とある白姫の誕生秘話──兄貴と爺の密談3

「まあリアルはどうでも良い。
ネット内のことはネット内の情報で進めるのが良識あるゲーマーだろ?
…ということでジジイ、協力しろ」


食べ終わってカトラリを丁寧にトレイの上に置くと、ギルベルトは──ジジイは食後は煎茶だな?──と確認を取って立ち上がり、自分にはコーヒー、本田のために煎茶を取ってくる。

(本当に…こういうところが粗雑なようでいて紳士ですよねぇ…)
と、当然のようにそれを行うギルベルトを見てしみじみと思う本田。

「ん?どうした、ジジイ」
と、視線に気づいたギルベルトが綺麗な形の眉を寄せるのに、本田は

(プラス、イケメンというところが心憎いですね)
と、心の中で付け加えつつ、

「いえ、それよりギルベルト君、協力とは?」
と、話を元に戻した。




「ジジイ、ギルド立ちあげてくれ」
「はぁ??」
ギルベルトのいきなりの申し出に、本田はポカンと口を開けて呆けた。

「ギルドって…あの、ギルドですよね?」
「おう。俺達が今入ってるアレだ」

「それはまたどうして……」
という言葉には二つの疑問が込められているが、ギルベルトはそれを正確に読みとったようだ。

「ケイトのギルドにいる限りは個人であいつのアプローチをシャットするのが難しい。
で、何故俺様が自分でやらないかというと、俺様、最近、国を移籍しちまったから、ギルドを立ち上げるにはランクが足りねえ」

と、新たにギルドを立ち上げる理由と本田にそれを任せる理由をきちんと答えるギルベルトに、本田は秘かに

(両方答えて来ましたか…やっぱり出来る男は違いますねぇ…)
と、ため息をつく。


「それ…私がやると色々曲解されそうですが……」

影での協力なら良いが、出来れば表舞台には立ちたくない…そんな思いから無駄とは思いつつも小さな抵抗を試みてはみるが、

「ランクが足りなくて立ちあげられない俺様の頼みだって言ってくれても良い。
なんなら他のメンツへの根回しもすませておく」

と、拒否権を与えない気満々な様子で答えてこられて、本田は

「ほんと…お願いしますよ…」
と、大きく肩を落として、それでも承諾した。




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とある白姫の誕生秘話始めから


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