「今帰りかい?ちょうどいい、送って行くから乗りなよ。彼女さんも一緒に…」
と、男、童磨が言うと車が止まり、中から背広を着た男が出てきてドアを開ける。
「私は不死川の彼女じゃないし、歩いて帰るからいい」
と、義勇が即答。
「う~ん、でも少し暗くなってきたし、女の子一人では危ないよ」
「知らない人間の車に乗る方が危ない」
「えっとね、確かに君とは知り合いじゃないけど、不死川君の知り合いだから大丈夫だよ?」
「私にとって大丈夫かどうか決めるのは私であってあなたじゃないと思う」
そんな風に繰り広げられるやりとりを、不死川はぼ~っと見ている。
意外だった。
義勇はいつもぽやあっとしているイメージがあるので、こんな風に反応して言い返すとは思っても見なかった。
これも錆兎の教育の成果なのだろうか…
「とにかく乗りなよ。不死川君もっ!」
と、おそらくぼ~っとしている不死川を促すためにだろう、少し大きめの声で言われて、不死川はハッと我に返った。
これは…自分にも義勇を車に乗せるのを手伝えという意味だろう。
「不死川っ、この人達とめてっ!」
と、降りてきた男に腕を取られた義勇の方も不死川に訴える。
どうする…どうするっ?!
迷って固まる不死川に、童磨も義勇も双方が怪訝な顔をした。
ダラダラと額を伝う嫌な汗。
理屈では童磨を手伝うのが正しいと思うが、感情ではこれ以上義勇が嫌がることをしたくない。
「「不死川(君)!!!」」
2人に声高に呼ばれて、いよいよ窮地に陥って、不死川がとりあえずそちらに一歩踏み出した瞬間…
──正義の従者1号ただいま参上っ!!
と、サングラスをかけた小柄な青年が飛び出してきて、テイっ!と、義勇の腕を掴む童磨の部下の手を手刀で叩き落した。
──同じく2号、華麗に参上っ!姫様の護衛に入りまっす!
と、同じくサングラスの、こちらはかなり背の高い青年が、1号を名乗る青年から引き渡された義勇を後ろにかばう。
──同じく3号は現在、噂の『万世極楽教』の教祖が女子高校生を拉致しようとしている現場を撮影中でえっす☆
と、3人目は言葉の通りカメラを片手にこの状況を動画に収めている模様。
その3号に向かって…いや、正確には3号の持つカメラに向かって蹴りだす童磨の部下の足を、交差した手で受け止めて、そのまま解いた手でその腕を掴んで見事に投げ飛ばす第4の男。
──そして正義の社長がうちの公式プレイヤーに危害を加えようという悪の組織から彼らを守るために参上だ。
そう言うと従者達と同様にかけていたサングラスを取る仕草もカッコいい。
そして、その下から現れる素顔は精悍を絵に描いたようなとてつもないイケメンだ。
薄暗い道で夕焼けを背にたたずむその青年の姿は、不死川もテレビで見たことがある。
まるでドラマの中のヒーローのように心浮きたってしまうくらいのカッコよさに啞然としていると、彼は黙ってさっと右手をあげた。
そして
「赤井さんwith警察の皆さんたち、どうぞよろしくお願いします」
と続く言葉で、四方からバラバラっと数人の警察官が飛び出てくると、童磨の車が義勇を捉えようとしていた部下を1人残して急発進する。
それに赤井…と呼ばれた、おそらく他より若干地位がありそうな警官が無線でなにやら連絡を始めた。
もちろん童磨の部下の男は即拘束され、社長の従者3人衆はその周りに集合。
──…コウ…さん?
いきなり登場したテレビの登場人物に少し混乱しながらも、義勇が社長様を見上げてそう言うと、彼はにこっと義勇を見下ろして
「レジェロの開発元、三葉商事の取締役社長、碓井頼光だ。
錆兎とは同門の兄弟弟子で本当の兄弟のように思っているので、今回相談を受けて介入させてもらった。
錆兎も今回の諸々は承知していて、今こちらに駆けつけている。
じきにつくと思うので安心して欲しい」
と、そう説明する。
それに義勇は嬉しそうにうんうんと頷いた。
「私もっ!私も錆兎からいつもコウさんのお話を聞いていたので、お会いできて嬉しいです」
と言う彼女の横で、自称従者一号がサングラスを外して
「ユキちゃんのことは?俺も錆兎とはお友達なつもりなんだけど?」
とぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「俺は…一緒に合宿した仲だもんね~」
と、従者2号ことランスもサングラスを外し、
「…ということで、コンコンキツネのお姫様は従者達あ~んど社長様の手によって悪の秘密結社から守られたのでした、チャンチャン」
と、従者3号ことヘキサゴンの1人であるカイが解説をいれながらカメラを回しているところに錆兎と宇髄が到着した。
良かったね^^さねみん…犯罪者顔から犯罪者にならずに済んで( ´艸`)
返信削除ぎりぎりセーフっ!
削除さねみんは不器用な性格だから色々危うい💦