夜…ピロピロ~ンとスマホのLineの着信音がなる。
すでに大方は解散したものの、鱗滝邸に女子1人はまずかろうという話になった時、義勇と共に残ることを表明した亜紀は、そのまま女子部屋だった部屋に義勇と一緒に泊まっていた。
甘露寺と3人で居た時は毎日大浴場でワイワイ入っていたものだが、今は2人なので普段は部屋についている内風呂を順に使っていて、今は義勇が風呂に入っている。
そんな中で机に放りだしたままの義勇のスマホの着信音が聞こえたので亜紀が視線を落とすと、どうやら不死川からのLineらしい。
と言う文字が目に入って、亜紀は、これは……と、表情を硬くした。
そして即、宇髄に電話で報告する。
そこで、義勇が風呂から出たらスマホを持って一緒にそのまま居間に来るように指示が返ってきた。
それから数分後…部屋着を着て頭からぽたぽた水滴を垂らしつつ浴室から出てくる義勇に、タオルを持って駆け寄る亜紀。
「義勇ちゃん、髪はちゃんと拭かないと風邪ひくからね」
と言いつつ、軽くタオルで水気を拭きとったあと、スマホとドライヤーを手に、
「ちょっと宇髄君から話があるから、居間に行こうね。
あっちで乾かすから」
と、義勇を居間へと促した。
もちろん寒くないように上着も着せた上である。
一応役員合宿が終わった後、宇髄はそのまま鱗滝邸に住むとして、義勇が宇髄が住むのに彼女である自分がダメなのは認められない!とごねたため、自他共に認めるメイド長がおつきとして残り、現在家主の錆兎を含めて男女2名ずつ4名が残っていた。
なので、居間には男二人が待っている。
錆兎は風呂上がりの義勇の水分補給用にレモン水を、そしてそれとは別に義勇を含んだ全員に温かいお茶を用意していた。
「…えっと…こんな時間にお茶会?」
唯一状況を理解していない義勇。
コテンと小首をかしげるのに、宇髄が錆兎を肘で突いて促すと、錆兎が少し困ったように眉尻を下げる。
そして
「義勇…スマホに実弥からLineが来ていると思う。
それで申し訳ないんだが…これから指示する通りにやりとりをしてもらえないだろうか…」
と、申し出た。
プライバシーの侵害だ…という自覚がありありで、出来れば避けたいわけなのだが、宇髄に義勇はあまり他人とのやりとりが得意ではないと言うか…危機感がないと言うか…任せておくととんでもない方向に進みそうだと言われれば、愛を持ってしてもかばいきれない。
本当に申し訳ないと思いつつも、こちらに任せてもらえないかと思って言ったわけなのだが、義勇は不思議そうな顔でスマホのロックを解くと、
「あ…ほんとだ。
お風呂入ってた時かな。
私が聞いて打つより錆兎が打った方が早くない?」
と、なんとスマホをそのまま差し出してきた。
危機管理もプライバシーも全く気にしないやんごとなさで、
「亜紀ちゃんにドライヤーかけてもらってるから、声聞こえにくいし」
と、のたまわる。
その言葉に亜紀は当たり前のように
「義勇ちゃん、お水飲んだらドライヤーかけましょうね」
と、グラスを義勇に渡して、義勇がそれを飲み干すと、櫛を手に丁寧に義勇の髪にドライヤーを当て始めた。
「…やんごとないな」
と、目を丸くしてその様子を凝視する宇髄に、錆兎も
「うむ。やんごとない」
と、大きく頷く。
…ということで、結局、やりとりを考えるのは宇髄だということで、宇髄が打ち込むことになった。
──お風呂入ってた。なに?
と、必要最低限の物言いをするため、ちょっとズレた感じを受ける義勇らしい返し。
宇髄はそのあたりが上手いな、と、錆兎は横で見ていて感心する。
不死川もおそらく全く疑っていないのだろう。
相手が義勇のつもりで会話を始めた。
──早川のことなんだけどよォ
──だれ?
宇髄の返しがあまりに義勇っぽくて、錆兎は思わず吹き出す。
おそらく本人でも同じ返しをするだろうと思った。
──転入生だ、今日会っただろォ
──ああ、そういえば。
──学校では真菰や宇髄や胡蝶に断られたんだけどよォ、やっぱり俺の親しい奴らと仲良くなりてえらしくてなァ
──だから?
──お前から言ってくれねぇ?
──なんで?
──なんでって…お前が言えば聞いてくれんだろうよぉ
──???宇髄とは不死川の方が親しいと思う。
──そうじゃなくって…
──???
──お前から錆兎に頼んで、錆兎からコンコンキツネの面々の仲間に入れてやって欲しいって頼めねえかァ?
──無理。
──なんで?
──真菰ちゃんがダメっていうことを錆兎にさせられない。迷惑。
──あ~…じゃあさ、レジェロ内じゃなくてもいいからよォ。それこそお前が仲良くしてやってくれねぇ?
──錆兎が当分知らない人はダメって言うからダメ。
──そこをなんとかよぉ…
──無理。ダメ。私にとって一番は錆兎だから。
淡々と答える宇髄。
それを横で見ていて、錆兎は自分で打たずに宇髄に任せて良かったと思った。
確かに義勇が言いそうな言葉の羅列だが、さすがに自分で義勇にとって一番は自分だと言うのは気恥ずかしい。
しかし
「宇髄、すごいな。まるで私だ」
と、亜紀に髪を乾かしてもらったあと、自分のスマホを覗き込んだ義勇がそう言うくらいには、本当に義勇そのものの対応だ
こうしてはっきりきっぱり容赦なく断ったため、不死川も義勇方面からの仲裁は諦めたらしい。
最後に
──わかった。でも俺がお前に頼んだことはみんな…特に宇髄や胡蝶には内緒な?
という言葉に
──錆兎には隠し事はできないけど、宇髄としのぶちゃんには言わない。
と、身も蓋もない、それじゃあ意味ないだろう?というような返答を返したところで、やりとりを終えた。
うん。やんごとない(*´ω`*)💖
返信削除義勇ちゃんはぼ~っとしている間に身の回りの諸々を全部周りにやって頂かれてしまっているイメージありますね😅
削除ナイトとメイドに囲まれてますしね☝