寮生は姫君がお好き810_野営地

2人組が進み始めた方向は、錆兎達が進んでいた方向と違い、かろうじて道がある。
もちろん森の中を進む事は変わりなく、薄暗くどこか気味の悪いのは一緒だが…。

「ここ!ちょっと入りにくいけどっ!」
と、錆兎達がドーム状の建造物を見つけたときと同じように、木々の切れ間にある一方が50mほどの正方形の土地…

…なのはいいが……

「ちょっ、これやばくねっ?入ったらまずい系じゃねっ?!」
とまず不死川がツッコミを入れた。

それもそのはず。
その土地は四方にグルっと囲むように荒縄で囲まれている。
そうしてその荒縄には一定間隔で何やら御札がぶら下がっていた。

そしてその土地の中央には確かに屋根はあるが壁はない東屋のようなものが見える。
そしてその四方にこちらはきちんと壁のある小屋が4つ。

「なんか封じ込めてる系じゃねっ?荒縄に御札って…」
と、バッと前に走り出て両手を広げる不死川。

それに
「え~?俺ら入った時はなんもなかったけど?」
と、発見者の大学生2人組は顔を見合わせる。

一同は足を止め、少しざわついていたが、

「俺が一応様子をみてくるわ」
と、そこで宇髄が縄をまたぎ越して、中へと入っていった。


そうして待っている間に風が吹き、ウォォォオーーーンとまた例の音が聞こえてくる。

それに一同は悲鳴をあげたが、錆兎達はその音の正体を知っているので、ここがあの建造物と意外に近い位置にあるのだな、と、内心思いながら、音の正体を皆に説明した。

皆なっとく。
それでも女性陣の一部は怯えて泣いていた。

錆兎達は桑島老に招待された善逸に招待されて、錆兎などむしろ渋々来たわけなのだが、大多数は普通より少しだけ裕福な家で親に頼み込んで費用をだしてもらったり、なかには自分達のお金で来ている大学生もいた。

ここをみつけた2人組は、2人で一緒にクルーズ船に乗ってその様子を動画に撮ろうと、バイトで費用を稼いだクチらしい。

そんな諸々を自ら語る彼らの話を聞きながら待っていると、やがて宇髄が戻ってきた。


「中央の東屋の隣には井戸があるし、ずいぶんと時は経っているようだが火を炊いたあともある。
内部に血痕その他は見当たらねえし、危険はないと思うぜ?」

そう言う宇髄の言葉に、煉獄がふと思いついたように、じゃあ…と口を開いた。

「では逆な感じかもしれんな。
この中が封印に守られた安全地帯という可能性もあるんじゃないか?」


ああ、それはあるかもしれない…と、錆兎も思った。
前方からは別に嫌な感じはしない。

「どちらにしても…また雨降るかも知れないし、冷えてきてるし、お姫さんに野宿させるわけにもいかんからな。
救助あるとしても昼間だろうし、日中は誰か目につきやすい海岸で待機ということで、夜はここで明かすのがいいんじゃないか」
と、最終的にそう言うと、錆兎は義勇を抱き上げて宇髄に続いて荒縄をまたいで中にはいる。

「ま、それがいい感じかもなァ」
と、不死川もそのあとを追うと、

「薄暗い森にいるよりは全然いいよっ」
と、善逸もそれに続く。

そこまで中にはいってしまうと他もぞろぞろとなし崩し的に続いていくが、最後に二人残った大学生らしき青年が二人、

「ごめん…本当にそれが外部から守るものなら良いけど…そうじゃなかった場合にやっぱり怖いから、俺らは海岸に戻ってシートかぶって寝るわ」
と、持ってきたシートを抱えて元の道を戻っていった。


ぞわり…と嫌な悪寒を感じた気がしたが、何に対してなのか自分でもわからないものを他人に説明することなど出来ず、錆兎は黙ってそれを見送り、皆がいったん集まった東屋の石造りのベンチへと走り寄る。

そこでそれぞれ軽く見てきた物、集めた物などを確認しあった。

まず錆兎と義勇の銀狼寮組、銀虎寮組、金狼寮組、そしてモブ三銃士の9人は昼間に発見したドーム型の建造物とその中に描かれていた絵の写真を見せた上で、途中で拾ったリンゴのような果物を配布する。

一応途中で鳥がつついていたのを見ていたので食べられるだろうと判断した宇髄が口にしてみて問題なかったものだ。

ここを発見した大学生2人組はここを発見したあと、急いで他に知らせようと海岸に戻ったとのことで他に成果はなし。

もう一組は男2女1の幼馴染の3人組で、行動は海岸に戻った大学生二人組としていたらしいが、発見したのはものすごい数の蝶が集まっている塚だとか。

「あれだけいると綺麗な蝶も少し気持ち悪かったけどな」
と、1人がスマホに撮った写真をみせてくれた。

あとの2人は男女のCPで、彼らはずっと海岸に居たという。

まあそれでも1週間ほどと限定されれば、最低限の水と食料は確保出来たようだ。
皆ホッとしたところで4つある小屋の部屋割にと話は移っていく。

現在16名。
小屋は4つなので普通に分ければ4名一部屋だ。

「俺は姫君を守る義務があるから、絶対に同じ小屋で」
と、強固に錆兎が主張すれば、不死川は善逸と、宇髄は煉獄と離れるわけにはいかないと同じく主張する。

そこで不死川が
「あのよォ…俺らは錆兎達と一緒で…。
巻き込んじまった責任もあるし、護衛ってことで…」
と、手を挙げるが、錆兎はそれに少し考え込んだ後、

「それを言うと俺も宇髄達を巻き込んでいるしな。
正直に言うと、俺自身が”姫君”を二人抱え込んで守れる自信がない。
だから我儘を言わせてもらえるなら、あと1人、煉獄をこっちにくれ。
で、茂部太郎達の中から1人こっちな。
その代わり連絡役にやっぱりうちの寮生の1人をつけるから、宇随が我妻の方で護衛役はどうだ?」
と、提案した。
その柔らかい断りの言葉に、不死川は自分が第一に責任を持たなければならない自寮の姫君である善逸よりも義勇を優先して守るとはさすがに言えず、それを了承する。

「あ~…まあ、そういうことならしゃあねえな。
煉獄は自分の身くれえは自分で守れるし、なんならプラス護衛の手伝いくらいはできるからな。
ただし、そういう使い方は外でだけだぜ?
まだあと5か月くらいは副寮長だからな」
と、宇髄も宇髄で別の思うところがあったらしく、そう主張しつつも自寮の姫君と離れることになるその申し出を了承した。


こうして錆兎達は錆兎と義勇、煉獄と茂部太郎の1班と、金狼寮組と宇髄と銀狼寮の射人で2班に分かれて、仁が1人残る形になったのだが、問題はここを見つけた大学生2人組、幼馴染3人組、そして男女のカップルをどう分けるかだ。

結局女性陣は二人一緒の方が良いだろうということで、CP+幼馴染の男女が3班、幼馴染組のあぶれた男子と大学生2人、そして銀狼寮の仁が4人で4班という事に決まる。

そこで
「えっと…ぎゆうちゃん?は1人でいいの?
なんなら女の子3人だけで班にして男性陣の一つの班だけ狭くて申し訳ないけど5人とかでもいいんじゃない?」
と、幼馴染組の女子、ひまりが言うが、
「え~…私、悟と分かれたくないし、いいんじゃないかな」
と、CPの女子の亜美が言い、義勇も今のドレス姿で自分が女じゃないと言うのは言いにくくて、
「うん…私も錆兎と一緒が良いから…」
と、錆兎の陰に隠れつつ小声でそう言い、結局そのままとあいなった。



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