珍しく連絡を入れて朝練を休んだギルベルトは、随分と険しい顔で登校してきた。
そして半日を周りが引くレベルで不機嫌に過ごしたあと、昼休み、弁当を広げようとしたエリザの腕を、質問形式にはしているものの、拒否権は与えねえと言った感じに掴んで、ひと目のつかない廊下の端まで引っ張っていく。
と、エリザは焦ったが、ギルベルトの口から出てきたのは意外な言葉だった。
「お前…この前、アルトのダチの中坊と帰ってたよな?連絡先とか知ってるか?」
どういう意味で聞かれているのだろうか…と思いつつも
「ええ、知ってるけど?」
と答えると、ギルベルトは少しだけホッとしたように息を吐き出した。
別に計画がバレたわけではなさそうだ。
「じゃ、わりいけど、できるだけ早く…可能なら今日の放課後でも呼び出してもらえねえか?
アルトの学校生活についての話が聞きてえ」
そのギルベルトの言葉で、どうやらアーサーはうまくやっているらしいということを知ってホッとしつつも、エリザは注意深く
「良いけど…私も一緒でいい?
なんかあんた殺気立ってるからフェリちゃんも緊張するでしょうし」
と、自分も介入したい旨を申し出ると
「ああ、むしろこっちから頼みたいくらいだ」
と、ギルベルトは了解した。
こうして放課後…
「アルト…なんか学校であったのか?」
マックに呼び出されたフェリシアーノはいつものようにポテトをかじる余裕もない。
怖いほど真剣なアーサーの兄と、うまくやらなかったら…と無言でプレッシャーを与える笑顔のエリザを前に、本気で顔が引きつってくる。
それがギルベルトにはどうやら何か重大なことが起こっているという印象を与えたらしい。
「なんか最近あいつおかしくて…何か隠してるみてえなんだが、うちは両親が不在だから俺様しかいねえし、あいつもそれがわかってるから心配させまいと思って言わねえんだろうけど、言われない方が心配だからな」
と、本当に心配している様子で聞いてくる兄に、フェリシアーノは少し罪悪感を感じた。
その真摯な態度は親が不在な分しっかり弟を守ろうとしているだけのようで、エリザが言うような、残念なブラコンにはとても見えない。
そんな罪悪感のため、普段の軽い感じがなりを潜め、さらに深刻な感じになったのが功を奏したようだ。
「実はアーサー…最近変な奴らにつきまとわれるのに参ってるみたいで……」
と言ったフェリシアーノの言葉は、あっさり信じてもらえたようだ。
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