ファントム殺人事件オリジナル12

そして当日…ユートが例によって鬼のような数の女子高生を連れて来たが…そのほとんどがつくなりワ~っとどこかへ消えて行く。

「なんなんだ?」
驚くコウにユートはニカっと笑った。

「いやいや、あの日さ、かなりの子が海陽の彼氏をげつしてきたらしいよ。
女強いよなw」
「そう…なのか。」
まあ…良い思いをしてくれた生徒もいるらしい。
悪い事ばかりじゃなかったのかとコウはホッとした。


「ミスコンは…中止になったんだって?」
コウと並んで歩きながら聞いてくるユートにコウは少し俯き加減に少し沈んだ笑みをもらした。
「開校以来の伝統だったんだが…ま、しかたないだろ。あんな事があった中で海陽祭中止にならなかっただけでも快挙だ。」
「ん~まあねぇ。でもさ、俺ら…っつ~か、アオイか。悪運強くね?」
少し沈みかけるコウにユートがサラっと話題を変えた。
「考えてみれば今まで5回もの殺人事件に巻き込まれてさ、実は一回置きに誘拐されてんだよな、アオイって。それで今まで無傷って…マジすごい!」
言われてみれば…
「それすごいなっ!」
コウも驚いたように顔をあげた。
確かに…毎回何か重要な場面に居合わせるアオイだが、3回誘拐もすごければ3回とも無傷はもっとすごい。実はフロウ以上に幸運娘なんじゃないだろうか…。

「その理屈でいうと…次は誘拐なしか。」
二人の後ろから声がする。
「和馬~またお前そういう不穏な発言を…。次とか言うな次とかっ。もう殺人事件はごめんだっ!」
クルリとコウは和馬を振り返ってピシっと指をさして叫ぶ。
そんなコウに和馬はニヤリと笑って
「5度ある事は6度目もあるぞ、きっと。」
と言うと、
「まあ…せいぜい何かあった時の協力者増やして来い!剣道の試合でお前呼ばれてるぞ。
相田が発案で”優勝者”vs会長様の特別イベントだそうだ。」
と、体育館を指差した。

今年は…まあ少しでも意識して盛り上げないとなので仕方ない。
コウは諦めてユート達と分かれると体育館に向かった。

「おお~カイザーだっ!」
入るなりいきなり沸き立つ生徒。
道場中央にいるのは兄弟校の生徒なので、今年は優勝は持って行かれたらしい。
「みなさん、お待たせしました!今年は優勝は海陽日吉に持って行かれましたが、海陽の代表にして帝王、生徒会長の碓井を連れて参りましたので、ここで雪辱をかけて一戦交えたいと思います。
非公式イベントなので最初に一本取った方の勝利ということで行います」
マイクを持ってかけよる相田。
その間にもワラワラと生徒が来て防具やら竹刀やらを用意して行く。

「コウさん、すみません。とりあえず今年はミスコン中止になった分、盛り上げて行かないとなので」
と、それはマイクをオフにして相田はコウにささやいた。

群を抜いた美形の生徒会長の登場に、海陽の生徒のみならず、会場の女性達が歓声をあげる。
その盛り上がりはコウが綺麗な面を決めた時点でまた大きくなった。
カリスマ生徒会長の面目躍如である。

そこで盛り上がる会場に軽く手を振ると、また今度は別のイベントへのゲストで呼ばれて行くコウ。
どうやら和馬もそんな感じであちこちを回っているらしい。
「愚民共のお守りも楽じゃないな…」
と、すれ違い様にコウにつぶやくが、それでもきちんとイベントの盛り上げに貢献している。

本当に一所にジッとしている時間がほぼなく、相手をきちんとできないのは目に見えているのでフロウやアオイを呼ばないで良かったなとコウは思った。

そして一日目終了。
生徒会室へと戻った役員達はド~っと椅子へと倒れ込む。

「あ~疲れた~。人気者はつらいな。」
和馬が椅子に逆向きに座って背もたれを抱え込みながら大きく息を吐き出した。
「まあ…うち(海陽)は、他の学校よりかなり生徒会を神格化してるところありますからね~。」
同じ様に走り回って疲れているはずの相田は意外に元気で、そんな和馬の前にコーヒーを置く。
それをすすりつつ、和馬はコウをふりかえった。

「明日はラストで表彰式な。一応…俺が先に今回毎年恒例のミスコン流れた事情とか説明するからその後に衣装着て颯爽と登場しやがれ。」
和馬と同じく相田がいれてくれたコーヒーを飲んでいたコウは、その言葉に思わず口に含んだコーヒーを吐き出しかけた。

「衣装って…」
青ざめるコウ。
その反応に満足げにうなづく和馬。
「覚悟しとけ。明日渡してやる」
「そんなん…着ないとだめなのか?」
おそるおそるお伺いをたてるコウに和馬はきっぱりと言い放った。
「いくらカリスマ生徒会長様といえど、ただの制服着た野郎に表彰されても面白くなかろう?」
まあ…それはそうなんだが…。
がっくりと机につっぷすコウに、和馬は楽しげな笑い声をあげた。


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