清く正しいネット恋愛のすすめ_199_転入生

「不死川君、おはよっ」
「おう、はよっ。今日からかよ」
「うんっ」

ある日の登校時、見知らぬ女子高生に声をかけられ、挨拶を返している不死川をみかけて、錆兎は目を丸くした。

隣に居る義勇は気にしていないようだが錆兎の他にも不思議そうな視線を不死川に向けている人間がちらほらいる。

なにしろ他の学生ならとにかく、相手は強面の不死川だ。
普通に見知らぬ女子が寄ってくるようなタイプではない。
しかも背まで伸びたサラサラの黒髪に色白の肌のなかなかに綺麗な子で、清楚で大人しい印象を受ける。

思わず凝視していると、不死川の方が気づいたらしい。

「お~、錆兎、ちょうどいい所に!」
と、不死川が女子と駆け寄ってきた。

「こいつな、早川美弥。転入生。
就也と同じ保育園に弟がいんだよ。
でなァ、学校にも慣れてねえし、レジェロもやってるって言うんで、ギルド入れてやっていいだろォ?」

ぺこりと笑顔で頭を下げる女子高生。
不死川と知り合いな理由はわかったが、そのあとの依頼は…と、珍しく悩む錆兎だが、彼が答えを出す前に、いつのまにか彼の後ろに来ていた宇髄が代わりに答える。

「あ~、それはNGだわ。
どっちにしろギルドの入退に関してはサブマスの俺らにゃ権限はねえ。
決めんのはマコモちゃんだし…」
「だから、マコモに頼んでくれよ」
「あ~、無理。
つか、今はもう公式と契約しちまってるから、マコモちゃんでも新規は入れらんねえよ」
「…1人くれえ構わねえだろォ」
「ダチ同士のお約束じゃなくて、企業との契約だからな。
そういうわけにもいかねえよ」
「でもよォっ」
と食い下がる不死川の制服の袖をくいと軽く引っ張って
「不死川君…いいよ、私、迷惑みたいだし…」
と、うつむく女子高生に、錆兎は少し居心地が悪い気がしたが、宇髄は飄々と
「レジェロはお前が一緒に遊べば良い話だろっ。
他を巻き込む必要はねえよ」
と、話を終わらせた。

そして
「それよりウサ、テスト前に教わりたいとこあんだけど…」
と、錆兎の背に手をかけ、不死川達を置いて錆兎を押すように教室に急がせる。

そうして教室につくと、何か物問いたげな錆兎を一旦制して、当たり前に一緒にいる義勇をしのぶの所に誘導した。

「あ~…ちょっとな、今近づけたくねえ相手がいる。
たぶん…不死川がなんか言ってくると思うんだが、上手く処理してくれ」
と依頼すると、しのぶは少し考えて、
「そういうことなら…固めておきますね」
と言ったあとに、
「亜紀さんっ!お仕事ですよっ」
と、最近はすっかり割り切って和解したらしく亜紀を呼ぶ。

そうして亜紀がそこに義勇もいることに気づいて駆け寄ってくると、
「じゃ、そういうことで、錆兎さんの所に戻って大丈夫ですよ」
と、にこりと微笑んだ。

「あ~、もう、しのぶのそういう回転の速いとこ好きだわ」
とこちらもにやりと笑うと、宇髄は錆兎の所に戻って行く。

そして、ノートを出すと、サラサラとそこに文字を走らせた。


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