ブラザーコンプレックス_8_フェイクラバー2

「ストーカーかよっ!」

誰かが自分の可愛い可愛い天使のような弟につきまとってる。

もちろん、アーサーが可愛いのは出会った時からずっとだ。

ギルベルトが初めて会ったのは10年前だが、その時にはすでにこの世のものとは思えないほど、それこそ頭のてっぺんからつま先まで可愛さがにじみ出ていたので、おそらく生まれ落ちた瞬間から可愛らしかったに違いない。

だから当たり前だがそんな話は今に始まったことじゃないし、アーサーもいい加減慣れた風ではいたが、実は結構堪えてて最近は気分が沈みがちなのだ…そうアーサーが気を許しているであろう友人から聞かされて、ギルベルトは可愛い弟の強がりを本気にしてこれと言って手を打たなかった自分を後悔した。

「こうなったら探偵でも雇って…」
と、もう本格的に駆逐する気満々になったギルベルトに、そこでそういう行動を取られては困るエリザが、口を挟む。

「まあ落ち着きなさいよ、ギル。
相手は一人だけじゃないんでしょ?
今ここで一人二人をおっぱらったところで、それで天使ちゃんが可愛くなくなるわけじゃないんだから、どんどん新手が現れるわよ」

「そりゃまあそうだけどよ。
あいつはもうこの世に舞い降りた天使みたいに可愛いからなっ。
近づきたいなんて奴は腐るほど出てくるだろうけど、だからって放置なんて可哀想な事できねえだろうよっ」

あーうん…ブラコン…納得したよエリザさん…と、口を尖らせて言うギルベルトの発言に、フェリシアーノは虚ろな目でうなづいた。

自分にとっても大切な友人ではあるから爆発してしまえとは思わないものの、もうこれなに?俺ら必要?ねえ、必要なの?と、問い詰めてみたくはなる。

「だからね、あんたが恋人のフリすればいいのよっ」
と、フェリシアーノが放心している間も話は続いていたらしい。
エリザが熱っぽく語っている。

「なんだよそれ。意味わかんねえ」

「だ~か~ら~、もう熱々ラブラブ彼氏がいれば、みんな望みないからって諦めるでしょっ。」
そう言ったエリザに、ギルベルトはバン!とテーブルを叩いた。

え?なんだか怒ってる?

「エリザ…お前なっ!」
「な、なに?」

「お前はアルトをなんにもわかってねえっ!
もうアルトはな、ふわっふわの髪も真っ白な肌も、子猫みてえなまんまるでおっきな目も、まだ俺らと違って微妙に小さくて華奢な手足も、ほんっきで神は二物を与えずなんて言葉が馬鹿の戯言に聞こえるくらい、何もかも全部全部全部っ!!究極に可愛いんだよっ!!!
そんな男がいるってくれえで諦められるようなレベルじゃねえんだっ!!
もちろん、外見だけじゃねえぞっ!性格だって……」

あ…このノリ…どこかで……と、フェリシアーノはトリップする。
そう…教室でたまにお兄ちゃんの話題に差し掛かると、こんな感じでいつ息してんの?くらいな勢いでアーサーが語り始めるんだよな…これでお昼休みとか余裕で終わるんだよな…てかそれでも話し足りなさそうな勢いなんだよな……今学校じゃなくてチャイムないから…終わらないぞ、これ……。



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