清く正しいネット恋愛のすすめ_184_亜紀の贖罪3

「ギユウちゃんのことはサビト君が来るまでは特に何も思ってなかったんですよ。
学年三大美少女って呼ばれてるくらいだから美人さんだなぁとは思ってましたけど、なんというか…言い方悪いんですけど、暗い感じの子で…。

原因は小等部の頃から彼女を好きな男子に苛められてたからなんですけどね。
ほら、好きな子ほどいじめちゃうってやつです。

だからあまり気にしたことなくて…初めてくらい特別に意識したのって、サビト君が迎えに来てお守りされてるの見た日からなんですよ。

玄関前でね、ギユウちゃんを追いかけてきたいじめっ子の男の子をサビト君が投げ飛ばしてね…カッコ良かったですよぉ……
ギユウちゃんをかばって労わりつつ、いじめっ子の方に啖呵を切るサビト君。

でもって、サビト君といるようになって、ギユウちゃん、それまで死んだような目をしてたのに、目にキラキラハイライトが入るようになったんですよねっ!
暗い感じの子だったのに一気におっとりぽわわんとした世にも愛らしいお姫様に早変わりですよっ!

その時にね、唐突に気づいたんです。
この二人、カイアリだぁ~って。

いや、サビト君がカインに似てるのはずっと思ってたんですけど、ギユウちゃんがアリアに似てるのって、何故か意識したことなかったんです、あんなにそっくりなのに…。
それに気づいちゃうともうだめですねっ!
2人が一緒にいると、平和な現代に転生して学生生活を楽しんでるカイアリにしか見えないっ!
2人が何をしてても、もうそばでみられる幸せしか感じないわけなんですっ!

考えてみれば…サビト君には幼稚舎時代からずっと憧れていたんですけど、じゃあその隣に自分がってならなかったのは、私がアリアじゃないからなんですよっ。
推しであるカインの横にいるのはアリアじゃないとダメなんですっ。
例えそれが自分だとしても、カイアリの間に割り込むなんてことは許せませんっ。
現代に転生した運命の恋人同士…それを見守る友人としてヒロインのすぐ隣なんて特等席に居られるなんて、幸せ過ぎて…」

…と、そこまで一気に吐き出してうっとりする亜紀に口を挟む余地を見いだせずに圧倒されるアオイ。

ああ、これ知ってる。
高校時代からの旧友で腐女子のアキラちゃんがホモを語る時の目だ…。
下手な突っ込みをいれると引きずり込まれるか殺されるやつだ…。

──…というわけでですね
と、そこで亜紀がコホンと咳ばらいをする。

「自らの身の危険と言うのは当然怖くはあるんですが、それを気にしている場合じゃないんですよっ。
それでなくても私は幼稚舎の頃にやらかしてるので、その位置に昇りつめようと思ったら人の倍の努力をしないと…」

うん…なんというか、亜紀ちゃん、努力家って感じはするけど、努力の方向性が…と思いつつも黙って聞いているアオイ。

その間にも亜紀の話は続いていく。


「ミミズシューズを履いてしまって泣いちゃうギユウちゃんの前にひざまずいて、その足を取ってペットボトルのミネラルウォーターを出して洗ってあげるサビト君も尊すぎて、もう、本当に良い物見せてくださってありがとう!!と思ったら…多少の自己犠牲は当たり前ですよねっ。

むしろ、ギユウちゃんと同じ靴のサイズだった私、グッジョブ!という気分でした。

アリアのピンチになすすべもなく悩んでいるカインにアイテムを提供なんて美味しい役、エルオデファンなら譲れませんっ。

…というわけで、美味しいイベントありがとうございますという立場だったわけなんですが、このあと、カイン…もといサビト君にギユウちゃんを同性として支えるという大役を仰せつかって今に至ってます。

で、その後、サビト君やその周りの指摘もあって、その同級生の問題行動が少しずつ周りに認知されるようになって、なんだかクラスで浮き始めたこともあって、居心地が悪そうだったし親御さんが彼女を海外留学させようとしていたらしいんです。
彼女に脅されて嫌がらせに加担してた子とかもいて、結構恨みを抱いている子とかもいたみたいで…。

で、この前の事件があったので、彼女の方が恨まれていつか刺されそうだよね…とか話してたんですけど、なんと先日から彼女が行方不明になったと学校の方へ親御さんから連絡があったんです。
今もまだ行方不明なので、今はまだ役員にしか伝えられてないんですけど、明日にでも全校に通達されるそうなんです」

「うあ……シャレにならないね、それ…」
と、アオイは実は知ってはいるのだが、ここは驚いて見せる。

「問題行動起こしたことがあったとしても、身の安全が脅かされていいわけじゃないもんね…」

「…そうですね。
とりあえず、家出なのか事件なのかまだわからないんですけど、親御さんも学校も探して欲しいとのことなので…」

「うん、じゃあ、このブログでも公開しておくね。
無事見つかって亜紀ちゃんみたいに改心できると良いね」

「はい、そう思います」

こうして少し意地悪をしていたということは広まることにはなるが、犯罪歴がつかなければもういいという武藤の両親の許可の元、武藤まりの行方はネット上でも捜されることになった。

そして自身に対する非難を覚悟してインタビューに応じた亜紀だったが…何故かその後、お仕えされたいメイド様ナンバー1として有名になっていくのである。


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