返していると、どうやら呼吸は治まってきたようだ。

パイレーツ!後編_1

「あのな、王様の使者に会うんや。」 とうとうその時が来てしまったのか…。 アントーニョにここに連れて来られて1ヶ月強。 アントーニョの口から漏れた言葉はアーサーを絶望に突き落とした。 一応国に属さず独立独歩を貫く海賊と言えど、貴族の子弟である自分を飽きたからといって...

パイレーツ!前編_3

「…笑ってくれへんかなぁ……」 4時間ほど眠ってすっきりしたところで、アントーニョは毎日いったんは船長室に運ばれる自分とアーサーの昼食を前にアントーニョはため息をついた。 「なあに?まだ嫌われたままなの?お前にしてはホント珍しいよねぇ」 と頭の上から降ってくる声は、この船...

パイレーツ!前編_2

――相変わらず食細いなぁ…… アントーニョは自分も朝食を腹に詰め込みながら、目の前で同じく朝食を摂る少年に目を向けた。

パイレーツ!前編_1

ここは随分と温かい。 アーサーは柔らかなまどろみの中、もうすっかり慣れてしまった人肌の心地よさに惹かれて、抱え込まれた褐色の裸体に顔を擦り寄せた。