寮生はプリンセスがお好き
想像とは微妙に違う… アンは戸惑っていた。 てっきり周りの男どもにメソメソべたべたするしか能がないやからかと思っていたが、銀狼寮のプリンセスは凛とした佇まいで落ち着いていてどこか気品のある、寮長に継ぐ第二の銀狼寮の主だった。
うん?これは何が起こっているのだろう…と、目の前の光景の意外さにアーサーは小首をかしげる。
──え?な、なにっ?!! いきなり聞こえて来た悲鳴の声は高くて、しかし声変わり前の少年のそれとは明らかに違う。 つまり、この学園にいるたった一人の女性、新任の女性教師のものと思われる。
その夜、アーサーはモブ三銃士の一人のマイクと共にルートの部屋で過ごしていた。 いつもなら当然自室にいる時間だが、今日はギルベルトが金竜のプリンセスに助力を頼まれて金竜を混乱に陥れている金竜の寮長ロディの征伐に行っているので、一人は危ないとギルベルトからルートに預けられているのである。
たとえ逆ハーどころか攻略対象者全員に逃げられようと、このままでは終われないっ! 絶対に…絶対に一矢は報いるっ!!
ほとんどホラーだった。 綺麗で可愛く優し気なだけに、余計にこの状況での満面の笑みが恐ろしい。 怯えるアンを前にフェリシアーノはしばらくニコニコしていたが、 ──話すこと…ないみたいだね? と言うと、華奢な手で銀の呼び鈴をチリンチリンと鳴らした。 それで開いたドアから入ってきた人物...
「お待たせ。 ごめんね、ギルベルト兄ちゃんとの約束でアーサーは部外者に会わせられないから、お話はよければ俺が聞くよ?」 待たされたのはほんの5分ほどだったが、ギルベルトが金竜から戻ってくるまでという時間が区切られているアンにとっては非常に長く感じた時間。 しかもそれだけ待たされて...
アン・マクレガーは正直後悔していた。 教職員宿舎から銀狼寮までは遠い。 もちろん道は伸びているのだから迷子になることはないのだが、それでも暗い道を一人で移動するのはやや怖い。
悔しいがその時の金虎の寮長は実に凛々しくカッコよかった。 金色の虎の刺繍のマントをたなびかせ、剣を掲げて寮生達に号令を下している姿はギルベルトの目から見ても本当にカッコいい。
そんな風に一瞬ギルベルトが考え込んだのを勘違いしたのか、 「馬鹿が~! 俺が孤立したかとでも思ったかっ!! 操られるだけ操られた挙句にシャルルのガキに寝返った馬鹿どもと違って俺は組織に買われているからなっ! ピンチになればちゃんと援軍が来るんだよっ!!」 と急に元気になったロディ...