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すごいね、豪邸っ。
私も実はこっそりレジェロで家を買ってはいるんだけど、ミドルクラスのすごく平々凡々な二階建ての小さな家だから、キャッスルエリアって来たの初めてだよ。
映画に出てきそう。
「俺は倉庫が多ければ外観にはこだわりはないけど、ギユウが過ごすとなったら変な家にも住めないし…」
と言うサビト君。
どこぞの社長様も同じような事言いそうだなと思って聞いていると、その横でギユウちゃんが
「サビトと一緒に映りこむんだから、やっぱりそれなりの外観じゃないと困るし」
と、主張。
そして…その後の
「さすがサビト君だよねっ！」
と言うシエル君にリアルで噴き出す一同。
なに？と思って私がキョロキョロすると、テンゲン君が盛大に笑い転げながら
「ああ、こいつね、口癖が『さすがサビト君！』なわけよ。
この前体育祭があったんだが、その時に運営委員の職権乱用してサビトの競技中は一人でマイク握り締めて、『さすがサビト君！さすがサビト君！さすがサビト君！！』ってずっと叫んでて、もう1年名物になって2年女子に大ウケで、ファンクラブまでできたんだぜっ？」
などと説明してくれる。
何故サビト君の応援をしてシエル君のファンクラブができるのかよくわかんないけど、シエル君は
「ようは…みんなが『さすがサビト君！！』って思っているってことだよねっ！
みんなの心の代弁者と認められたんだよっ！！」
と、大変ドヤ顔で宣言する。
来年も運営委員をやって叫ぶんだ！と宣言するシエル君に、
「恥ずかしいからやめろっ！ほんっとうにやめろ」
と顔を覆うサビト君。
そしてシエル君の隣のアキちゃんは、
「来年は私も運営委員やって『さすがギユウちゃん！』って叫ぶんです」
と、嬉しそうな顔でのたまわった。
それに対して彼氏が
「それは…聞き捨てならないな」
と、やや険しい顔をするので、やはりそこは自分を応援して欲しい？嫉妬？って思ったら、続く言葉は
「例えアキ君でもマイクは渡せないよ。
僕にはサビト君がいかに素晴らしいかを叫ぶ義務がある！」
しかし彼女は当然のようにその彼氏の言葉に
「大丈夫。男子と女子は競技が別だから、男子の時にはちゃんとシエル君に返して、なんなら私も横で一緒に叫んであげる」
と、大きく頷いた。
「さすがアキ君！君は僕の最高の理解者だよっ」
と、それに頷き返す彼氏。
で、ああ、このカップルはぁ…と、脱力する私。
「シエル君の推しは私の推しだよ」
「アキ君…」
見つめ合う目と目は甘く美しいが、内容が…。
と、リアルでそんな会話が交わされている間に、サビト邸の居間にはシノブちゃんとサネミンとモブタロウ君＋α×２が入場。
ちなみにモブタロウ君＋α×２は、通称モブ三銃士というらしい。
全員クラスメートとのことで、何故集まるかと言うと、なんとこれから遊ぶ前に1時間、みんなで試験勉強するんだって！
さすが賢い学校の高校生は違うね。
私が高校時代なんて、ネトゲはやっても勉強なんて本当に試験直前くらいにしかやらなかったよ。
けど、彼らはこれを毎日やってるらしい。
あ～あ、私も…頼めばコウはこうやって時間取って教えてくれたかも…
そうしたら今頃ユキ君にバカバカ言われずに済んだのかしら……
いや、無理だな。
ユキ君はIQの高さ買われて前社長に英才教育された男だし…凡人の脳みそじゃきっと無理。
…というわけで、お勉強会開始。
この様子はテンゲン君が動画に撮っていて、あとで全員に配信するらしい。
それで復習する人もいれば、この時間だけで理解してその後は見ない人もいると、人それぞれ。
問題を解くのもシエル君やテンゲン君なんかは別窓を開いてPC上でやってるけど、イグロ君やギユウちゃんなんかはリアルでノートを開いてカリカリしてる。
そして…私は…そもそもぜんっぜんわからない。
え？高校生ってこんな難しい問題やってるの？？
私の時もこんなんだったっけ？
と、その様子を眺めつつお茶。
で、サビト君は先生役。
すごいな。
こんな内容をきちんと理解したうえで他に教えられるんだ。
…と、感心していたら、私のお茶を足しに来てくれたランス君が帰り際、
「ここ…間違ってる。
XじゃなくてYに代入な」
と、ムラタ君のノートの一点をポンポンと指さしてキッチンに消えていった。
………え…？
まぁ～～ったくわかってないのは私だけ？！！
あとでその話をうっかりユキ君に言ったら
──え？賢いって言っても高校1年の問題でしょ？どれ？俺にだって余裕で解けるけど？
ってバカにされたよ(泣
でもユートが
──いやいや、これ難しいって。俺も解けない。
って苦笑しつつもそう言ってくれたから良しとする。
ちなみに…1学年360人中、サビト君、毎回首席だそうで。
いや、私は天下の海陽学園でずっとトップを取り続けた当時日本一賢い高校生だったコウが身近にいるからまあ…と思うけど、コウいわく、『空気読めなくてボッチだった俺と違ってサビトは友人も多いからな。あいつの方が百倍すごい』とのこと。
うん…確かに当時のコウと比べると、サビト君の方が人当たりは100倍良いな。
あの頃のコウは本当にとっつきにくすぎて怖い人だった。
当時を知らない皆からすると想像もつかないだろうけど…
それに比べるとサビト君は何でもできる上に人当たりもいい。
さらに…サビト君だけじゃない。
シエル君とシノブちゃんは毎回1位のサビト君の次の2位3位を争う仲だそうで、普通の学校なら余裕でトップ張ってるであろう方々。
イグロ君とテンゲン君は上位20位に入ってて、他も100位には余裕で入っているとのこと。
まあ、なんだね。
このレベルの学校の3位以内とかに入れるのは、もう勉強に対する才能がないとダメなんだろうけど、100位以内くらいなら日々の努力なのかも。
サネミンとかは最初は下から数えた方が早いくらいだったのが、1学期の後半からこうして勉強会に参加して、毎日最低1時間勉強し始めたら、100位内に入るようになったらしいから。
元々は無条件に上の大学に進学できる上位100位にぎりぎり入ってなかったギユウちゃんと一緒に上の大学に行くためにサビト君が彼女と二人で始めた勉強会だったらしいんだけど、途中でシノブちゃんやサネミンが加わって、その後まわりも参加して、今では先生役のサビト君を抜かすと総勢12名。
ちょっとした塾のお教室くらいの人数に膨れ上がっている。
運営の私達の側もこういう使い方をされるなんて思ってもみなかったけど、まあ、勉強と遊びを上手に両立してもらえて良かったねという感じだね。
そして…ディスプレイ上で教えてるサビト君にリアルでギユウちゃんが時折つんつんてリアルで質問してて、その都度サビト君が隣のギユウちゃんに向ける視線がすごく優しかったりするのが微笑ましい。
「あ～、わかりにくかったか。
これはな…？」
と、すごくすごく優しい声音で説明してて、うん、こんなイケメン彼氏がこんなに優しく教えてくれるなら勉強も楽しくなるよね、と、ニマニマしてしまう。
…のは、私だけじゃなく…アキちゃんがそれをガン見しつつ、隣のシエル君の腕を無意識にバシバシ叩いてる。
とっても嬉しそう。
「…ねえ、サビト…」
真剣な顔でノートに向かっていたギユウちゃんがふと手を止めてサビト君を見上げた。
「なんだ？まだわからないところあるか？」
「ううん、そうじゃなくてね…あのね…」
「……？」
「…私ね、サビトのこと好きだなって…」
ガクン！！と、頬杖をついていたサビト君が手からずり落ちて体制を崩した。
「なっ…なにを突然っ！！」
すごい真っ赤で焦った様子のサビト君が年相応の男の子っぽくて可愛い。
コウもそうだったけど…この手の子って全てに余裕かと思うと、恋愛系に関してはすごく奥手だったりするよね。
ギユウちゃんの方はにこにこと
「えっとね、なんか、言いたくなった」
と、ほわんほわんとした様子で言う。
なんかこのつかみどころのなさが、ちょっとフロウちゃんを思わせる。
サビト君、そんなギユウちゃんを前にスーハ―スーハ―深呼吸をして気を落ち着かせて、
「うん、ありがとな。
でも今は勉強に集中しような？」
と、そんなギユウちゃんを前を向かせて、それでもディスプレイ上は何事もなかったかのようにリアル真っ赤な顔のまま、問題の解答と説明に入った。
理性、すごいな。
そして…そこにさすがに執事歴十数年のランス君、黙ってグラスに入った水を持ってきてサビト君の前に置く。
「ありがとうございます」
と、こんな時でも礼儀正しくお礼を言って、サビト君はその水を飲み干すと、だいぶ落ち着いた様子で次の数式の説明に入った。
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