ドラマ
エリザの部屋 「こんばんは~。エリザ・ヘーデルヴァーリです。 今日のエリザの部屋のゲストは…今話題の映画『狼が涙を零す時』の主演アントーニョ・ヘルナンデス・カリエドさんです」
バーチャルの終わり 毎日が楽しくて楽しくて、気がつけば2月になっていた。 二人で撮る最後のシーンまで1週間を切った頃から、アントーニョはアーサーに気づかれないように寝室のクローゼットの私物を少しずつバッグに詰めて持ち出し始める。
バーチャル生活 アーサーは実にアントーニョを楽しませてくれる相手だった。 なにしろ幼い頃から不遇な境遇で、好意や善意に慣れていない。 何かしてやるたびいちいち驚いて、おそるおそるそれを享受、そして…本人は気付かれていないと思っているのだろうか…こっそりとすごく嬉しそう...
バーチャルなペット 「初めまして。アーサー・カークランドです」 そして翌日の昼下がり。 アントーニョの他の仕事の都合で楽屋の方に来てもらった相手役の青年は色々な面で書類の印象と違っていた。
始まり 「はあ?ゲイ役?」 それはアントーニョもよく知る監督の映画の出演依頼だった。 もちろん主演。 ただ、その役柄と言うのはゲイで、普通ならヒロインにあたる相手役もゲイなので当然男だ。 しかもキスシーンどころかベッドシーンまである。
別れは静かに… それは随分とあっけなく訪れた。 二人一緒に撮るシーンが全て終わり、あとはそれぞれ別に撮るシーンがいくつか残るのみになったその日。 『完全には終わってないけど、二人の努力の成果は出たっちゅうことで、今日はちょっと美味いもんでも食うて行こうか』とアントーニ...
悲しい予感 それを意識し始めたのはクリスマスの頃だろうか… その日は撮影も午前中で終わりで、アントーニョは前日から下ごしらえをしておいた材料で、まるでレストランで出て来るようなご馳走を作ってくれた。 そんな風に自分のためだけにご馳走が用意されたクリスマス。 それはア...
幸福 二人の生活が始まったのは肌寒さが徐々に薄れ、あちこちで新しい命が芽吹く春先の事だった。 アントーニョが用意したマンションは川沿いに伸びる遊歩道を見下ろす住宅街の一角にあり、その遊歩道に沿ってたくさんの桜の木が植えられていた。
始まり それは不運な事の多いアーサーの人生の中では類を見ない幸運な出来事であったと言える。 なんと人気俳優アントーニョ・ヘルナンデス・カリエドの主演する映画の相手役として大抜擢をされたのだ。 もっともそれはゲイである主人公の相手役ということで、当然ながらゲイの役だった...
予兆 「アーティ、先帰っといて。 親分、ちょっとコンビニ寄っていくけど、何か要るもんある?」 それは小さな違和感だった。