「あの鉄壁の理性を崩せば、あとはなし崩し的に突っ走るタイプだと思うんだけどねぇ…」
はぁ~っとため息を付きながらこぼすエリザに
「何か手はないんですかっ!人事を尽くさなければなりませんっ!」
と、真剣な眼差しで語る菊が、その手に握るのは季節限定商品、抹茶あずきシェイク。
それを一口、そして一瞬ほわんと口元を綻ばせて、また真剣な顔に戻る。
「やっぱり…俺なんかじゃ…」
とジワリとアーサーの大きな目に涙が溢れ出るのを、菊が慌ててハンカチで拭く。
「そんな事はありませんよっ。本当に他にはあれだけ追い回されているのですから…」
「そうだよねぇ。アーサー、痴漢も変質者もよく寄ってくるもんねぇ。
ストーカーまで発展する奴がいないのが不思議なくらいだよね」
と、フェリシアーノがポテトを口に放り込みながら言うと、エリザがいきなりガタっと立ち上がった。
「それよっ!!」
「…へ?」
「名づけてフェイクストーカー作戦よっ!!!」
宣言するエリザに、3人が視線を向けると、エリザはいったんまた席に座り直した。
「あのね、アーサー君がストーカーに追われて参ってる事にするのっ。
それで怖いから~ってベッタベタにひっつけるし、諦めさせるためにアツアツな付き合いの彼氏がいるって事にすればって私がギルに提案してあげるっ。
そうやって擬似恋人を演じてるうちにチャンス到来するわよっ!」
なんだか必要以上にキラキラした目で嬉しそうに言うエリザ。
実は彼女が可愛い男の子大好き、ホモ大好きな腐女子であることは、ここにいる誰も知らない。
これまでは愛しのローデさんのためにとひたすらにやってきたわけだが、ここにきてそんな彼女の趣味嗜好がむくむくと頭をもたげてきた。
ああ、良いかもしれない。
趣味と実益を兼ねた一石二鳥の作戦だ。
そこに気づいてしまえば当然テンションもあがる。
そんなエリザをよそに、ああ…また変な方向に…と、フェリシアーノは泣きたくなったが、泣きたくなったのはフェリシアーノだけらしい。
「それで…なし崩し的に本当の恋人になれるかな…」
と頬を蒸気させるアーサーに、え?ええっ??!!当初はただお兄ちゃんに避けられたくない、お兄ちゃんを取られたくないってだけの話じゃなかったっけ?いくとこまでいっちゃうの?と、青ざめるが、
「名案ですねっ!では擬似ストーカー工作は私とフェリシアーノ君でやりましょうっ!!」
と、実はこちらも隠れ腐男子な菊が目をキラキラさせて請け負うのに、やっぱ俺もなし崩し的に引きずり込まれるんだね?拒否権はないんだね?と、それぞれ心の中で思って涙するフェリシアーノ。
こうしてまた事態はますますややこしい方向に進んでいくのだった。
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