どこかの変態馬鹿のせいでエリザの大切なローデさんの部活がボロボロになりかけている。
なんとかしなければ…!!!
が、そう思っていた矢先のことだった。
神はエリザに味方したらしい。
それがなんとギルベルトの弟、アーサーの親しい友人らしい。
なんとかこの子を通してアーサーを動かさなければならない…
名前だけとは言えローデリヒが顧問に名を連ねるこのバスケ部の主将を復活させるために……。
憧れのローデリヒ先生。
彼はそれはそれは繊細な手先からダイナミックにして優雅な音楽を奏でる若いピアニストである。
出会ったのはエリザが幼稚園の時。
音大生だった彼にピアノを習ったのがきっかけだった。
そしてそれから数年の月日がすぎた頃、大学を卒業した彼がこの中間一貫校の高等部の音楽の教師になっていたことを知って、エリザはこの学校の中等部に入学したのだ。
テンションがあがる。
早く高等部へ進学したい!!!
そんな熱い思いを抱えて通い続けて3年後、念願の高等部にあがってローデリヒに挨拶をすると、向こうも覚えていてくれたらしく、にこやかに挨拶を返してくれた。
(ああ、ローデさん…尊い……)
ほぅっとため息をつきかけた時、なんと先に目の前の憧れの相手が物憂げにため息をつく。
なんて麗しい!!…とは思うモノの、よくよく見ればどことなく憂い顔。
「ローデ先生、何かお疲れですか?」
と聞くと、彼は力なく微笑んだ。
そうして聞いた話はエリザからしたら激怒モノの話だった。
この学校では教師全員有無を言わずに顧問を持たせられるらしい。
それはまあ仕方がないとして、問題は人選だ。
もちろん、管弦楽部は音楽、美術部は美術などの教師が受け持つわけだが、必ずしもその部に通じる教師がいる部活ばかりではない。
そういう部でも顧問は必要なので、名ばかりにはなるが、全く素養のない教師が顧問にさせられることも当然ある。
そして…学校に2人いる音楽教師のうち、管弦楽部はもう一人が大ベテランで古参の教師だということで顧問になっているため、あぶれた形になった若いローデリヒが任されたのは、なんとバスケ部の顧問だと言う。
ルールからして知らないので調べ、しかし運動がそれほど得意ではないこともあって、一緒にやるわけでもなく…では戦術に長けているかと言えばそうでもない。
そんな名ばかりの顧問でも、何かあったら呼び出される。
大会などあった日には引率をさせられ、良い成績が残せなければ、やはり顧問が…と職員室で陰口をきかれるらしい。
実際、ローデリヒが顧問を引き継ぐ前の世代のバスケ部はそれなりに強く、文武両道を掲げる学校の面目躍如だったらしい。
しかしローデリヒが引き継いだのはその強い選手達がちょうど卒業した直後で後続も育っておらず、決して顧問が変わった事だけが一気に弱体化した要因ではないのだが、何かと肩身が狭いと言う。
──ローデリヒさんにスポーツ部の顧問をやらせるなんてわけのわからない事をした上に陰口きくなんて良い度胸じゃないのっ!!!
ローデリヒ厨のエリザが怒り狂ったのは当然のなりゆきだった。
バスケ部を以前よりもさらに強くして見返してやるっ!!!
そう固く固く決意したわけだ。
しかしながら、ローデリヒを煩わしている事務的な仕事やらはマネージャーとして仕切っても良いが、男子バスケ部なので試合は自分が参加するわけにはいかない。
…となると………適した男子生徒を引きずり込むしかないっ!!!
そうして同学年で運動神経が良く、なおかつ戦術厨な人間として白羽の矢がたったのがたまたま小学校から一緒だったギルベルトだった。
Before <<< >>> Next(11月29日0時公開)
0 件のコメント :
コメントを投稿