と言ったのは自分だ…自分なわけだが…殺気立ったエリザが怖い。
逃さないわよ、と、言わんばかりにガシっと腕を掴まれた時には、コミュ力には自信があるフェリシアーノもさすがに悲鳴を上げそうになった。
と、心の中でお題目のように仲良しの…しかし今このピンチを招いた張本人でもある友人達の顔を思い浮かべるフェリシアーノ。
エリザの言葉がもう少し遅ければ、不覚にも、俺にはこの高校の近くに親戚がいるんで無事帰らないと…と、まるで漫画などで敵に捕まって殺されるモブが言いそうなセリフを吐きそうになったのだが、その寸前、
「ねえ、ギルの弟のアーサー君の事だけど…」
と言われて、どうやら自分はエリザの関心事の当事者ではないことを知らされたことで、フェリシアーノはホ~っと身体から力を抜いた。
「えっと…アーサーが何か?」
もうここに来た目的など半分忘れかけていた。
とにかく無事帰りたい…生きてみんなに会いたい…その一心でそう聞き返すフェリシアーノに、エリザは相変わらず怖いくらい真剣な顔で言う。
「お兄さんから少し距離置かれてるとか、そんな話してる?」
してなければ俺こんな所でこんな恐怖体験してないよぉ…と、フェリシアーノは声を大にして言いたかったが、そこは理性でおさえる。
「…急だったから、何かしちゃったのかってすごく気にしてたけど…」
と、当たり障りの無い答えを口にすると、とたんにエリザは、ハ~っと力が抜けたようにその場にしゃがみこんだ。
「あ…あの、エリザさん?」
「…良かったぁ……」
思わずと言ったように漏れる言葉。
「とりあえず喜んだりはしてないのよね?」
と、しゃがみこんだまま見上げられて、フェリシアーノはコクコクうなづいた。
「と言っても…まだ油断はできないか…」
よいしょっと容姿に似合わぬ掛け声と共にエリザは立ち上がって、また真剣な顔でフェリシアーノの顔を覗き込む。
「あのね、フェリちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど?」
ニコリと…しかし目だけが笑っていないのが怖い。
しかも先程からずっと腕を掴まれたままだ。
「なあに、エリザさん?」
と、こちらも無理に口元だけ笑みを浮かべるフェリシアーノ。
「弟君…お兄さんの事嫌いじゃないわよね?」
「え?うん、全然」
「お兄さんも弟君の事すごく好きなのよ」
「え、あ?ああ、そうなの…」
「もうハッキリ言っちゃおう。
弟離れ全然出来てなくてね、この先も当分出来ないと思うのね」
「えーっと……だから?」
これは…弟離れをさせるために手伝えと?というフェリシアーノの予想を大きく裏切ってエリザは言った。
「弟君も兄離れしないように出来ないかな?」
「はあ???」
「もう最悪高校の間だけでもいいのっ。
弟君に絶対に兄離れしないで欲しいのよっ」
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