こうして部屋割りが決まったところで、それぞれが自分達に割り当てられた小屋に落ち着くことに。
その小屋はコテージなどと言うほど立派な物ではなく、木のドアを開けて室内に入ると、中は8畳間くらいの広さで、雨風はしのげるが本当にそれだけのものだ。
窓はあるがガラスはなく木戸になっていて、閉めてしまえばないも同じである。
だが、開けていて毒のある虫などが入ってきても困るので閉めておくことにした。
その他には本当になにもないが、唯一、少し埃を被ってはいるが毛布が2枚ある。
「毛布は明日洗って干すとして、今日は姫さんは1枚の毛布の上にサバイバルシートを敷いて敷布にしてカバンを枕に俺のコートと俺の上着を掛布に寝てくれ。
煉獄と茂部太郎はそのへんで自分のカバン枕に自分の上着を被って寝ろ」
と、それを確認して錆兎が言うと、それに対して
「錆兎は?」
と、義勇がどこか心配そうな目を彼に向けて言った。
それに対して錆兎は見上げてくる青い瞳に微笑みかけて、
「あ~…俺は今晩は少しばかり忙しくなるから…。
状況確認や今後についてどうするか、宇髄や実弥と話し合ってこないとならないしな。
寝るのは朝になって皆に色々指示してからになるかもしれないし、先に寝ててくれ。
俺が寝てる間に何かやっておいてもらうことになるかもしれない」
と、義勇の髪を指で梳くように撫でながら言う。
その言葉に義勇は錆兎が休んでいる間には何か頼まれるのだと思って張り切って頷くが、おそらく義勇を寝かせるための方便だろう。
自寮の姫君を使うくらいなら、錆兎は確実に茂部太郎に命じると思う。
…が、そんな義勇以外の共通認識も、嘘も方便だと他の2人は指摘することなく黙っておいた。
その後、食事の支度が出来るまで…と義勇は拾った小鳥の包帯を替えたり、みんなで分けた今日拾った果物を少し小鳥にやったりと、小鳥の世話に勤しみながらたわいもないおしゃべりを口にする。
茂部太郎はそんな義勇の雑用をしながらも、時折錆兎の方にも御用聞きに行き、錆兎がカバンの中から普通のシートを取り出し、そこに残りの果物を置いたあと、こそりと持参したものを互いに確認させるように並べていくのを見て、
「これも良ければ使って下さい。
皇帝の行動を見て俺も少しばかり食料確保してきました」
と、自分が確保した食料を並べた。
「ああ、気が利くな。さすが銀狼寮生」
と、それに錆兎は笑みを浮かべてポンポンと彼の肩を叩く。
「やはり色々準備しているのだなっ!」
と、煉獄が錆兎側の物を確認するように視線を向けると、錆兎は
「ああ、俺は寮長だからな。
自寮の姫さんだけはどれだけえげつない事をしても絶対に守るつもりだからな。
全ての手の内を明かすのは協力しあえるとわかっている相手だけだ。
ということで、宇髄には言ってもいい。
だが、他には言わないでくれ」
と言うと、何に対してもまっすぐな煉獄には拒否されるかとも思ったが、
「同感だな。
俺もおそらく半年後には錆兎と同じ立場だからなっ!
今回は予行練習という事で、一緒に姫君を守る練習をさせてもらえれば嬉しいっ」
と、頷いた。
錆兎ももとよりそのつもりなのでそれに頷いて、煉獄のことは姫君と呼ばれる副寮長ではなく、半年後の寮長、皇帝見習いとして、携帯食料や医薬品など、全て一度一つにした上で二等分して持つことにする。
その他、船から避難する前に錆兎がこっそりとバイキングの料理の中から失敬してきた大量の焼き菓子やゴマ団子、パイや春巻きなどの入ったビニール袋を取り出すと、煉獄は
「さすが銀狼寮!あの状況で錆兎も部下も判断が早いな」
と、目を丸くした。
それに
「ああ、寮長を始めとする寮生は、安全の確保が最優先だが、それには姫君の衣食の確保も入るからな。
だから俺は常に寒さを防ぐためのサバイバルシート、その他携帯食料と塩、サバイバルナイフ、あとはコンパクトに折りたためる携帯用ウォータータンク、チャック付きポリ袋はセットで持ち歩いている。
姫君と出かける時は何があっても対応できるようにしないとな。
良ければあとでそれをリストアップして送ってやる」
と、さらに言う錆兎に、
「ああ、助かるっ」
と、煉獄は笑顔を見せる。
とりあえず互いに携帯食料のたぐいは日持ちするからとそれぞれしまって、果物とバイキングの料理や菓子類で食事にするかと義勇たちを呼ぶと、案の定、
「これ…善逸達にもあげちゃだめか?」
と、義勇が言い出すので、錆兎はそれを持参しているビニールに小分けにして、他の3つの小屋に配りに行くことにした。
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