「う～ん…ちょっとねぇ…お粗末かなぁ…
もう少し上手に仲良くできなかった？」
にこにこと笑顔で言う教祖は、笑顔だが感情が読めない。
いつだって彼は丁寧で優し気で…でもだからと言って優しいかと言われると美沙は少し迷ってしまう。
だから目の前で報告を受ける彼がいくら笑みを浮かべていたとしても、美沙は次の瞬間殺される可能性だってあるのだ。
なので美沙は
「申し訳ありません…理事長まで出てきてしまったので……」
と、カタカタと震えながらも必死に言い募るが、それは理由にならないどころか、藪蛇だったらしい。
「うん、俺はね、どちらかと言うとその理事長をもう少し困らせて欲しかったかなぁ…なあんて思ってたんだ。
確かにね、まりちゃんを拾ったからには面倒をみてあげないとだし、彼女の心を癒すためには錆兎君？を手に入れてあげないとだし、そのために邪魔者は遠ざけたかったというのもあったけどね。
それは可哀そうな一人の信者を救うための行動でね。
教団の重要な活動の一つがね、彼らが通う学校の理事長を少し困らせると言う事だったから、一石二鳥かなと思って、今回、わざわざ東北支部の君の一家に東京に引っ越してもらったんだけどなぁ…。
せっかく有名な子と同じクラスになってかき回してもらえるかなぁと思ったんだけど…離されちゃったかァ…。
でもま、同じ学年だからね。
色々校内で問題を起こさせたりとか、挽回はできるよね？
頑張ってね」
と言うと、教祖は下がって良しとばかりに手を振った。
どうやら首の皮一枚で繋がったらしく、美沙は大きく安堵の息を吐き出して、大急ぎで御前を去る。
もちろん挽回ということはリカバリは必須なので何か考えなければならないが、今回はすでに釘を刺されているので、唯一まだ味方に引き込めているのであろう不死川実弥を上手に使って自分に目が来ないように行動しなければならない。
しかし相手は多数で学年でも中心的人物の集まりで…特に宇髄と胡蝶はとても頭の回転が早そうで厄介だし、自分の側には味方が全くいないので、ことの困難さにため息しか出ない。
何か…彼らの中に食い込める材料がないだろうか……
手駒に使えるのは不死川1人。
それも敵には用心されている…。
美沙は必死に記憶を手繰って考えて…そしてハッとした。
そうだ…宇髄が面白い事を言っていた気がする。
不死川は冨岡義勇が好きでずっと追い回していた…ということは、彼女にふられて今彼女は鱗滝の彼女をやっているということだろう。
そのあたりを不死川に聞けば、きっかけになる何かが掴めるかもしれない。
役員達について聞けば用心されても、不死川個人の事を知りたいというだけなら、話してくれるだろう。
そう思いついて、少しでも不死川の好感度をあげるところから始めようと、美沙は不死川にメッセージを送ることにした。
──実弥君、今回は私のせいでごめんなさい。友達を作らないとって思って焦って意地になってました。迷惑かけないよう気を付けるからこれからも仲良くしてね。
そう打って送信をタップすると、美沙はにやりと笑みを浮かべた。
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