と、男は内心舌打ちした。
うまくいくはずだった…。
裏切り者に恐怖心を与えながらも、憎き敵に全ての罪を着せ、できれば皆に断罪をさせる予定だった。
全ては予定通りに……なのに、たった1つのミスが計画を狂わせてしまった。
いや…まだだ。
まだ復讐は失敗してもいないし、終わってもいない。
スノーホワイトの部分が不完全に進んでいるだけだ。
――そろそろアリスに移行させようか…。
そう、ハートの女王に叫ばせるのだ。
【首を刎ねておしまいっ!】…と。
全ては予定通りに……なのに、たった1つのミスが計画を狂わせてしまった。
いや…まだだ。
まだ復讐は失敗してもいないし、終わってもいない。
スノーホワイトの部分が不完全に進んでいるだけだ。
――そろそろアリスに移行させようか…。
そう、ハートの女王に叫ばせるのだ。
【首を刎ねておしまいっ!】…と。
「そういえばこの部屋…」
英一の状態はどうやら落ち着いたらしく不死川が付き添っていて、英二は何故かその隣でひどくうなだれている。
英二の様子がおかしくなったのは、不死川が呼吸困難を起こした英一が倒れた拍子に落としたらしい小麦粉の入った包み紙を拾ったのを公表してからなのだが、理由を知っているのは当人を除けば錆兎と義勇、それに宇髄だけで、その錆兎はなぜか宇髄に窓際まで引っ張られて行ってそこで二人でなにかしら相談を始めてしまった。
あと一人、理由を知っていそうな義勇に聞いても
「錆兎にきいて欲しい。話すべきかそうじゃないかの判断は俺じゃないから」
と、にこにこ笑顔でやんわりと断られてしまう。
それ以上強く聞こうにも、その隣には彼らいわく坂田の金時の子孫だという、どこかライオンを思わせるような迫力のある青年が控えている。
英一の状態はどうやら落ち着いたらしく不死川が付き添っていて、英二は何故かその隣でひどくうなだれている。
英二の様子がおかしくなったのは、不死川が呼吸困難を起こした英一が倒れた拍子に落としたらしい小麦粉の入った包み紙を拾ったのを公表してからなのだが、理由を知っているのは当人を除けば錆兎と義勇、それに宇髄だけで、その錆兎はなぜか宇髄に窓際まで引っ張られて行ってそこで二人でなにかしら相談を始めてしまった。
あと一人、理由を知っていそうな義勇に聞いても
「錆兎にきいて欲しい。話すべきかそうじゃないかの判断は俺じゃないから」
と、にこにこ笑顔でやんわりと断られてしまう。
それ以上強く聞こうにも、その隣には彼らいわく坂田の金時の子孫だという、どこかライオンを思わせるような迫力のある青年が控えている。
まるで猛獣を従える姫君のような雰囲気で、主に危害を加えると判断されたら噛み殺されそうだ。
冗談交じりに黒井がそう言ったなら、義勇は
──俺は主じゃない。ここにいる中でこういう状況の時に上にいるのは錆兎だけだ。
と、否定し、
青年、煉獄は、
──あながち間違いではないなっ!俺が今筆頭から任されているのはまさに義勇の護衛だからなっ!
と、それを肯定する。
義勇の否定も噛み殺すというところにではなく、自分が主だというところにしかかかってないので、とどのつまりは、害を及ぼせば噛み殺されるというところは否定しないということだろう…と、黒井は諦めて苦笑するにとどめた。
それでも、黒井がさすがに
「なんで俺らだけ蚊帳の外なんでしょ?」
と、この状況での放置状態に不満気に言うのに、王も表情は穏やかながらも同じことを思うのか、
「そうですね…」
と同意して頷く。
あとの一人、水木はどこの輪にもなんとなく入りづらいのか、とりあえず後輩である錆兎と宇髄の方に来ようとするが、どうやら大切な話をしている最中なこともあって近寄られたくないようで、それを隠さない宇髄の露骨に嫌そうな表情を見て挫折する。
そんな微妙な空気の中、義勇はとりあえずここなら安全圏だと預けられた煉獄の隣で、クルリと周りを見回して、おそらく少しでも場を和らげようと思ったのだろう、いつも小声の彼にしてはやや大きい、他に聞こえる程度の大きさの声で言った。
「壁の絵とかアレだね、白雪姫。
そういえばテーブルクロスの刺繍もリンゴだし…」
「あ、ほんまや~。白雪姫だけに毒りんごで毒薬ですか?」
と、いい加減暗い緊張した空気が辛かったのか黒井がそれに乗って、隣の王に
「それは…少し不謹慎かと思います」
と注意される。
「でもま、ほんま白雪姫やったら、お姫さんは毒で死にかけたあとは王子が来はってめでたしめでたしで終わるし、ええんちゃいますか。」
と黒井がやはりどうしてもこの空気を変えたいのか補足をすると、義勇も同じ事を考えていたのか、
「そうだよな。あとはハッピーエンドだ」
と微笑んだ。
そのほわほわっとした様子に
「義勇さん、えらい別嬪さんやし、そうやって笑ってはるとなんだか癒されますなぁ」
と、黒井がやはり微笑むと、隣の煉獄は澄まして
「ただし個人的興味を持つと怖いぞっ!
俺は腕力にはかなり自信がある方だが、筆頭には勝てたことがない!
その彼が少し離れるのに俺を護衛につけるという意味を察しておくといい」
と言う。
その煉獄の言葉に、それを本気と取っていいやら冗談と取っていいやらわからず、黒井は
「おお、怖ぁ!
でもそういう意味では俺の彼女もめちゃ怖いんで、他に目をやるとかはなしなしですわ。
筆頭にボコられる以前に彼女に殺されてしまいますわ」
と、笑う。
それでしっかり尻に敷かれている宣言をする黒井にみんなで笑って、そしてまた静かになった。
そのわずかな沈黙を破ったのもやはり黒井である。
「何故かはわからんけど、加瀬兄弟をここに連れて来たかったって事かもしれませんな。
有名人やから何かで恨み妬みでも買いはったって事やろか」
「そ、そうだよね」
と、黒井の言葉に今度はようやく話の輪に入れてホッとしたとばかりに水木が乗ってくる。
最初は寒さに暖炉に張り付いていた面々も、今は広いリビングで奥の広いソファには英一を寝かせ、英二と不死川がついていて、窓際には錆兎と宇髄。
ドア側を背にして黒井と王、その左側の暖炉を背にしたソファには義勇と煉獄、その正面に当たる右側のソファに水木が座って、テーブルを囲んで話している。
「とりあえず…家主を探して本土に連絡を取ってもらうか船で送ってもらうのが先決ですね」
王がハァ~っとため息をつきながら眼鏡をクイッと押し上げてそう言うと、ん?というように一点に視線を止めた。
ポツン…と降って来た雫がテーブル中央に置かれた花瓶に活けてあった白い花の花びらを赤く染めてさらに水に落ち、水をも赤く染めていく。
「…っ!!!」
目を見開いて息を飲み、恐る恐る雫の落ちてくる天井を見上げて、声にならない悲鳴をあげる王。
その様子にソファに座っている面々が一斉に天井を見上げて、一部が悲鳴をあげた。
白い天井の下に設置されたガラスに赤く血で浮かび上がる文字…
『白雪姫の継母は毒りんごを差し出し、ハートの女王は叫んだ――首を刎ねておしまいっ!…と……』
「なんで俺らだけ蚊帳の外なんでしょ?」
と、この状況での放置状態に不満気に言うのに、王も表情は穏やかながらも同じことを思うのか、
「そうですね…」
と同意して頷く。
あとの一人、水木はどこの輪にもなんとなく入りづらいのか、とりあえず後輩である錆兎と宇髄の方に来ようとするが、どうやら大切な話をしている最中なこともあって近寄られたくないようで、それを隠さない宇髄の露骨に嫌そうな表情を見て挫折する。
そんな微妙な空気の中、義勇はとりあえずここなら安全圏だと預けられた煉獄の隣で、クルリと周りを見回して、おそらく少しでも場を和らげようと思ったのだろう、いつも小声の彼にしてはやや大きい、他に聞こえる程度の大きさの声で言った。
「壁の絵とかアレだね、白雪姫。
そういえばテーブルクロスの刺繍もリンゴだし…」
「あ、ほんまや~。白雪姫だけに毒りんごで毒薬ですか?」
と、いい加減暗い緊張した空気が辛かったのか黒井がそれに乗って、隣の王に
「それは…少し不謹慎かと思います」
と注意される。
「でもま、ほんま白雪姫やったら、お姫さんは毒で死にかけたあとは王子が来はってめでたしめでたしで終わるし、ええんちゃいますか。」
と黒井がやはりどうしてもこの空気を変えたいのか補足をすると、義勇も同じ事を考えていたのか、
「そうだよな。あとはハッピーエンドだ」
と微笑んだ。
そのほわほわっとした様子に
「義勇さん、えらい別嬪さんやし、そうやって笑ってはるとなんだか癒されますなぁ」
と、黒井がやはり微笑むと、隣の煉獄は澄まして
「ただし個人的興味を持つと怖いぞっ!
俺は腕力にはかなり自信がある方だが、筆頭には勝てたことがない!
その彼が少し離れるのに俺を護衛につけるという意味を察しておくといい」
と言う。
その煉獄の言葉に、それを本気と取っていいやら冗談と取っていいやらわからず、黒井は
「おお、怖ぁ!
でもそういう意味では俺の彼女もめちゃ怖いんで、他に目をやるとかはなしなしですわ。
筆頭にボコられる以前に彼女に殺されてしまいますわ」
と、笑う。
それでしっかり尻に敷かれている宣言をする黒井にみんなで笑って、そしてまた静かになった。
そのわずかな沈黙を破ったのもやはり黒井である。
「何故かはわからんけど、加瀬兄弟をここに連れて来たかったって事かもしれませんな。
有名人やから何かで恨み妬みでも買いはったって事やろか」
「そ、そうだよね」
と、黒井の言葉に今度はようやく話の輪に入れてホッとしたとばかりに水木が乗ってくる。
最初は寒さに暖炉に張り付いていた面々も、今は広いリビングで奥の広いソファには英一を寝かせ、英二と不死川がついていて、窓際には錆兎と宇髄。
ドア側を背にして黒井と王、その左側の暖炉を背にしたソファには義勇と煉獄、その正面に当たる右側のソファに水木が座って、テーブルを囲んで話している。
「とりあえず…家主を探して本土に連絡を取ってもらうか船で送ってもらうのが先決ですね」
王がハァ~っとため息をつきながら眼鏡をクイッと押し上げてそう言うと、ん?というように一点に視線を止めた。
ポツン…と降って来た雫がテーブル中央に置かれた花瓶に活けてあった白い花の花びらを赤く染めてさらに水に落ち、水をも赤く染めていく。
「…っ!!!」
目を見開いて息を飲み、恐る恐る雫の落ちてくる天井を見上げて、声にならない悲鳴をあげる王。
その様子にソファに座っている面々が一斉に天井を見上げて、一部が悲鳴をあげた。
白い天井の下に設置されたガラスに赤く血で浮かび上がる文字…
『白雪姫の継母は毒りんごを差し出し、ハートの女王は叫んだ――首を刎ねておしまいっ!…と……』
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