あら?なんか元気ないわね?どうしたの?」
どよ~んとしていた前日。
そして今日は明らかに寝不足な目でぼ~っとしている主将様にエリザがそう声をかけた時点で、今日も主将は朝練休みだな、と、部員たちは無言で察した。
「で?どうしたのよ?また弟君と何かあった?」
と、聞くエリザに、ギルベルトは机に突っ伏した状態で答える。
「俺様…もうやばいわ。危ない域入っているかもしんねえ…」
というギルベルトの言葉を聞けば、皆が皆、
『まだ入ってないと思ってたのか?』
と答えるだろうが、当然本人には今でも十分アレだという自覚はない。
その今更な認識の差異を埋める事にはエリザもあまり興味がなかったので、
「どうしたのよ?聞いてあげるから、話してみなさいよ」
と言うと、何も知らないギルベルトは
「お前…最近いいやつだよなぁ」
と、顔だけ少しあげて、しみじみと言った。
――アルトが可愛すぎるんだ。
と、いつものセリフで始まるギルベルトの話。
いや、お前それ毎日言ってるから…というツッコミは入れてはいけない。
エリザもそれはわきまえているから、ただ無言で次の言葉を待つ。
「昨日さ、家帰ったらさ、アルトが俺様のシャツ一枚だけ身につけて、お出迎えしてくれちゃったわけよ」
というギルベルトのセリフは想定の範囲内。
何しろそれを勧めたのはエリザ自身なのだから。
完全に繋ぎ止めるなら、いくところまでいってしまえ、という趣旨の元、怪しまれて距離を置かれない程度にアピールということで、とりあえずは状況的にありであろう、【兄のシャツ一枚でアピールしてみる作戦】を授けたのだ。
そこで
「あら、それが何か問題?」
と、素知らぬフリで聞けば、
「問題だろうがっ!!」
と、ギルベルトはダンっ!とテーブルを叩いた。
「風呂掃除するのに濡れるからって、ズボン脱いでシャツ一枚でいたらしいんだが、もうな、普通にしてても可愛いのに、彼シャツ状態だぞ?!犯罪級の可愛さだぞっ?!
俺だったから良かったものの、普通のやつなら完全襲ってるぞっ?!
肩幅がないから少し肩がずり落ちてて、まくってたらしい袖も落ちて袖口から指だけ出てる萌え袖状態。
裾は見えるか見えないかのギリギリのラインでボタンが止まってて、動くと隙間から見えそうだし、真っ白なほっそい足なんか、もうまぶしすぎて直視できねえぞ?!」
と、いかにその時のアーサーがエロ可愛かったかを力説するギルベルトに、ああ作戦は成功ね、と、エリザはほくそ笑んだが、甘かったらしい。
「で?意識しちゃったわけね?
いいんじゃない?兄弟だっていっても血のつながりないんだし、そもそも男同士なら子ども出来る心配もないから、本当の兄弟だって問題ないでしょ?」
と、誘導しようとするエリザに、ギルベルトはきっぱりとそれを否定した。
「ああ?お前何言ってんだ?!
確かにアルトは可愛い。
ああ、はっきり言っちまうならエロ可愛かったっ!
もうそこらのグラビアアイドルなんか足元にも及ばない月とすっぽん状態だっ!
だが、それに手ぇ出して良いかって言うと違うだろっ!
あいつ天使なんだからなっ?!
他がエロい目で見たりちょっかいかけてくんのをどついて蹴散らして追い払いはしても、自分が手ぇ出しちゃだめだろうがっ!!
そんな世界中の世俗にまみれた害悪から天使を守るために俺はいるんだろうがっ!!」
思考性は明後日な方向に飛びまくった残念さなわけだが、ギルベルトの理性はなかなか固かったらしい。
最愛の弟のエロ可愛さを力説するわりに、自分が手を出す気は皆無…。
なかなか厄介である。
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