「は?逃げた??」
一方で宇髄との話し合いを終えて二人連れ立って自宅に戻った錆兎は、いつものように出迎えに出てこない義勇に不思議に思って、何故かいる不死川に話を聞くと、逃げたと言われて唖然とした。
ま、そのあたりの話はあとで。
捜しに行かないと…。
宇髄、悪いけど隣の隠に留守番を頼んでそのあとに一緒に捜してくれるか?
実弥は話はあとで聞くから時間が許すなら隠と一緒に留守番な」
と、外に飛び出していく錆兎。
そんな錆兎の勢いに押されて固まっていた不死川は、その後ろ姿が消えたあたりで我に返って
「俺も捜しに行ってくらァ」
と腰をあげかけるが、それを宇髄が制した。
「やめとけ。お前、逃げられてんだろ?
怯えられているなら追い詰めねえほうがいい」
そう言われて不死川は肩を落とす。
「俺も捜しに行くが、見つかったら錆兎より先に俺が話を聞いてやる。
錆兎は気づかなかったみてえだが、お前の様子と言葉からすっと、たぶん記憶失くしてるうんぬん以前にお前が何かやらかしてんだろ?」
と、全てお見通しなのでは?と思われることまで言われれば、それでもとは言えない。
まあ…本当のことを錆兎に言ったら、柱同士で関係に亀裂が入りかねないことを思えば、宇髄の仲裁はありがたいと不死川は思った。
不死川が納得したのを見定めると、
「じゃ、隠を呼んだら俺もそのまま行くわ」
と、宇髄が出て行く。
それを見送って、不死川はさきほどから何度ついたかわからないほどついている大きなため息をまたついて頭を抱え込んだ。
義勇が出て行ったのはついさっきなので、おそらくすぐ見つかって戻ってくるだろう。
それまでに自分も言ったこと、思ったことをどう伝えるかを考えなければならない。
他の仕事であれば謝罪をして責任を取って退職という事も考えられるが、この仕事でそれは一番迷惑だ。
気まずかろうと辛かろうと、とにかく続けるしかない。
感情に流されてやらかしてしまったのは自分なので、自分が気まずいのは仕方ないのだが、それだけでは済まない。
錆兎も義勇もなんらかのしこりは残るだろうし、それが影響して集中できずに怪我をしたり、最悪命を落とすなんてことになったら、詫びても詫びきれるものではないだろう。
まるで死罪を待つ罪人のような気分で待ち続ける不死川。
だが、これ以上悪いことはないと思われたその時間のその後に待っていたのはそれ以上に最悪に思える時間だった。
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