──実弥君、おはようっ!
朝、美弥は弟を保育園に送って行って、そのまま不死川を待っている。
この弟と言うのは実は教団の側が手配した、教団の施設で育った子どもだ。
不死川実弥に近づくために、わざわざ北海道から引っ越してくる前に早川家の養子になった。
さすが、生まれ落ちた瞬間から教団のために動くように育てられた子どもだ。
高校生美弥よりよほど上手に立ち回っている。
そうして彼が先生に連れられて園舎に入って行ったあと、いくらか待って、弟を保育園に送り出した不死川を捕まえた。
おはようの挨拶のあと、自分のせいで不死川まで呼び出されて面倒をかけたことを謝罪する。
──私人見知りだから…実弥君の友達なら安心して付き合えると思ったんだけど…相手の側の迷惑考えてなかったね…
と、しゅん、と、肩を落としてみれば、実は情が厚く優しい不死川はあっさりとだまされてくれた。
──いや…俺の方こそ上手く紹介してやれなくてごめんなァ
と、頭を掻く。
昨日の話し合いではヒヤっとしたが、他はとにかくとして不死川自身は美弥のことを全く疑っている様子はない。
ということで、安心して方向転換だ。
ススっと不死川に寄って、その制服のブレザーの裾をきゅっと掴んで自分よりもだいぶん背の高い不死川を見上げると、
「…本当に私のせいでゴメンね…。
もしかして、実弥君まで何か立場悪くなってない…?
そうなら遠慮なく私から距離取ってね…」
と言いながら、片手のこぶしを口元に当てて俯くと、
「そ、そんなことねえからよォ、気にすんなっ」
と、案の定、不死川は少し焦ってぽんぽんと軽く頭を叩いてきた。
自分に対して好意的な…特に弱者に弱いこの男は本当に扱いやすくていい。
都合が悪くなれば泣けばいいのだ。
「でも…なんだか宇髄君が実弥君が冨岡さん虐めてたとか言い出してたし。
悪い噂でもたてられたら…」
と、さらに自分のことよりも不死川のことを気にして案じているふりをすれば、安心させようと思うのだろう。
こちらから聞かなくてもあちらから情報を与えてくれる。
「あ~…あれは事実だからなァ。
小等部の入学式で冨岡に一目惚れしたのはいいんだが、まあ、あれだァ、好きな子ほどいじめちまうってガキだったんだ。
で、嫌われて逃げられて、逃げられるから追いかけて、また怖がられて嫌われてってのを繰り返して高校1年になった1学期の途中でなァ、知り合いの紹介で怯えたあいつが相談した相手が錆兎。
で、それが縁で二人が付き合い始めて、宇髄経由で錆兎と和解して、錆兎がいるなら怖くねえってんで、冨岡も普通に友人付き合いしてくれるようになったんだァ」
と、新たに入ってきた情報を猛スピードで記憶してそれを加味した計画を考え始める。
「そっかぁ…、今じゃすっかり面倒見の良いお兄ちゃんな実弥君も、そんな素直になれないちっちゃな男の子時代があったんだねぇ」
と、ワンクッション置くためにクスリと笑いながらそんな風に言うと、
「まあ…ことの始めの頃はちっちぇえガキだったけど、ほんの最近までそれだったからなァ」
と、不死川は照れくさそうに視線を空に向けて赤くなった。
本当に…本当に扱いやすい男…。
美弥がしでかした数々の失敗を全部リカバリするネタを提供してくれる。
そして出た結論。
「ねえ、実弥君、やっぱりさ、初志貫徹したほうが良いと思うな」
狂信者は助かる手段を模索して…そして罠をはるため最初の餌を投げ入れた。
久々に誤字?報告です。美弥が2個目くらいから美沙になってます(;・∀・)ノシご確認ください。
返信削除ご報告ありがとうございます。
削除助かりました😄
修正しました。
さっき気付いたら、目次のところも美沙になってるのでお暇時にご確認お願いします。(^^;ゞ
削除修正しました、ありがとうございます😀
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