「え?じゃねえよ」
むくりと起きあがる男。
もちろん目はしっかりと開いている。
何故?どうして?遅かった?何が起こってる?
もう頭の中はパニックで言葉も出ない。
涙だけがぽろぽろ出て、泣きながら首を横に振り続けると、グイッと掴んだ腕がさらに引かれてポスンと厚い胸板に身体が吸い込まれた。
「…あ~、もう落ちつけ。よしよし、大丈夫。大丈夫だからな?
大きく息吸って…大きく吐き出せ…そう、良い子だ」
まるで子どもを宥めるように背中をさすりながらそう言うプロイセンの指示通り、大きく深呼吸をすると、上手く吸えなかった空気が少しずつ肺を見たしていく。
「よし。呼吸は落ちついたな。
…って言ってもまだ動揺してっだろうから、俺様の方の話を聞け」
いいな?と頭を撫でながら念押しをされて、逃げられる気がしなくて、イギリスは仕方なしに頷いた。
すると、プロイセンは、ひょいっとイギリスを横だきにする。
逃げられないように…という時はいつもこの体制だ。
こうなれば悲しかろうと辛かろうと、プロイセンの話を聞くしかない。
イギリスが諦めて大人しくなったところで、プロイセンは淡々と話し始めた。
「まずアルトが最近なんか体調悪そうなのには気づいてた。
でも自分で言わねえって事は聞いても答えないだろうしな。
だから妖精さんに聞いたら、なんだかそのうちアルトから話すだろうし、自分達が先に話したらダメだからって言ってた。
で、アルトの事を大事にしてる妖精さん達が特に深刻な様子もなくて、むしろ楽しそうな様子だったから、俺様は待ってたんだけどな。
お前、なんかコソコソしてっし?
睡眠薬とか盛ってるし?
これはもう逃亡準備でもしてんのかと思いつつ、ギリギリまで待ってみたわけなんだが…」
ちなみに俺様は薬系は色々馴らしてるからほぼ効かねえからな?と付け足されて、イギリスは途方にくれた。
それでもそこで言葉を切ってジッとイギリスの言葉を待っているプロイセンの目はどこまでも深く底が知れなくて、ごまかせる気がしない。
「妖精さん達は……」
「おう、」
「勘違い…してるんだ…」
「…どういう?」
「ギルが…喜ぶと思って……」
「なにを?」
「………」
「………」
「………子ども……」
「……はああ???」
思わず声が大きくなった。
それにイギリスはぶわっと再度泣きだす。
もうダメだ。
死にたい……
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