清く正しいネット恋愛のすすめ_204_阿鼻叫喚

「宇髄…これってなァ…言いたかないが、仲間外れとかイジメとかじゃぁねえかァ?」

翌日から宇髄は、錆兎と伊黒がガードする女子を含めた役員組と離れて、不死川と転入生早川美沙と行動を共にするようになった。

そうして数日が経ったわけなのだが、どうもそれでは不満らしい。
おそらく早川に言われているのだろう不死川がそう言ってくるのに、宇髄はため息をつく。

「あのなぁ…不死川、B組は全員で何人だ?」
と、いきなりの質問に、不死川は不思議そうに
「…40人」
と答えた。

「そう、40人だ」
と、宇髄はそれに大きく頷いて見せ、そして続ける。

「40人中6人に親しく構ってもらえねえってだけで苛めっていうか?
しかも相手は自分達の側に事情があることも説明してるし、無視してるわけでもなきゃあ悪口言いふらしたり嫌がらせするわけでもねえ。
さらに友人の学級委員に馴染めないようなら当人を除いた残り34名の好きなあたりに構ってもらえるように紹介するからと頼んでもらってて、それ言うか?
普通、転校生だからってここまで至れり尽くせりじゃねえぞ?」

「…それはそうだけどなァ…本人が親しくなりてえって奴と親しくなった方がいいんじゃねえかァ」

そう言う不死川に、ああ、本当に眼を塞がれてんなぁ…と宇髄は内心苛つきながらも、表では飽くまで飄々とした表情を崩さずに続けた。

「じゃあなにか?みんな絶対に自分が親しくなりてえって思う人間が振り向いてくれなきゃ苛めっていうのか?
言いたかねえがな?
それじゃあずっと冨岡が好きで構って欲しくて追い回してたが逃げられ続けてたお前は小等部からずっと冨岡に苛められてたって事か?
周りに聞いてみ?
親しくなりてえけど逃げられてたってことでも、周りから見たら冨岡がお前虐めてたってことにはなんねえから。
ウサ達は今、早川に対して理由もなしに危害加えたり露骨に無視したりしてねえだろ?
自分達が無理だからってことで、胡蝶に他と馴染めるように取り持ってやってくれって頼んでんだろ?
ウサ達と親しくなりてえやつらを全員ウサ達が受け入れなきゃ苛めだって言うなら、クラスの奴ら全員ウサ達と一緒に居てえよ?
でも事情わかって節度ある距離取ってんだろうが。
そういう状況で自分だけウサ達に特別扱いしろってんならそっちが我儘だし、それで苛めだって騒いだら騒いでる方が嫌がらせ、苛め認定されっぞ?」

もう宇髄もだいぶイラっとしていたので言葉は多少きつくなりはしたが、声音はやっぱり飄々としたままだ。
しかし、そこで早川がワッと泣き出す。

「私…そんなつもりじゃっ……ただっ…実弥君のお友達とっ…仲良くなりたかったっ…だけっで……」

まあどんな状況でも女子が泣き出せば注目を浴びるわけなのだが、今回はクラス中がこのやりとりを聞いていたので、1人が

「あのさ、宇髄君の言う事正しいよね?
不死川の友達って言えばまず宇髄君じゃん?
鱗滝君は元々は宇髄君の友達であって不死川君の友達じゃないよ?
さらに元々は冨岡さんは不死川君が小等部時代から虐めてた相手で、宇髄君経由で不死川君と鱗滝君が和解して、鱗滝君の彼女だから付き合いがあるってだけで、直接的な関係じゃない。
だから不死川君の仲良しと仲良くなりたいってだけなら、宇髄君が来てくれてるだけで十分じゃん?
私達だってさ、最初、しのぶに促されて早川さんに色々話しかけたりしてたじゃん?
それを無視したのそっちじゃん?
それで不満っていうのはさ、結局、不死川君の友達じゃなくて有名人で人気者の鱗滝君と仲良くなりたいってだけって思われても仕方ないよ?
女子が泣いたら男子が悪者になるってよくあるけどさ、私は宇髄君を支持するし、なんならいいよ、先生呼んできて白黒はっきりしよう!」
とまくしたてると、止める間もなく教室を駆け出して行ってしまった。

ぽか~んとする当事者3名。
その一人の不死川の襟首をグイっと一人の女子が掴んで言う。

「で?!苛めってなに?!
私達、仲良くしようとしたじゃん?!
私達が仲良くしても、本人が仲良くしたいって思う人気者が構ってくれなかったら苛め?!
ざけんじゃないわよっ!!」


──…こわっ…女子こわっ……

と、さすがに宇髄も小声で呟き、何かあったらフォローに入ろうと近くにいたモブ三銃士も、他の男子達もウンウンとそれに頷いた。
すっかり静かになる男子と対照的に、女子がどんどんエスカレートしてくる。

「我慢してたのにっ!!
私達の宇髄君が特別に転入生を気にかけてても事情が事情だからって私達は我慢してたよっ?!!
私だって泣いて宇髄君が傍に居てくれるなら、毎朝2リットルペットボトル単位で水がぶ飲みして盛大に泣いて見せるわっ、ボケッ!!!」
と、ガチ泣きし始める女子数名。

ああ…近頃女子の一部が機嫌が悪かったのはそっちだったのか…と、納得する男性陣。
あまりの阿鼻叫喚っぷりに、他のクラスの生徒まで廊下からそっと1Bの教室を覗いている。

そのうち本当に担任が飛んできて、とりあえず話を…と、不死川と早川、宇髄と錆兎、義勇、あとは一番冷静に状況説明ができるだろうということで胡蝶が会議室へと呼ばれていった。


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