ギル&アーティ、サンタのヘルプ_2_サンタクロースは降りられない

それはいきなりだった。

ブン!!と足をエリザに向かって振り上げるギルベルト。
悲鳴をあげるフランシス。

そして…何事もなかったように
「で?エリザ止めるって何しようとしてん?」
と、笑顔でマネージャーに話しかけるアントーニョ。

驚きのあまり視線を離せないアーサーの目の前で、蹴り上げたギルベルトの足をスコップで防いで
「あんたねぇ、か弱い乙女相手になにしてくれてんのよっ!!」
とそのままの勢いで今度はそのスコップでギルベルトに殴りかかるエリザ。

うああああ~~~!!!
と思うものの、今度はギルベルトがスコップの柄を交差した両手で受け止めて
「か弱い乙女?んなもんどこにいるんだよ?
俺様の目の前には凶暴な男女しかいねえんだけど?」
と、にやりと笑った。


「ちょ、2人ともやめなさいよっ!!」
と口では言いつつもとばっちりは受けないように距離を取るフランシスに
「ふっかけてきたのはこの馬鹿男の方よっ!」
と、エリザが、
「あぁ?気の毒なこいつのマネージャーが止めてくれって言うから止めただけだぜ?」
と、ギルベルトがそれぞれ言う。


2人ともそう言いつつも少なくともアーサーには本気に見える攻防戦を繰り広げていて、アーサーは残る中で唯一二人を止められそうなアントーニョに視線を向けるが、彼はそれを止める必要性を微塵も感じていないらしく、にこにこと微笑んだままだ。

そして…エリザのマネージャーもまた、その二人のやりとりは全く気にならないらしい。

「それで?エリザの何を止めるん?
暴力やったら止まらへんで?
もうあれは呼吸と一緒や。
やめさしたら死んでまうで?」
と、恐ろしい発言をする。

そして…さらに恐ろしいことに、それを言われたマネージャーの側も
「そんな今更な事をお願いしたりはしませんよ」
などと言うではないか。

エリザとギルベルトの攻防を凝視していた視線を今度はエリザのマネージャーとアントーニョに向けるアーサーに、普段は変態じみたキャラなくせに実は変なところで常識人なフランシスが
「…坊ちゃん、気にしないでいいからね、あの人達は…。
恐ろしいことにバイオレンスにも慣れっこだから、死ぬ前には止めるから」
と、はあぁとため息まじりに言った。


「もういいわ。
ギルちゃんとエリザちゃんのバイオレンスはいつものことだから見ないことにして、結局マネちゃんはエリザちゃんの何を止めて欲しいのか教えてくれる?」
と、どこか諦めたようにギル達に背を向けて、フランシスはマネージャーの方に向き直る。

ようやく建設的に話を進めようとする相手が現れたことに、目に見えてホッとするマネージャー。

「そうなんです、聞いてくださいよ、フランシスさん」
と、アントーニョをガン無視でフランシスの方に歩み寄った。



そうして聞きだしたところによると、あと2時間ほどでエリザがMCを務めている【エリザの部屋】のクリスマスの生放送特別企画が始まるらしい。
ゲストはエリザがずっと推し続けている音楽家のローデリヒ・エーデルシュタインで、彼の生演奏がメインということでグランドピアノをセッティング。
スタジオのセットもいつもとは違い、エリザ自らが気合を込めて手配した美しいもので、全ては準備万端。
あとは当人を待つだけというだけになったのだが、ここでとんでもないトラブルが発生した。

ローデリヒは海外から今日の便でこちらへ到着する予定だったのだが、この雪で滑走路が使えず彼が乗った便が着陸できずに仕方なく別の空港へと向かうとのこと。
そちらに向かって車や列車でこちらに向かっても当然番組には間に合わない。

それを聞いたエリザはなんと
──滑走路の雪を失くせばいいんでしょっ!!
と、なんとスコップ片手に雪かきをしに行くと言い張っているのだという。

それを聞いてギルベルトは、
「お前…馬鹿か…」
と、ため息をつく。

そのギルベルトの襟首を掴んでエリザは叫んだ。

「あんたに何がわかるのよっ!!
あたしが今日をどれだけ楽しみにしてたと思ってんのっ!!
クリスマスにローデさんと共演なんて、もう人生最大の神様からのクリスマスプレゼントなのにっ!!
サンタが来れないなら、自分からプレゼントを分捕りに行くしかないでしょっ!!」

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