そんな予想のもと、フランスは上機嫌で会議終了時刻の18時を指折り数えて待った。
そして18時……まあ、片付けやなんやですぐには部屋を出られまい。
…5分後……何か仕事の話で呼び止められているのかも……
10分…20分……30分……いくらなんでも遅くはないか?!
そこにはもう主催のドイツすらいない。
いるのはドイツ人の職員達だけだ。
「ね?みんなもう帰ったの?」
と聞くと、職員たちは少し驚いたように
「ええ。まだいらしたんですか?」
と、目を丸くする。
そこで一人が気づいたように耳打ちすると、耳打ちされた職員は、あ~と声をあげた。
「フランスさん、今日は医務室で休んでいらしたんでしたね。
会議終了のご報告が遅れて申し訳ありませんでした」
と、頭を下げる。
「うん…それは良いんだけど…坊ちゃんも帰ったかしら?」
と、座席に視線を向けると、
「ええ、私達が片付けを始めた10分前には国体の方々はみなさん退出していらっしゃいました」
との言葉が返ってきたので、フランスは
「メルシー!」
とだけ言いおいて、急いで会議場をあとにした。
向かう先はイギリスの部屋。
しかしノックをしてもイギリスは出ない。
なのでフロントに聞いてみると、イギリスはまだ戻っていないらしい。
イギリスの性格からして外に一人で飲みに行ったりはしないだろうし、部屋にいないなら誰かと一緒なのだと思う。
だが、一体誰と?
そんな事を思いながら、とりあえず一旦自分の部屋に戻って考えようと国体が泊まっている貸し切りの階につくと、廊下で珍しく造花ではなくバラの花束を持ったスペインと鉢合わせた。
(これは…デート?!!)
まさか自分がのんきに医務室で寝ている間にしてやられたか?!!
と、焦りながらも、それを押し隠して、フランスはスペインに歩み寄った。
「スペイン、お前こんなとこで何してんの?!」
と声をかければ、スペインは悪びれた風もなく、お~、と、花束を抱えていない方の手を高くあげた。
「何って…夕食の待ち合わせやで?」
と、あっけらかんとした様子で言うスペインに、
(やっぱりしてやられてた?!)
と、フランスは内心歯噛みをする。
それでもあえて顔に出さないように気をつけつつ
「誰と?なんでわざわざホテルに戻って待ち合わせなの?」
と、聞くと、スペインは苦笑しつつ
「あ~あの子照れ屋やしな。
他がいると恥ずかしい言うさかい…」
と、頭を掻く。
その言葉でフランスは頭が真っ白になった。
照れ屋だから…もしかして俺にも隠れて二人つきあってたっていうわけ?
なんのために記憶喪失のフリまでしたんだ…と、ヘナヘナとその場に崩れ落ちるフランスを見てスペインが慌てる。
「フランス、大丈夫かっ?!
ちょい待っとき。ロマはもうちょお時間かかるやろし、今救急車呼んだるさかい」
と、その言葉にフランスは顔を上げた。
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