あれくらいで吐くような根性無しなら殺しなんかやるなと思うがな。
動機は松野に別れ話を出したら強請られてって事だそうだ。あの馬鹿らしいな。」
翌日…ようやく問題が解決してコウがグッタリとしていると、妙に元気な和馬が機嫌良く話しかけてきた。
「お前…あんな渦中にいてよく疲れないなぁ…」
そのままデスクに突っ伏すコウに和馬は
「疲れてるのはお前だけだ、あれ見ろ」
と機嫌良く動き回っているおおはしゃぎの2年コンビ、相田と佐藤を指差す。
そんな二人を見てふと思った。
「俺…そんなに嫌な男か?」
こいつに聞くのは愚問かな?と思いつつチラリと目だけあげてきくコウに案の定
「そんな当たり前な事を聞くか?俺もお前ほど嫌な奴に会った事ないぞ」
という和馬の返答が振ってくる。
まあ…あの和樹の従兄弟でそっくりな性格してるわけだし…古傷がズキリと痛むがわざわざ自分でえぐってるんだからしかたないな、とコウはあきらめのため息をついた。
「自分がどうやっても敵わない奴が嫌じゃない奴なんてよほどの愚民だ」
と、つづく和馬の言葉。
らしい言葉だな、と、思わず小さく吹き出すコウ。
「だが俺は和樹のように逃げんぞ。とことん向き合って利用し尽くしてやる。
敵わなけりゃ取り込めばいいだけだからな。
”嫌な奴”だが嫌いじゃない。俺の人生の金づる様だからな、お前は。」
和馬はきっぱり言いきってニヤリと笑った。
「…ったく素直じゃないですよねぇ、あの人は…」
和馬が教師によばれて部屋を出て行くと、相田がお茶をいれてくれた。
「結局…一緒にやっていきたいんですよ、和馬さんも。まあ…俺もですけどね。
だから悪態つきながらもコウさんのために動いてるし、コウさんをからかいながらも本当に嫌がる事はしない。
女癖悪い東さんがくれば、東さんがちょっかい出してトラブル起こしてコウさんが困らない様にって、さっさと女性達を校内案内に出してるし、コウさんが彼女さん出すの嫌だって言えば、最終的には他の女性を出そうとするし。
コウさんがユートさんの事で東さんと揉めた時だってあのプライドの高い和馬さんが卑屈なまでに下手に出てペコペコ頭下げて財務省へのコネをキープさせようとしてましたしね。
なんていうか口悪いから和さんと似てる気がするんですけど、和さんは絶対的にトップに立ちたくて他人のためには動きたくない人だったんですけど、和馬さんは実は結構あれで気遣いの人なんですよ。
少々…いや、かなり身内意識強いのが玉にきずですが…」
会田の言うとおり今回は随分色々フォローいれてくれていたらしい。
確かに和樹とは別人格…というか、口の悪さをぬかせば少しユートに似ているのかも知れない。
結局加藤の尽力もあって、あの事件は東個人が学校とは無関係に起こしたものという事になった。
おかげで海陽祭だけは普通に執り行われる事になったが、海陽の教師自身が殺害されたということはなかなかの衝撃で、その余波が生徒会に及ばない様に、和馬がかなり影で奔走しているようだ。
一応…ミスコンはさすがに中止になった。
開校以来続く伝統イベントを自分の代で途切れさせるのは気がひけなくはないが、仕方ない。
「ミスコン…中止になったのはいいが、毎年その年のミスコン優勝者がやる表彰とかはどうすんだろうな…やっぱり会長か?」
毎年やはり恒例の兄弟校生徒も参加しての剣道、弓道、馬術の試合の各優勝者には、最終日にその年のミス海陽から表彰状とメダルの授与があるのだ。
それがこの男ばかりの世界に少しばかり華を添えたりしていたのだが…。
生徒会長とはいえ、男にもらっても嬉しさ半減だろうなぁとコウはまたため息をついた。
「あ~、それは和馬さんが考えてるみたいですよ、色々」
相田はそう言うと、また呼び出されてどこかへ消えて行った。
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