清く正しいネット恋愛のすすめ_230_ヘキサゴン会議

とある日の真夜中のこと。

『ゆっくり話せるのは久しぶりだな。元気か?』
『ええ、コウさんも……?…』
などというやりとりから会談は始まった。


学生の錆兎はとにかくとして、相手は多忙かつ超有名な社長様なので、話をするにもそこらのファミレスでというわけにもいかず、オンラインで前回の諸々から今回の色々なことまで少し話そうという予定だったのだが、オンラインなら邪魔にもならないだろうから混じりたい、と、ユキが言い出して、それを見て我も我もと集まってきたヘキサゴン達。

一気に映し出される他の面々にぽかんとする錆兎に
『すまんな。野次馬だらけで…』
と、コウは大きくため息をついた。

そんな社長様の言葉に、珍しく少し不安げに黙るユキと違い、社長様とは完全に対等な一番古い仲間で親友の雰囲気イケメンがディスプレイの中で
『ウサちゃん、おひさ~!
今回はうちのアオイがお騒がせでごめんな?』
と、笑顔でひらひらと手を振ってくる。

『いえ、アオイさんにはとてもお世話になっています。
…というか、義勇がいきなりご迷惑をおかけしてこちらこそ申し訳ありません』
と、頭を下げる錆兎。

そう、対話相手のユートはアオイの婚約者で、営業部の責任者だ。
営業畑の人間だけあって人当たりは良いのだが、実は内面はヘキサゴン一シビアで信頼を得るのは難しい人物だと錆兎は思っている。
だから、彼に対しては非常に気を遣う。

そんな錆兎の内面は勘の良いユキには見抜かれているようで、社長様の許可なく乱入したことで少し大人しくしていたユキがそこで
『はい、そこで笑顔でうちのウサちゃんを威圧しないようにね、ユート。
アオイだって広報のネタ拾えてwinwinでしょっ。
…ってか、そこで社長様巻き込んだアオイの行動の方が俺的にはありえないんだけど?』
と、間に入ってきた。

『え~?威圧してないよ?
いや…うん、うちの可愛いおバカちゃんがずっとそっちに関わっているのに少しばかり妬けたりはしてるけどね?
あと、コウを巻き込んだのはアオイじゃなくて姫でしょ』
と、ユートは苦笑する。

『はい、そこで諸悪の根源が、「ユート妬いてくれるの?私のこと気にしてくれているんだね、嬉しいっ!」とか思っているの丸わかりのだらしない笑顔見せないっ!』

『え?え?私??思ってるけど…思ってるけど、笑顔なんて見せてないしっ!』

『アオイの笑顔可愛いじゃん。ユキ、アオイをいじめんなよっ』

と、そんなカップルとユキのやりとりに、今度はコウが

『姫は悪くないぞ。常に姫は悪くない。
今回のことは……そうだな、姫に責任があるように見えるなら、巻き込まれた俺が悪い』
と、もうわけのわからない擁護をし始めた。

『うん、そうだね。
ユートのバカップルはもうまとめて爆発しろってことで。
でも姫様は悪くないし、社長様も悪くないよっ。
もちろんウサちゃんも悪くないし、ウサちゃんの彼女だって時点で義勇ちゃんも何も悪くないから、気にしないでいいからねっ』
と、それにさらにわけのわからない結論を出すユキに

『なにそれ。
もう爆発は俺じゃなくて社長様教のユキの頭でしょうよ』
と、相変わらず表面上は笑顔のまま言うユート。

『あ~、もう、そういう脱線をするから社長様に呼ばれなかったんだろうよ、みんな。
もう誰が悪かろうとどうでもいいから、話を先に進めるぞ。
とりあえず今日の議題は2件!
一件は錆兎君のストーカーと万世極楽教行方と対策。
もう一件はレジェロでのサビト君達関係の今後の方針について。
以上ですよね?社長』

延々と続くユキとユートのやりとりに痺れを切らして、社長様の秘書のカイが強引に割りこんで話を進めるべくコウにお伺いを立てた。

『あ~、そんなとこだ…』
『さすがカイ君っ!!秘書さんっぽい…』

と、そこで続けるコウの言葉を遮ってやめておけばいいのに感嘆の声をあげるアオイに

『もう、お前は出て行けっ!邪魔っ!!
社長様の言葉遮るとか馬鹿かっ!!』
『そこまで言う事ないんじゃない?
事実だしさ…』
と、再度始まるユキとユートの言い合い。

あ~~と頭を抱えるコウとカイ。
オロオロするアオイ。
さあどうするか…と思う錆兎。

『えっと…コウさんと二人きりとかじゃなく大勢で良いのなら、天元も呼んできて構いませんか?
何をするにしても結局巻き込まれてもらう予定なので…』
と、すでにこの時点で収拾がつかなくなりかけている会談に巻き込むところから始めようと錆兎が提案すると、全員の了承が出て、錆兎は内線で宇髄に連絡する。
少なくとも自分よりはこういう事態をまとめるのは上手い男だ。

ということで、宇髄も加わって、ようやく話の本題に入ることができて、本来やりとりする予定だったコウも錆兎もホッとする。

…が、その話の内容自体は、あまりホッとするものではなかったのはお約束である。


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