──見つかったぞ~
びしょぬれになりながら水柱邸の玄関でそう叫ぶと、待ち構えていた隠がタオルを持って走り寄ってくる。
ややホッとした様子ながらも、宇髄の周りを見回して、
「…義勇は?」
と、不安げに問う。
その内心は当然察している宇髄は、
「ああ、頑丈な俺らはとにかくとして義勇は風邪ひかせたらなんだし、見つかった現場からは俺ん家の方が近かったからそっちに行かせた。
別に他意はねえぞ」
と、いったんそう答えて、隠に
「てわけだから、もう夜遅いし家主も継子と一緒に俺ん家に泊まると思うから、お前ら帰って大丈夫だぞ。
面倒かけたな」
と帰るように指示をする。
ここからは込み入った話になるだろうから、不死川と二人きりの方がいい。
そう判断してのことだ。
居間のちゃぶ台の上にはいつ錆兎達が帰って来ても大丈夫なように隠が気を利かせて茶の用意をしておいてくれていたので、宇髄は火鉢の上のやかんから急須に湯を注ぎ、自分と不死川の分、二つの湯呑みに茶を淹れると、
「どうせなら酒くらい用意しておいてくれるといいんだが…そこまで求めてもしゃあないか」
と、自分の湯呑みからずずっと茶をすすった。
その間、不死川は無言で、ちゃぶ台の前に正座をしている。
ずいぶんと緊張している様子をみれば、こりゃあ結構なことをやらかしたな…と予想は着く気がした。
「で?何をやらかしたよ?
ここは俺と二人きりだ。言っちまえ」
と、黙りこくったままの後輩柱にそう促してみると、不死川はぼそりと
…俺んとこに来いって言った…
と、小さな小さな声で言う。
それだけで宇髄は全てを察した。
そして舌打ちをする。
「お前なぁ…ダメだろ、それ。
友人としてとか人間としてとか、もう色々あるけどな?
俺達の仕事、考えたことあるか?
人間関係の不和が命取りになるくれえわからないわけじゃあねえよな?
そういう意味で考えんなら、もう責任追及されても仕方ねえやつだぞ?」
故意に人間関係を引っ掻き回せば…しかもそれが柱のとなれば、最悪処罰が下っても仕方がないだろう。
元々、錆兎は宇髄にとって初めての後輩で可愛がっていたというのもあるが、それを別にしても今回の諸々は不死川がほぼ100%悪いと思う。
本人もその自覚はあるようだ。
最終的に義勇は不死川になびくこともなく、無事見つかって錆兎の手に戻ったが、義勇から事情を聞いた錆兎がどう動くかはわからない。
宇髄自身が錆兎の立場だったとしたら不死川を絶対に許さないところだが…
「戦力が減るのはまずいから腹を切れとか職を辞することを求められたりはしねえだろうが、お前がそれなりの目で見られることは覚悟しとけよ。
まあ…揉めたままだと互いのためにはならねえだろうから、錆兎がキレたら俺が宥められるだけは宥めてみるが…」
義勇の記憶がないことを利用するなど、ここまで最悪なことをしていたとは思わなかった…と、吐き捨てるように言えば、元々実直な性格の不死川だけに、宇髄に言われるまでもなく本人が一番そう思っているらしく、言い訳の一つもせず、むしろ本人自身がなんらかの処罰を望んで頷いた。
「とりあえず…事情は理解したからまず俺ん家の別室で待ってろ。
俺が錆兎の側…っつ~か、義勇にどう聞いて、それについてどう思ってるか聞いてから、謝罪するなり贖罪するなり考えるぞ。
いつ合同任務になるかわかんねえからな。
わだかまりはある程度残るにしても、任務に支障が出ねえようにすり合わせはしておかねえとな」
最悪、当分この二人を同じ任務に就かせないように願い出る必要は生じるかもしれない…と、思いつつ、宇髄はその場合に事務方やお館様にどう説明するかを脳内でまとめながら、不死川を連れて自宅、音柱屋敷へと帰ることにした。
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