kmt 短編
そのまままっすぐ冨岡家に帰宅するのかと思えば、鱗滝君はいったん自宅、鱗滝家に立ち寄る。 何故?と一瞬思ったが、そう言えば鱗滝家で着替えたので、制服がそのままだったな…と、義勇はそう納得した。
不死川と付き合うなんて絶対に嫌だし、断固として拒否をする。 そうしてくれと面と向かって言われたら、やめてくれと絶叫はするが、今回の諸々に関して言えば、すでに終わったことで、もう誰が望んだとしても同じようなシチュエーションが起きる事はない。
──この度は申し訳ありませんでした。二度と姿は見せません。 最初病院の廊下でそう言われた時には、正直何に対して謝罪されているのかわからなかった。 自分だけかと思えば、隣の鱗滝君もきょとんとしている。
こうして二人とも制服から私服に着替えると、笑顔で手を振る真菰さんに見送られながら、鱗滝家を出た。 そしてそのまま鱗滝君はかつて知ったると言うくらいよく行ったらしい村田家へ。
その日の夜…鱗滝君は義勇の家に来た。 正確には父に会いに。 ひどく思いつめた表情で…。
…え?死んだ?? その日は登校中からなんだか周りがざわついていた。 義勇は伊黒君と甘露寺さんと一緒に登校していて、伊黒君は甘露寺さん以外の何者にも興味がないので、特に動揺することはなかったが、甘露寺さんは周りのざわつきに落ち着かない様子だ。
あれから貞子も不死川も学校に来なくなった…。 それはまあ義勇的には平和で良いのだが、鱗滝君がこのところ沈み込んでいるのは大問題だ。
本当に何をやったのかわからない。 だが、あの事件のあった翌平日の月曜日から、不死川は学校に来なかった。
──まことに申し訳ございませんでしたっ!! 自分の妹と変わらない年の小学生の女の子が病院の廊下で土下座して謝罪しているのを見て、村田は泣きそうになった。
──私さ、やばいことはしないでって言ったよね? 宇髄さんと母で救急車の冨岡さんに付き添って、長兄はリビングに放置。 そして村田さんと姉と3人で移動したキッチンで、寿美は腕を組んで仁王立ちをしながら姉を睨む。