kmt 生贄sbg
こうして錆兎は少年を拾った……というか、救出した。 15人ほどの一般兵など水獅子王の敵ではない。 あっという間に全員地面の上に転がして、残酷なシーンを見せるのも…と、そっと少年の視界を塞ぐためにかけていた自分のマントをその小さな頭から取り去ると、ガラス玉のようにまん丸く澄んだブル...
遠くから聞こえる足音。 息をひそめて気配を消して錆兎はそれが十分な距離まで近づいてくるのをジッと待つ。 普通にしていれば立っているだけでも圧倒的な存在感を持つ男と言われるが、何も気配を消せないわけじゃない。 爪を隠せない獣なんてただの愚か者だ。 能ある鷹ほど上手に爪は隠すものである。
通常なら王自ら動くなどとんでもないことだが、水や炎の国では王自身が国一番の猛者で、先陣を切って兵を鼓舞するなども珍しい事ではない。
縁もゆかりもない小国の子どもだったとしても、危険な目に遭うのがわかっていて放置は確かに寝覚めが悪い。
──錆兎、君に相談したいことがある… それはとある日の午後のことだった。 水の国の王である錆兎を訪ねて来た炎の国の王の杏寿郎は開口一番そう言った。
――俺の領地で無体を働くとは、覚悟あってのことだろうな? 全てを運命に任せる事にして身を固くしたまま不快感に耐え続け、一体どのくらいの時が過ぎたのだろうか… どんよりと全てが薄暗い中、それは強い光のような眩しさを持って目に耳に飛び込んできた。
こうして13歳の春…なんとか回避できないかと思いつつもどうすることも出来ないまま、約束通り嵐の国へと送られる事が決まり、それまで見た事も触れた事もないような上等の絹の長衣を着せられて、まるでおとぎ話に出てくるような繊細で美しいレースのヴェールをかぶせられ、初めて馬車に乗って王宮の...
それはちょうど4つの国の境界線のあたりだった。 国から付き添ってきた従者達はとっくに逃げ出してしまった馬車の中、義勇はなるべく身を低くして、息を殺してあたりの気配を探っていた。
kmt 生贄sbg 目次
1_プロローグ 2_襲撃 3_正義の味方は遅れて訪れる 4_二人の獅子王 5_水獅子、出陣 6_稲妻、進軍 7_森の子ども 8_保護
kmt ずっと一緒
──もちろん断ったよね?! と詰め寄ってきたのは義勇ではなく百舞子の方だ。 もちろん、百舞子がそういう意味で錆兎に気があるわけではない。 ただ推しを任せるのに選んだ相手に勝手にその役を降りられても困るだけである。 ということで、そこに当事者の恥じらいや戸惑いが無い分、非常に前のめ...