とある白姫の誕生秘話──プロポーズ2

もうゲームを始めた当初の理由なんてすっかり忘れ果てていた。

毎日レベル上げをして、その合間に仲の良い友人と過ごす。
それは本当に楽しい日々だった。

しかしながら…リアル友人がいないアーサーは何か間違ったらしい。
主に…友人の位置をキープするための距離の取り方あたりを……



それはとある日のことだった。

『アリアさん、今日さ、レベル上げ終わってからで良いから、ちょっと時間良い?』

ログインをしていつも通りギルドで挨拶。
パーティの参加希望を出してすぐ、運よくレベル上げパーティのお誘いをもらえたので、いってきますの挨拶をした時にケイトから声をかけられた。

アーサーのキャラであるアリアはヒーラーで、味方に対する回復というのは当然レジストされる事はない。
だからレベルが多少低くても回復役として重宝するので、イベントなどで手伝いに呼ばれる事は多々あった。

その日もそれかと思い、
『はい。大丈夫ですよ~。じゃあ終わったらご連絡しますね♪』
と、即答。
夏休中という事もあって多少就寝が遅れても問題ないしと、上機嫌でレベル上げに向かう。

正直リアルでは友人関係を築くのが苦手であまりお誘いを受ける事がないため、たとえネットという仮想空間の中でも声をかけてもらえるのは嬉しい。

無事レベルを1あげて、ギルドハウスに戻ったことを伝えると、ケイトがギルドハウス前にワープしてくる。

「私の部屋で良いかな?」
と聞かれて、あれ?クエストとかじゃないのか…と、少し不思議に思いながらも
「はい。ではお邪魔しますね♪」
と、ハウス内のケイトの部屋にワープした。

ギルドで所有しているギルドハウス内にはそれぞれ個室があって、そこは壁紙から家具から好きに変えられる。
だからアーサーはアリアの部屋は可愛い少女キャラのイメージにあう可愛いものを取りそろえているのだが、ケイトの部屋は黒を基調にしたゴシック風で、やや暗いイメージがある。

濃いワイン色のソファに勧められるまま腰をかけると、ケイトはその正面にいきなり膝まづいた。

へ??なに??なんなんだ???
と、リアルで目をぱちくりしていると、その女戦士の手にいきなり赤いバラの花が現れた。

そして…衝撃の言葉が告げられる。

──アリアさん…私の妻になって欲しい



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