清く正しいネット恋愛のすすめ_188_コンコンキツネとエルオデイベ準備中

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こうして1時間のお勉強時間が終わると、待ちに待った遊びの時間っ!

「さ、支度すんぞ~。まずは4号室へGo!だなw」
と打ち込むテンゲン君。
リアルでも一段落とばかりに焼き菓子を齧りながらお茶をすすっています。


「4号室?」
と聞き慣れない言葉に私が首をかしげると、

「この家には6つの倉庫があって、それぞれに用途が決まっているんですが、4号室はいわゆる不用品が入っていて、そこからは装備品でもアイテムでも好きに持って行って良いということになってるんですよ。

最初はサビトさんだけが入れてたんですけど、毎日集まっているので自然にみんな不用品を入れるようになって、今では共有倉庫のようなものなんです。
薬や食べ物系も合成素材を放り込む第三倉庫の物を使ってギユウさんやシエルさんが作っておいて第4倉庫に入れておいてくれるので、ほぼ競売要らずなんですよ。

マコモさんとかカナエも学年が違うので勉強会には参加しませんが、必要なモノはここに取りに来ますしね」
と、シノブちゃんが説明してくれる。

そんな話をしていると、時間を見計らったようにマコモちゃんとカナエちゃんが現れた。

「やっほ~!全員で気合入れてキー集めてダンジョン行くよ~!
目指せ全員の衣装ゲットだよっ☆」
と、相変わらず元気なマコモちゃん。

そう、今回のイベはまずは普通のエリアの敵を倒してドロップするキーを100個集めて、それを鍛冶スキルの高いプレイヤーなら自分で、そうじゃなければこの期間だけ鍛冶アカデミーに設置してあるNPCに有料依頼して魔王城の鍵を作って、それを使えば魔王城の門が開いて、城の中に入れるんだ。

で、魔王城の敵をガンガン倒して、最終的には魔王を討伐。
その魔王討伐の当たりドロップがカインやアリアの衣装と、武器。

このドロップは確定じゃなくて、他の登場キャラの衣装や武器のこともあるから、カインとアリアの衣装と武器全部揃えようと思ったら、それなりに通ってもらうことになるよ。

でも、低レベルで魔王倒すのなんて無理っていう皆にも、キーを集めるのに散らばってる期間限定のモンスターを倒すと、稀に登場人物の子ども時代の衣装とか、威力は強くないけど本物よりも一回り見た目が小さいレプリカの武器とか、あとは登場人物の人形とか、この期間しかゲットできない色々な物を落とすから、楽しんでみてねっ。

…まあ…コンコンキツネの面々は、当然ながら魔王を目指すんだろうけど……


「まずはみんなアトン平原に移動ね。
街近でこんな大勢で狩りしてたら他の…特に低レベルのプレイヤーさん達に迷惑だからねっ!」
と、皆が薬やら食べ物やらの準備をしている間、マコモちゃんが宣言をした。

キー集めの効率を考えたら街から近い、つまり、敵も弱いあたりでガシガシ狩るのが一番だから、何故この高レベルの皆が食べ物とか用意してるのかと思ったら、なんとイベのNPCが出るエリアでも一番敵が強いアトン平原でキー集めをするらしい。

そのあたりの他に対する気遣いがさすが有名ギルドのボス、マコモちゃん。
コンコンキツネが強いだけじゃなくてマナーの良さでも有名なのは、やっぱりボスのマコモちゃんがしっかりしてるからだねぇ。

ここで足りなくなりそうな分の食べ物はギユウちゃんとシエル君がせっせと追加で作ってて、薬はサビト君とシノブちゃんが同じく作って配布中。


「みんな、リンク狩り用にマクロ直しておいてねっ!
あとは、アトンが万が一混んでたら他に移動するから、なるべく急いでねっ」

と、マコモちゃんの激が飛ぶ。


私達がレジェロの前身のレジェイルやってた時はボスがコウで、コウは自分は色々準備しても私達は自由にやれって感じだったから、こういう仕切りをしっかりしているギルドってすごいなって思う。
それこそ資本あれば、起業して仕事出来ちゃいそう。

一応薬も食べ物もほぼ揃うと、最後にギユウちゃんが
「はいっ!サビトの分っ!作りたてだよっ」
ってナイト用の食べ物を作って渡しているのが可愛い。

リアルでは逆なんだけどね。
サビト君の方が料理が上手くて、ギユウちゃんは特訓中。

で、たまに微妙なモノが出来てギユウちゃんが食べないでって言っても、サビト君は
「ギユウが俺のために作ってくれたんだ。
まずいわけがないだろう」
って普通に美味しいって食べてあげるんだよね。
もう、本当にギユウちゃんのことが好きなんだなって感じで微笑ましい。

そして…逆にサビト君がおそらくギユウちゃんの好みに合わせて作ったのであろう物をギユウちゃんが美味しそうにあむあむと食べている時は、横でサビト君がそれをすごく幸せそうに見ているんだ。

コウほどじゃないけどサビト君も黙っているとキツく見える顔立ちなんだけど、ギユウちゃんを見る時の目は本当にすごく優しい。

「美味いか?ギユウ」
って聞いて、うんうんって頷くギユウちゃんに
「…そうか…」
って目を細める…そんななにげないやりとりが、もう甘くて甘くて、ご馳走様な感じ。

今もお茶菓子はランス君とシエル君作だけど、ギユウちゃんが好きならしくて食べてしまったプティフールを当たり前に自分の皿からギユウちゃんの皿に移してあげてる。

普段は木刀を握ってる骨ばった大きな手の指先で、なんだか食べるのが下手でいつも何かしらこぼすギユウちゃんの口元のクリームをぬぐってあげてて、ディスプレイの方がお留守だったらしくて、

「サビト~!!出発するよっ!!」
って言葉と共に、マコモちゃんがピーー!!って警告音を鳴らしたのでようやく気付いたらしく、
「あ、悪い。ちょっと目を離してた…」
って、そこでディスプレイの方に向き直る。

それに
「なあに?ギユウちゃんに見惚れてでもいた?」
って言ったマコモちゃんは冗談だったんだろうけど、リアルでちょっと顔を赤くして片手で口元を覆いつつ
「ああ、うん…そう。悪い」
って、正直に言っちゃうサビト君。

か、可愛い…。
カッコいいけどなんか可愛い。

それにテンゲン君が
「はいはい、爆発、爆発(笑)」
って囃し立てるけど、マコモちゃんは
「まあ、ギユウちゃんは可愛いからしょうがないねっ!
じゃ、今度こそ出発するよ~!」
と、適当に流して、自分が先頭に立って玄関に向かった。


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