はたから見るとオシャレな名門ミッション系の制服を着たすごく綺麗な顔の美少年と、天使のように愛らしい美少女の二人組。
その二人の仲睦まじげな様子を遠目に見ている少女達からため息があがっている。
「私達ってなんだかお似合いのカップルみたいよね」
そんな周りの反応を楽しみながらアオイはふふっと笑うが、義勇は
(どうせなら…さっきの王子様と来たかったなぁ…)
などと思ってため息を付いた。
しかし義勇の心がここにあらずなことに気づいた妹の
「天元の話…聞きたくないの?」
の一言で、女装までしてここに来た本来の目的を思い出して、ハッとする。
「そう、それだっ!
で、あのタラシは何言ったんだっ?!」
と、改めてアオイに向き合うが、アオイは
「天元の悪口言わないでっ!」
と頬をふくらませる。
それに対しては可愛い妹を悲しませる相手なわけだし、義勇も訂正する気はおきなくて、スルー。
「で?結局何言われたって?」
と聞くと、アオイもそれに関しては義勇も自分も譲れないことは理解しているので同じくスルーすることにしたらしい。
「実はね…」
と、話を始めた。
結果……
「別の男を勧めるって最低な奴だな」
と、ぷくりとおかんむりの義勇に、
「私天元に好きだって言ってないもの。仕方ないわよ。
天元は単に親切なだけ。
まあ…今回は余計なお世話なんだけど…」
と、たんたんと生クリームがなくなったあとのチョコパフェを食べながら言う、当事者アオイ。
「余計なお世話すぎだっ!」
と、義勇が憤るのも利口な彼女はわかっている。
わかっていて、あえてそういう言葉を選びながら、じゃあ…と、にこりと義勇に聞く。
「義勇から断ってくれる?」
だいたいは自分をかばうことはあっても頼ってくることは滅多にない可愛い妹の頼みを、兄が断るはずはない。
「任せろっ!」
と胸を張る義勇にアオイはさらにニコニコと
「じゃ、待ち合わせの場所と時間をメールで送っておくわね。
当日は服も貸してあげるから」
と一気に畳み掛ける。
そこでへ?と目を丸くする兄にとどめ。
「もう相手に会うだけは会うって言っちゃったし、すっぽかすのは私の信用問題だから、相手に会うだけは会って、”私として”断ってね」
「ええーーー!!!!」
急展開に義勇はびっくりだ。
「ちょっと待てっ!アオイとしてって言うことはまさか……」
青くなる義勇にアオイはとても良い笑顔で言う。
「私の服の中でもとびきり可愛い服を貸すわね」
「貸すわねって……無理っ!!
今日だっていつ女装バレるかヒヤヒヤしながらここに来たのにっ!!」
「だ~いじょうぶっ!義勇私よりよほど可愛い女の子だから。
血迷った男がちかんに走るくらいだし」
ちかん…というキーワードで義勇は助けてくれた青年をふと思い出す。
…かっこよかったなぁ……
などとさらに考えていたのがまずかった。
「あ~助かっちゃった。私だと当たり障りのない言い方できないし…」
と、すっかり了承したような方向で話が進んでしまっている。
そこで慌てて
「待ったっ!!無理っ!!」
とストップをかけるが、
「義勇は…可愛い妹に知らない男相手に怒らせて危険になるかもしれないようなことしてこいって言うの?」
と、言われると、言葉もない。
その沈黙を今度こそ了承と受け取ってアオイは
「大丈夫っ!義勇十分可愛いし、言い方も柔らかいから普通に断って帰って来てくれればいいから。
ね?お礼にあと1品何か追加してもOKよ」
と、メニューを義勇に差し出してきた。
ということで…義勇は恐怖体験再びとなるのであった。
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