のっと・フェイク!verぷえ_第三章_5

来訪者

それから少しして、内線がなって来客を告げる。

誰にもここを告げてないのに?とプロイセンは一瞬首を傾げるが、来訪者の名前を告げられて思い出した。

あ~、そういえば泣きながら電話で話したのだった。


入室許可を告げるとやがて息を切らして入ってきたのは、日本と、何故か取るものもとりあえずといった感じの上着だけひっかけたドイツ。


「兄さん、大丈夫なのかっ?!」
というドイツに驚いていると、日本が少し気まずそうに

「申し訳ありません。あの時、ドイツさんと一緒におりましたもので…。
でも何か入用なものがあって私が居られない時に、慣れた方が一緒に居て下さるとプロイセン君も気が楽になるかと思いまして…」
と、頭を下げる。

まあもしそんな自体が起きたとしたら…むしろプロイセンを良く知っているがゆえに、その要望を正確に理解してくれるドイツに手配を任せて、日本に残ってもらう事になったのだろうな…とは思うものの、確かにそうなった時に冷静ではいられないであろう自分の事を考えると、2人人間がいるのは助かるし、その人選も的確でありがたい。

「さすが爺。伊達に年くってねえな」
と、しみじみ感心すると、日本は

「恐れ入ります」
と、すまして頭をさげた。


そんなやりとりが一通り終わると、プロイセンはそこで日本をここに呼ぶ事になった原因を思い出して、少し決まり悪げに頭をかいた。

「あ~、なんかな、子どもの泣き声聞こえて生まれてきたはずなのに、なかなか手術終わらなかったから、俺様焦っちまって…」

正直に言うと、日本があらあら、と、口元を袖口で覆って笑った。
ドイツはプロイセンの答えにホッとしたように肩の力を抜く。

「…ほんとに…後追いでもしそうな勢いでいらしたので、正直少々慌てましたが…」
と言う日本の言葉にもプロイセンは、気不味そうな笑いを浮かべた。

「子ども生まれるまでより全然長い時間終わらなかったから…。
でも冷静になって考えてみれば、切るより縫合する方が時間がかかるんだよな」

「まあ、そうですね。
でも大切な家族のこととなると、なかなかそう冷静な判断は下せないものですよ」

と、にこやかに応じて、ふとベビーベッドとイギリスのベッドに目を向けた日本は、
声にならない悲鳴を上げた。

「双子ちゃんっ!双子ちゃんなんですねっ!!!」

いつもの穏やかな様子から一転、声こそトーンを抑えているものの、バンバンっ!!!と、ドイツの腕を叩きながら興奮気味に言う日本に、ドイツもそこで初めて子どもに目を向けた。


「なんと…双子なのかっ!」

「そうだぜ~。俺様とアルトのイケメンコンビの子だけにすっげえ美形だろ~!!!」

満面の笑みで自慢するプロイセン。
いつもはそれに苦笑で返すドイツだが、今回ばかりはことがことなので、それをなんら揶揄するような事もなく、大きく頷いて

「きちんと育つまではしっかりとガードしなければならないな!」
と、感涙にむせぶ。


いつも自分で自分をイケメン、イケメン叫んで生温かい目で見られるプロイセンだが、確かに顔立ちから言えば国体の中でも抜きんでて整った正統派イケメンではあるのだ。

その整った顔をそのままに受け継いだ男児と、美の国フランスですら『顔だけは本当に可愛いのに』と言われるほどに愛らしい童顔のイギリスのバランスを崩す太すぎる眉だけを取った、完璧に可愛らしい顔立ちをした女の子の赤ん坊。

ペドと揶揄されるスペインや、幼女趣味のオランダならずとも、可愛らしい服の一つでも贈ってやりたい気分になる。

「コスはハリポタとハーマイオニーですかね…いやいや、せっかく双子なわけですし、それを生かした何かを……」

と、ぶつぶつと別の方向の贈り物に思考を向けている日本。


しかしながら、しばらくはしゃいでいたかと思うと、

「さてさて、イギリスさんの無事も赤ちゃんが無事生まれたのも確認したことですし、爺達はティールームでお茶でもしてましょうかね。
そろそろイギリスさんも目を覚まされるでしょうし、ここはやはり親子水入らずで。
イギリスさんが目覚められて手が必要でしたらご連絡下さい。
この棟はイギリスさんしかいらっしゃらないから、携帯使用も許可されてるんですよね?」

と、さすが空気を読む国ナンバーワンだけあって、興奮しつつも気遣いを忘れない。

礼を言うプロイセンをあとに残して、二人はとりあえず病室を出て行った。


こうして再び静かになった病室でイギリスが目を覚ましたのはそれからまもなくのことだった。




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