とある白姫の誕生秘話──プロポーズ3

──はぁ??

あまりに想定外の話すぎて、アーサーはディスプレイの前で固まった。

え?え?え??なに?なんなんだ??!!

女キャラ同士で?

一応アーサーの方はリアルに抵触するような話はしてないはずだから、おそらく相手は自分のことをリアルでも女と思っているのでは??
それともネカマ(ネット上では女の子を演じているリアル男)だとバレた??

そもそもケイトはノアノアと夫婦同然と言ってなかったか??!!


もうどこから突っ込んで良いのかわからずに黙っていると、ケイトの方が口を開いた。

「突然でびっくりしたと思うけど…」
(突然より何より、内容にびっくりしてます)

「ずっとアリアさんのこと可愛いと思ってて…見かけとかだけじゃなく、雰囲気とか性格とか全部…」
(うん。そう思われるように努力してるし…)

「女キャラ同士だけど…」
(それな!…てか、ネカマはバレてなかったのか…もしかして百合?)

「こんなことなら男キャラ選べば良かったな…。
そうしたらイルヴィスウェディング出来たのに…」
(それもなぁ。イルヴィス婚でもらえるウェディングドレス着たい)

「でもキャラはこれだけど、ちゃんと守るから」
 (いやいや、キャラよりもまずは説明とか状況とか色々順番守ってくれ)



ケイトのことは嫌いじゃないが…確かにケイトが男キャラだったらゲーム内でくらい構わないが…残念ながら女キャラなので、このゲーム内での正式な結婚というものは出来ない。

だからそもそも何を望まれているのかわからない。


「あの…女キャラ同士ですし、ケイトさんがおっしゃるようにいわゆるイルヴィス婚は出来ませんし、今以上に何を望まれているのかがわからないのですが……」

仕方なしに言ってみると、
「アリアさんの特別になりたい」
と、返って来た。


「特別…?」
「そう、特別。
あ、このキャラは女だけど、私リアルは男だから…」

(聞いてねえ…)
がっくりと肩を落とすアーサー。

別に男が女キャラを使っていたって構わない。
自分だってそうだ。

でもそれを明かしちゃダメだろ。
女やるなら最後まで女やらなきゃダメだろ。

…ていうか…もしかして俺、当然のように女だと思われてる??


「えっと…その理屈で言うと、私だってリアル男性の可能性ありますよ?」

リアルの付き合いまで求められているのか?と言う事の牽制として言ってみると、

「それはないよ。会話とかでわかるよ」
と、鼻で笑われて、リアルで小さく首を横に振る。

さすがにそこで男です…とは言えない。
築いてきた人間関係はケイトだけではないのだ。
アリアという少女キャラを、ネット内では少女としてふるまう女性キャラだからそう扱って欲しいのだろうと女性として遇して来てくれた他の人々に失礼な気がする。

「それに…ノアノアさんと夫婦同然とおっしゃってたじゃないですか」
「別れる!アリアさんが付き合ってくれるなら、ノアノアとは別れるから!!」

それ、すごくまずいと思う。
さすがに思う。

「…やっぱり…ギルド内で他の方とお付き合いしてる方と別れさせてお付き合いというのは出来ません。ごめんなさい」

この時点ですでにかなり引き気味ではあったのだが、

「実はノアノアは結構、私のすることなすこと文句付けてくること多くて、お互いに冷めてたんだ。
どちらにしてもそろそろ別れてたと思うし、ちゃんと別れる。
それで別れて時間が経ったら考えて?」
と、食い下がられた時点で、逃げたくなった。

(これ…不倫持ちかける男の常とう句みたいだよな…)
などと思いながら、

「別れられても…お付き合いできるとは限りませんよ?」
と、はっきりと断るとギルドに居にくくなるかも…と、少し婉曲に断りを入れたが、

「うん。それは仕方ないから。
でもとりあえずせっかくだから呼び方変えて良い?
“さん”外して、アリアって呼びたいんだ」
と流されて、もう呼び方くらいどうでも良いか…と、それは了承しておいた。



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