──はっ!承知いたしましたっ!!
敬礼して出て行こうとする兵にマルガリータは驚いてギルベルトに詰め寄った。
「どういうことですっ?!!
国母とは?!そもそもわたくしは誰に対しても害をなしたりしておりませんっ!!」
マルガリータにしてみれば当然の主張だ。
自分がここ最近接触した妃は、子を生まぬ正妻として迎えられた少年だけで、その少年は当然ながら男なので国母になりようがない。
なにかの間違いに違いない。
そう確信を持って主張した彼女に、この王の忠実な臣下で親しい友である将軍は冷やかに言い放ったのだ。
「森の国から来た正妃は伝説の森の民の子孫だ。
彼らはほぼ男性体として生まれ、英傑に抱かれれば子を身ごもる。
そして我が国の王は森の民の血に英傑と認められ、正妃は王の子を身ごもっていた。
我が国としては森の国の最も古く尊い血である森の民である正妻と前国王の正式な嫡男である我が国の正妃の子こそ正式な森の国の王位継承者であるという立場から、王位簒奪者である現森の国の王に王位変換を要求する手配を進めていたのだが、正妃様がお子を身ごもられた状態で自死を図られ、今医師が対応中だ。
王位簒奪者である現森の国を巻き込んで雲が色々企んでいるのは俺の耳にも入ってはいる。
そうなると、我が国の血を引く正当な王位継承者が森の国の王位を継ぐということは、なるほど、雲と親族関係にあり縁の深いグラッド家としてはどのような手段を用いても阻止すべき事案ではあったようだな」
「そんなっ!!」
まるで寝耳に水な話すぎて、さすがにマルガリータもどう言って良いかわからない。
そうして動揺しているうちに、申し開きをする間もなく、左右の腕を衛兵に掴まれた。
そして
「連れていけ」
の言葉で、生まれて初めて拒否権もなく引きずられて行く。
まさに最初に王宮に足を踏み入れた時に感じた罪人のように…という印象が現実のものとなった形で……
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