清く正しいネット恋愛のすすめ_209_不信

不死川実弥は冨岡義勇が好きだった。
とてもとても好きだった。

なにしろ小等部入学から高等部の現在まで、実に9年もずっと想い続けて今年で片想い歴10年目なのである。

それでも自分がその横に居る立つことを諦めたのは、彼女が好きになった男が、どうひっくり返っても自分が敵う事のないくらいの学業優秀で見目麗しく、運動神経が良いどころか武道の達人で、彼女をしっかり守ってやれる上に、性格もたいそう宜しく周りからの人望も厚い完璧な男だったからだ。

もちろん、男の方も彼女を想っていて、とても大切に扱っている。

最初はぽっと出の奴に…と思ったものの、自分の古くからの友人である宇髄を通して交流を持って、鱗滝錆兎という男についてある程度しっかりと見極めてみれば、義勇の幸せを考えれば自分と居るよりも錆兎といる方がどう考えても幸せになれると納得した。
そして彼女の幸せを思って9年抱き続けた初恋を諦めたのである。

しかしながら、しかしながら、だ、己の想いの成就を諦めただけで、恋心自体が消えたわけではない。
錆兎は優秀な上に人格的にも素晴らしい大切な友人ではあるのだが、その錆兎といるよりも自分と居た方が義勇が幸せになると言われれば心は揺れる。

諦めた直後にはかなりドクドクと血を流し続けていた心の傷も、最近では錆兎の隣で幸せそうにしている義勇を見続けてようやく塞がりかけてきたところだった。

が、転入生の早川美弥の言葉によって、そのなおりかけのかさぶたがペリペリと剥がれて再び心の傷による痛みで、なんだか胸がズキズキと痛み始める。

…美弥のいう事はでたらめではない。
確かに錆兎と付き合うようになって、義勇への嫌がらせは多くなった。

美弥の言う通り、自分が義勇に避けられていたのは本当にただただ小学生の男子にありがちな幼い行動のせいで、今は普通に接してもらえているし、錆兎が現れる前にそういう態度を取れていたら、普通に交際を申し込んでも受け入れてもらえた気がする。

そして…自分が相手なら、自分の彼女の座を狙って嫌がらせしてくる女子など当然いない。

そうだ。相手が錆兎でファンが多いから嫌がらせをされ、それどころか暴漢に刺されかねない状況に置かれたのだ。

確かに錆兎は男から見てもいい男だ。
錆兎本人に関しては何も問題となるようなものはない。

だが…それでも、下手をすれば刺されて死ぬかもしれないほどの嫉妬を一身に受けて錆兎と付き合うことが、果たして義勇にとって幸せなことなのだろうか……

不死川はわからなくなってきた。



学校へついてしまえば美弥とは別のクラスなので廊下で分かれて自分のクラス、1Bへ。

「不死川、おはよ~」
と、美弥と居た時はどこか遠巻きにしていたクラスメートや役員をやっている仲間たちが不死川を以前と同じように迎え入れてきた。

気軽にかけられる声。
近寄ってきてじゃれつく友。

役員の女性陣、甘露寺だって義勇だって、当たり前にテスト勉強のことで話しかけてきた。

ただこれと同じことなだけだ。
不死川がまず転入生に与えてやって欲しいと思ったのは、ただ、これだけのことで…しかし、彼女が不死川の隣に居た時には確かに与えられていなかったのである。

1Bの皆が自分に良き仲間として接してくれる。
でも季節外れに来た転入生に対してあまりに排他的過ぎたんじゃないだろうか…。

美弥が居なくなって途端に元々そうだったようにフレンドリーに接してくるクラスメート達に不死川は心の中にもやもやしたものが募っていく。

今でもこれは仲間外れというものではないのか…と言う思いは消えていなくて、それでも誰の賛同も得られないという事はやはり自分がおかしいのか…。

正直もうそのあたりがわからなくて、不死川は心底途方にくれてしまった。



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