以前なら自分で判断がつかないことは宇髄に相談をしていた。
しかし宇髄もある意味当事者で、さらにどちらかと言えば錆兎の側に立って動いている気がする。
弟の玄弥くらいか…。
でも玄弥の場合は逆に不死川の側に寄り添い過ぎて、こちらも客観的にとは言い難い。
授業も上の空で考え込んでいると、休み時間に目の前に汁粉の缶がコトンと置かれた。
「…あぁ?」
と、顔をあげるとそこにはまさに当事者中の当事者、不死川の初恋の相手であり現在もまだ想い続けている同級生、冨岡義勇が立っていて、
「不死川…おはぎが好きなら同じ小豆だし汁粉も好きだよね?」
と、言い残してクルリと反転する。
え?ええ??
もしかして自分が今日一日悩んでいたのに気づいてわざわざ買ってきてくれたのか?
優しい!
…というか、義勇はあまり自分から他人に構うタイプではないから、もしかして今はもう自分は義勇の中で特別な相手達の仲間入りをしたのだろうか…
やっぱり美弥の言っていたように、自分が今のように義勇に優しく接していたら、普通に好意を持ってもらえたのか?
「待ったっ!!」
と、不死川は去りかける義勇の手首を慌てて掴んだ。
それに少し不思議そうに振り向きざまこくんと小首をかしげる姿も可愛い。
「聞きてえことがある…」
「うん?」
「お前さ…もし俺がお前を怒鳴ったりどついたりしなかったらどうしてた?」
実に唐突な質問だ。
自分でもそう思う。
だが、義勇はスルーすることなく考えてくれたようである。
しかし返ってきた言葉は
「存在を気にしなかったかも?
茂部太郎とかと同程度の認識…かな?」
で、
「ああ、そうかよォ…」
と、がっかりする。
しかしそこで義勇は満面の笑み。
「でも…不死川が普通のクラスメートと同じような人間じゃなくて良かったよ」
もうその笑顔と言葉に、そこだけ空間が少女漫画の世界に見えた。
本当にキラキラしていて、その先の言葉を期待するあまり心臓がドッドッドッと高鳴る。
「…それって……」
と、緊張のあまりかすれた声で問いかける不死川の言葉は、世にも無情な言葉で遮られた。
「錆兎に出会えたからっ!」
まったく他意も邪気もない笑顔にえぐられる。
彼女はきっと自分が長い間彼女のことを好きだったことなど忘れているのだろう。
ただの仲の良い仲間たちの1人というだけのようだ。
「あのよォ…」
「ん?」
「もしも…もしもだけどな?」
「うん」
「レジェロでお前を助けたのが俺だったら?」
諦めきれていないのに気付かれて気まずくなるか?と思いつつもついつい尋ねてみたら、
「お礼言って炭治郎と街に戻ったかな。
次の日、学校でジュースくらいは奢ったかも。
でもそれだと錆兎に出会えなかったから…」
「お前、錆兎錆兎って脳内錆兎のことしかねえのかァ?」
「うん!なんていうかね…運命だと思った。
ゲーム内なのにね、なんか運命を感じたんだ」
「…その”運命”とやらのせいで、嫌がらせされたり、危ない目に遭ったりしてんだろォ?」
「う~ん…そうかも?
それでも錆兎がいない平穏な生活より、不穏でもなんでも錆兎がいる方がいいよ?」
全く悪気なく錆兎愛を語られてさすがにへこんだ。
そうして視線を落とした先にある汁粉の缶。
それだけは錆兎ではなく自分に対しての義勇からの紛れもない善意だとそれを手に取って、
「で…これは…」
と、語る言葉も
「今ね、自販でミルクティ押すとそれが出てきちゃうみたい。
で、どうしようかなって思ったんだけど、錆兎がね、不死川はおはぎ好きだから飲み物でも餡子系いけるかも?って言うからあげに来たのっ!
奢りだから飲んでねっ」
と、容赦なく身も蓋もない事情を説明して去って行った。
朝…美弥と話していた時はもしかしたら…と膨らんでいた思いは、またシオシオと縮んでいく。
やり取りの間に冷めてしまった汁粉をそれでももったいないからときっちり飲み干しながら、悪気なくけしかける美弥とも悪気なく気持ちをへし折る義勇ともしばらく距離を置いて心の元気と平穏を取り戻したい…と思いつつ、きっと寄ってこられたら拒絶できない長子な自分の意外な優柔不断さを思って、不死川は大きくため息をついた。
圧し折り方が義勇ちゃん💖さねみん…恋する乙女にたらればは無いのだよ(;^ω^A
返信削除あ、阿鼻叫喚の回で何個か宇随さんが居ましたのでご確認お願いします_(_^_)_
悪気なく天然な圧し折り方が義勇ちゃんですよね😅
削除誤変換のご報告ありがとうございます。
修正しました。