12月の始め…第2週の週末から期末試験が始まるので、勉強のためと称して蜜璃も産屋敷邸に泊まりこみを始めた。
蜜璃が滞在中は前回の合宿の時のように義勇と亜紀が使っているベッドをくっつけて、それを3人で使うようにしている。
蜜璃と2人そろってベッドに腰を掛け、正面の椅子に座る亜紀からまず、編み棒の持ち方や作り目から教わる二人。
彼氏組のように糸を染めるところから…というまでではなかったが、それでも互いに互いの恋人に渡すものだから…と、自分の特徴的な色、義勇は青、蜜璃は緑の毛糸を用意して、わくわくしながら編針を握った。
そして数分後…明らかに蜜璃の制作物との間に違いが出る。
綺麗に均等に出来ていく蜜璃の作り目。
一方でなんだか大きかったり小さかったりと不揃いな自分の作り目に、義勇は早くも涙目になった。
他の物ならとにかくとして、錆兎にあげるのにでこぼこの網目はありえない。
そう言って涙目を通り越して嗚咽をあげながらほどこうとする義勇に、
「大丈夫。一列多少でこぼこしてても大丈夫だからね。
目立たないし気になるようだったらあとで房飾りをつければ完全にわからなくなるから」
と、亜紀が柔らかな声で言ってくれる。
その言葉に勇気づけられて、教えられた通りせっせと編み続けること数十分。
何かがおかしい…
どこか引きつってる感じがする。
それを亜紀に言うと、亜紀は義勇のマフラーを確認して、
「あ~、一マス飛ばしちゃったのね」
と、苦笑するが、義勇はもう笑い事じゃない。
ほどくのは良いとして…ほどいた後に上手く編針に毛糸を戻せるかもわからず、最悪全部編み直しか?!と思うと、また号泣。
それを亜紀は
「大丈夫。大丈夫よ、義勇ちゃん。
抜かしちゃったところは私が直してあげるから、ほどかないでも大丈夫」
と、優しく言って、かぎ針と編針を使って、なんだかすごく上手に網目を追加してくれた。
そして、すごい…亜紀ちゃんすごい!!と、尊敬のまなざしを送る義勇に亜紀はにっこりと
「はい、これで大丈夫。続けましょうね」
と、綺麗に網目を修正したマフラーを渡してくれる。
そうして義勇は頑張った。
朝、普段ならご飯ぎりぎりまで寝ているところを1時間早く起きて編み、夜も早々に部屋に戻って編み、頑張って頑張って適度な長さまで編んで完成したマフラー。
しかしながら、隣で亜紀が鼻歌まじりで凝った模様編みの、まるで市販のもののように見事なセーターを編んでいるのを見て、がっくりと肩を落とす。
何の変哲もないどころか網目もボロボロのマフラー。
クリスマスプレゼントというにはあまりに貧相に思えてきて悲しくなってきた。
でも手作りのものを錆兎に渡したいという欲はあって、それでもこんな下手くそなマフラーを身につけるなんて、どんな罰ゲームだと自分でも思う。
そうして悶々と悩んでいたある日、レジェロのクリスマスイベントの内容が発表になった。
男女別に分かれたチームでタイムを競うらしい。
つまり、錆兎とは違うチームになるという事だ。
4人一組ということで、義勇は亜紀と蜜璃と3人で組んで、あと1人にしのぶを誘おうと思ったら、しのぶが自分はやらないが姉のカナエに頼んでやると言ってくれて、ギルドの姫騎士様と呼ばれる神ナイトの協力が得られることになった時点で閃いた。
錆兎と賭けをして負けた側が勝った側のいう事を一つ聞くということにすればどうだろうか…。
負けた罰ゲーム的な感じなら、このボロボロのマフラーをつけてもらうのも問題ないだろう。
我ながら良いことを思いついた!と、浮かれて錆兎に賭けを持ちかけたなら、義勇の頼みは大抵きいてくれる錆兎は不思議そうな顔をしながらも了承してくれた。
さあ、あとは錆兎のチームよりも速いタイムを出して賭けに勝つだけだっ!
毎度お馴染み誤変換報告です。^^;「亜見直し」→編み直しかと…ご確認お願いします(^^ゞ
返信削除ご報告ありがとうございます。
削除修正しました😄