清く正しいネット恋愛のすすめ_231_ヘキサゴン会議2

「とりあえず…俺が持ってきた情報だから俺が話しちゃっていい?」

意外なことに最初に口を開いたのはユートだった。

これまでひたすら仕事に邁進していて今回の件には一切関わっていないようだったので正直驚いたが、
「まあ…情報って意味では接する人間の規模や数が違う営業には敵わないけどさ…」
と、ユキが不満げに口を尖らせるところを見ると、その日本有数の大企業の営業のトップの地位を駆使して、仕事のついでに色々情報を仕入れてくれていたらしい。

「ああ、情報はなるべく間に人を挟まずに直接伝えた方がいいからな。
そのあたりはユートで。
次の今後についてはユキが話すという事でいいな?」
と、ユートの申し出を受け入れながらも、拗ねるユキに配慮したらしい。

コウが苦笑しつつ最終的にはそう決定した。

ということで、相変わらずにこにこと…しかしどこか感情の読めない笑みを浮かべつつ口を開くユートの言葉に錆兎は耳を傾ける。


「まず大前提。
万世極楽教の教祖は無限学園って小中高大の一貫校の理事長とつながってるんだ」
と、いきなり出てきた学校名。

その学校はまあなんというか、学力は高いしスポーツ関係でも優秀な成績を修めている学生が多いのだが、色々と良からぬ噂も絶えない学校だと錆兎は記憶している。

それを口にすると、ユートも笑って頷いた。

「うん。それでも成績としては実績あげてるから、わりと私生活では問題起こしちゃうような…でも優秀な奴が行ってて、実は業界では無限学園って裏産屋敷学園って言われてるんだよね。
それが無限学園の理事長は面白くないみたいでね、色々産屋敷学園の学生を突いてみたり、なんなら優秀な学生を引き抜きたいと思ってるらしい。
で、ここは何故かわかんないんだけど、繋がってるっていうのも対等ってわけじゃなくて、なんか万世極楽教の教祖より無限学園の理事長の方が上みたいでさ、理事長の意向に協力する形で教祖が動いているって感じらしいよ」

ユートはまるで世間話のような軽い口調で言うが、行われていることを考えたら社会問題にもなっているほどの出来事で恐ろしい限りだと錆兎は思う。

「よくそんな情報が入りましたね…」

そこらにいるような人のよさそうな青年なのに、マスコミですらつかめていないような情報を当たり前にどこぞから引き出してきた手腕が恐ろしいと思いつつ、そう口にする錆兎に、ユートは
「うん。ちょっと付き合いのある人が万世極楽教の幹部の親友だった…みたいな感じかな。
その伝手で、ちょっと万世極楽教について興味があるから話聞きたいな~とかそんな感じで相手を紹介してもらってね。
そこまでくればこのくらいのこと聞き出すのは楽勝だよ☆」
と、にこっと断言する。

それにユキがぽつりと…──ユートは腹黒さで俺が負ける唯一の相手だからね…と、こぼした。

「何言ってんだかっ。
俺は誠意をもってお話してもらってるだけだよ」
と、それにも笑顔なユートが恐ろしい。

「とりあえずね、そういうわけで、万世極楽教の教祖としてはウサちゃん周りを引っ掻き回したいってのがあるんだよね。
で、たまたま例の…武藤まり?彼女を拾ったらしくてね、ウサちゃんをなんとしてでも欲しい彼女と、正攻法ではウサちゃんが手に入らないからそれをするには産屋敷学園共学科のあたりが思いきり引っ掻き回されるから望むところ…っていう教祖が利害の一致を見て、武藤まりから引き出した情報を元に万世極楽教が動いたってのが、今回の義勇ちゃん拉致未遂事件ってわけ」

やっぱり自分のせいだったのか…と、続くユートの説明に地の底まで落ち込む錆兎。

「もし…俺が産屋敷学園を辞めれば、義勇とか周りを巻き込まないで済むってこと…です?」

義勇から離れることはできない。
離れたら自分は生きていけないかもしれない。
そう思う一方で、彼女を危険な目に遭わせるのも絶対に避けたい。

そうなると、自分が義勇を連れて産屋敷学園を辞めて転校するなり、それこそ留学でもすればいいんじゃないだろうか…と、錆兎は思ったわけなのだが、そこで、どうやら同じ部屋にいるらしく、ゴン!!とユートの頭に手が伸びてきて、その頭を思いきりテーブルに打ち付けた。

「違うからねっ!ウサちゃんが原因じゃないからっ!!
馬鹿ユートよりIQが遥かに高くて遥かに賢い俺が断言するっ!!
ウサちゃんのせいじゃないからっ!!」
と、必死な形相で言ってくれるユキ。

それに、コラコラと、ユキの手をユートの頭からひきはがしながら、コウが苦笑した。

「あ~…お前が学校辞めても意味ないぞ?
そうしたら今度は残った生徒会役員に標的が移るだけだから、やめておけ。
さらに言うなら、武藤まりの方も学校の中心人物であろうがなかろうがお前に執着するのは変わらないしな。
それならまだ物理的なものを交わせたり、それを阻止するための人脈があるお前がわかりやすい場所でターゲットになっていたほうが被害が少ない」
そう言われて頭が冷えた。


「とりあえず…これまでの会話でもわかったと思うが、先日の拉致未遂で正式に逮捕令状は出て万世極楽教に捜査の手は入ってはいるが、教祖はまだ確保できていない。
武藤まりも同じくだ。
ただ、お前の学校で友人に近づいた早川美弥とその家族は確保できていて、親はな、もう幹部で生粋の信者だから無理だが、美弥の方は周りから引きはがして色々情報を引き出せているから、少なくとも産屋敷学園の内部的な問題については解決できていると思う。
万世極楽教は今教祖が逃亡中で余罪についても追及されているから、おそらく教団の存亡に関係のない産屋敷学園の方にちょっかいをかけている余裕はないだろうし、無限学園の側も後ろ盾がしっかりしていることが判明した共学科に関しては一度失敗して用心されていることもあるし手を出しにくいかもな。
だからお前に実害があるのは、あとは行方不明の武藤まりだな。
何故童磨が連れて逃げているのか、あるいは別に逃げているのかはよくわからん。
そのあたりは俺の学校のOBの警察関係にも動いてもらえるように頼んでおくし、ユキも捜す気満々だから、もう少し待ってくれ」
というコウに礼を言うと、コウは今が踏ん張りどころだ、頑張れ、と、エールを送ったあと、

「…という事で、楽しくない話題はここまでで。
ユキが今後を語りたくてウズウズしているから、話させてやってくれ」
と、笑うと、ユキがディスプレイの向こうで
「やった~!!」
とはしゃいで両手を上げて叫んだ。


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2 件のコメント :

  1. 武藤マリ、今どうしていることやら。童磨の動きも気になりますね。でも錆兎がいれば、きっと大丈夫。

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    1. この作品、このstkr女子高生書くのがめっちゃ楽しかったりします💕
      新興宗教とstkrの組み合わせ、ホラーっぽくて最強です!

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