お兄さんは頭を打ったことにしました_15

その日はドイツでの
欧州会議の最終日。

フランスはデスクワークは好きではないのだが、この日の会議はとても楽しみにしていた。

1000年単位の中途半端な関係に終止符を打ってイギリスから告白されて交際を開始するべく、練りに練った完璧に美しい計画。

それはフランスが記憶喪失になることで、他意はないが今まで通りにはできない、そんな状況を作り上げ、フランスに好意を持たれていることは知っているであろうイギリスがフランスの愛を取り戻すべく、記憶を取り戻させようと優しく積極的に動き、その甲斐あって記憶を取り戻したフランスに、失って初めてお前の大切さがわかったんだ…と、イギリスが告白をしてくるというラブストーリーである。

それを今日決行する予定なのだが、実は前日、それをより確実に遂行するためにプロイセンに協力を求めようとしたが、イギリス側から告白をしてもらうために考えている計画があってと持ちかけた時点で、具体的に内容を説明する前に、仕事でもないのに他人を欺くような事に加担するのはゴメンだと断られてしまった。

悪友とか3馬鹿とか言われて一緒に色々な馬鹿をやる仲ではあるが、プロイセンは自分自身が馬鹿をやることはあっても基本的には他人に対して不誠実な事をするのは潔しとしない騎士団出身の堅物だと言うことをすっかり失念していたが、まあ具体的な計画も話していないし、積極的に騙す事は嫌がってもわざわざ密告するタイプでもないので、よしとする。

もうひとりの悪友に関しては、こちらはペドなので、童顔のイギリスを落とす計画など打ち明けた日には、逆に横からかっさわれかねない気がする。
だから元々協力を仰ぐ気はない。

では他に協力者を探すかと言っても翌日には決行したいので時間がないのと、騙すという話をされて気分を害したプロイセンが帰り際にこぼした

『馬鹿なこと考えねえで、ちゃんと普通に告白しとけ。
あんま馬鹿な真似すると後悔することになるかもしれねえぞ?
ライバルはスペインだけとは限らねえんだからな?

という言葉に、もしかしてフランスが知らないだけで、他にもイギリスを狙っているやつがいる可能性が高い気がしたので、下手に裏切られるよりは自分だけで決行しようと決めたのだった。

その日は邪魔が入らないうちにと早めに会議室入り。
会議室には主催のドイツしかいない。

ドイツはプロイセンの弟なので彼から何か漏らされてないかと一瞬気になったが、フランスが会議室に入った時のドイツの第一声が

「フランス、今日は随分と早いんだな。
何かあったのか?」

で、明らかに驚いているようだったので、どうやらプロイセンは何も言っていないのだろうと判断した。
もしプロイセンから自分が何か画策していると聞いていたなら、そのために早く来たのだろうと思うだろうし、そんな風に思っているのに知らぬふりをできるほどドイツは器用ではない。

なのでフランスは予定通り

「うんちょっと昨日は寝付きが悪くてどうせ寝られないなら起きておこうと徹夜しちゃった。
で、ホテルでゆっくりしてたら寝落ちて遅刻しそうだったから、早くきたのよ」

と、いかにも寝不足といった風を装ってふわぁぁ~とあくびをしながら席の方へ行こうとして、ついうっかり足を滑らせて転倒する。

そしてそのまま気を失ったふりで医務室へ担ぎ込まれ、予め自宅で作っておいたたんこぶに湿布&包帯。

そのまま会議を欠席していると、昼休みにおそらくドイツから事情を聞いたのであろうイギリスが訪ねてくるが、記憶を失ったフリ。

少し前ならふざけるなと殴られそうなところだが、昨今の穏やかな関係のおかげか、ひどくショックをうけたように医務室から出ていった。

まあこれは想定の範囲内の反応だ。

なにしろイギリスは突発事項に弱い。
おそらく落ち着くために一旦退出ということだろう。

まあ午後の会議を挟んだあたりで落ち着いて、帰りあたりにはなんとかフランスに自分を思い出させるべく、訪ねてくるに違いない。



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